窓から差し込む薄明かりに、うっすらと意識が浮上した。温かい布団の中で瞼を開けると、カーテンの隙間から空が明るみ始めているのが見える。まだ日の出には早い。夜と朝の境目。
背中に感じる他人の体温がむず痒い。布団の中でゆっくりと向きを変えると、昨夜寝台を共にした人物の後ろ頭が視界に入る。
昨晩、私と中也は恋仲になったらしい。“らしい”なんて他人事みたいな言い方は良くないかもしれない。ちゃんと、お互い納得してそういう関係に収まったはずなので。それでも、実感なんて全然湧かないので、必然的にそういう言い方になってしまうのは許してほしい。
中也とは随分長い間、ただの相棒だったのだ。ただの相棒というには大きすぎる感情をお互いずっと持て余していたし、それにお互い気づいてはいたけれど、ならどうすれば良いのかわからないまま離れてしまったので、きっとこのまま元相棒としてやっていくだけだと思っていたのに。相棒としてやっていたよりも、離れていた期間の方が長くなってしまったのに。
どういう話の流れで、どうして恋仲に収まることになったのか、ちゃんと覚えているし、もしもう1度やり直すことができるとしても、きっと同じことを繰り返すのだろうとは思っている。実感が湧かないだけで、別に後悔しているわけではない。今後もしないかと言われれば自信はないけれど。
後頭部を眺めながらぼんやりと思考を巡らせていると、中也が寝返りを打ってこちらを向いた。寝息を感じられる程近くで穏やかな寝顔を眺めていると、なんだか気恥ずかしくなってしまう。中也と寝たのは初めてではないけれど、その後こうやって同じ寝台で朝まで過ごすのは初めてなのだ。
もう、朝だし。
誰にともなく言い訳をして、布団からするりと抜け出す。冷房の効いた室内は少し肌寒い。それで、中也の肌の温かさを連想してしまって慌てて思考から追い払う。と、左手に何か温かいものが巻き付いてきた。
「どこいくんだ」
中也は眠そうに瞬きを繰り返しながらも、私の手首を掴む手にぎゅうと力を込めた。
「べつに」
特に何か当てがあったわけでもないので曖昧に濁す。中也はそのままゆっくりと起き上がり、じぃっと私の顔を見つめる。真っ直ぐな視線に射抜かれて目を逸らせないでいると、中也がぽつりと呟いた。
「なあ、昨日のこと、なかったことになんてしないからな」
じんわりと中也の言葉が胸に染みる。胸の奥からなんともいえない感情が迫り上がってきて、口から飛び出そうになったのを唾液と一緒にごくりと飲み込んだ。なんと言っていいのかわからず、掴まれたままの手をただ中也の指と絡めた。中也の手が握り返してくれた。それでようやく声が出た。
「しないよ」
中也の顔が満足したようににこりと笑みを象るから、結局胸の内から湧き上がってくる感情を押し込めきれなくて、中也の唇にそっと私のものを重ねた。
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.