芸能人というのは、テレビで見るより生で会う方が可愛い、格好いい、というのはよく聞く話だ。なんでも、カメラのレンズを通すことで、レンズの歪みやなんかの影響が出てしまうらしい。その真偽の程は然して興味もないけれど、確かに、カメラ越しより生の方がいいというのは確かだよなぁと思う。
「A6エリア、クリア」
インカム越しに中也の報告を受けてカメラを確認する。今は殲滅行動中だ。異常はない。予定通りだ。
「了解。予定通り進めて」
仕事中、中也をカメラ越しに見る機会は多い。もちろん隣で一緒にいることだって少なくはないけれど、太宰は作戦参謀だから、作戦が大規模であればある程、現場にいる中也との物理的な距離は遠くなる。
だから、今日もまた中也を見るのはカメラ越しだ。
別に、作戦を遂行するだけであれば、カメラ越しで十分事足りる。なんならカメラなんてなくても大抵の場合問題ない。ただまあ、情報は多いに越したことはないので、対象エリアに監視カメラなんかがあれば大いに活用することにしている。
「B3エリア、今から突入する」
「了解。3カウントで突入。わかってると思うけど、標的はくれぐれも殺さないでね」
「しつけぇな。わかってるに決まってんだろ」
中也の軽口を無視してカウントを開始する。
3、2、1、突入
突入と同時に一斉射撃が始まった。インカムからは銃撃戦の音がバラバラと響く。これでは他の音なんて聞こえないので、インカムは一旦耳から外すことにする。こんなもの聞いていたら耳がバカになってしまう。
踊るように戦場を駆ける中也を見る。1人、2人と次々屠っていく姿はいっそ芸術的だ。何度見ても惚れ惚れする美しさ。だけど、カメラ越しでは物足りない。
輪郭がぼやけているような、色が滲んでいるような、生で見るときの鮮やかさが今ひとつ欠けるのだ。乗っ取った監視カメラの画質はお世辞にも良いとはいえないが、そういう単純な問題ではないと思う。超高画質と謳われるカメラで大画面に映し出したって、きっと太宰は物足りない。もちろんそんなもので撮ったことなんてないのだが。
立っている人間が半分を切ったところで席を立つ。向かう先は中也のいる戦場だ。今からなら、最後の2〜3人ぐらいには間に合うだろう。せっかく中也との作戦だっていうのに、1度も中也の戦う姿を見ないまま終えるなんてもったいないこと、してたまるか。
「おい、太宰。捕まえたぜ」
「やあ、ご苦労」
インカム越しに太宰に話しかける中也に、背後から直接話しかけると、中也は反射的に振り返った。そしてわかりやすく眉を顰める。
「なんで手前がこんなとこ出てきてんだよ」
「だってそいつに情報吐かせなきゃ」
そいつというのはもちろん、中也が今現在手に抱えている殲滅対象だった組織の幹部だ。だがそんなのは建前にすぎない。きっと中也だって気づいているけれど、どうせいつもの自殺願望かなにかだと思っているだろうからあえて教えてなんてやらない。
「にしたって俺が報告するまでは安全なところで待機してろよ」
「なんだい、随分過保護じゃないか」
「んなわけねぇだろ。手前わかっててはぐらかしてんだろ」
「どうだろうね〜」
中也の追求をのらりくらりと躱しながら近づいていく。中也は警戒して拘束する手を強めた。なんだ、やっぱり過保護じゃないか。とはいえ、対象はたった1人で部下たちを蹴散らした中也に恐れ慄き、とっくに反抗する意思は喪失していると見える。中也のこういう容赦のないところは好ましくて、太宰はますます機嫌が良くなった。
「あんま近づくなよ。まだ意識あんだぞ」
「ふふふ。いいものを見せてもらったからね。僕は今機嫌がいいんだ。だから、無駄な抵抗をしないなら、楽にお仲間のところに行かせてあげるよ」
うっそりと微笑むと、対象の顔が恐怖に引き攣った。中也の顔は悪趣味だと言わんばかりに歪んだ。それでも拘束の手を緩める気配はなくて、ますます気分が高揚する。ああ、今日はなんていい夜なんだろうか。
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.