夜明 奈央
2024-05-06 08:32:18
7976文字
Public 中太小説
 

同棲にまつわるエトセトラ

半同棲してる中太が同棲するようになるあれこれと、それに巻き込まれる国木田くんの話
2024年1月21日初出

 太宰が怪我で入院した。マフィア時代には珍しくもなかったが、探偵社に入ってからはめっきり減っていた。相変わらず趣味の自殺未遂で怪我をすることはあるが、入院となるとなかなかに珍しい。
 怪我の原因を尋ねると「ポートマフィアの幹部には言えませーん」と茶化されたので、どうやら探偵社の仕事絡みらしい。調べる伝手ぐらいはあるが、そこまで知りたいわけでもないのでそのままにしている。太宰の全てを知るなんて土台不可能だとわかっているから、必要以上に首を突っ込もうとは思わない。
 けれど必要なことは、たとえ太宰が隠したがっていたとしても見て見ぬ振りはしないと決めている。
「で? 手前、明後日退院なんだって?」
 毎日とは言わないまでも、太宰が入院してからはなるべく見舞いに顔を出すようにしていた。命に別状がない怪我ではいちいち肝を冷やすこともないが、この男を放置しておくことそのものには心配しかない。
 正規の面会時間に堂々と顔を出せるような身分でもないため、逢瀬は決まって消灯後の深夜だ。
「なんで知ってるの」
 驚いた風を装っているが、動揺は見られない。本気で隠そうと思っていたわけではなくて、中也を揶揄うのが目的だったのだろう。中也が探りを入れるのも織り込み済みで、気づかなければそれまで。重要なことを隠しているわけではないと知れてホッとした。
「マフィアの情報網舐めんなよ」
「くだらないところにそんなもの使わないでよ」
「手前が素直に教えてればそんな必要ねぇんだよ」
「別に教える必要もないでしょう」
「手前それが毎晩見舞いに来てやってる奴に対する態度か、あ゛?」
 いつものように軽口を叩き合う。
 月明かりにぼんやりと照らされる太宰は、日頃より顔色が悪く見える。それでも初日の真っ白な顔よりは、ずっと健康的な血の色が透けて見える。少し前から起き上がれるようにもなっていたし、自殺嗜癖のくせに生命力が漲っているから、入院期間的にもそろそろ退院だろうとは思っていた。
 太宰のこの調子では、明々後日見舞いに来たら蛻の殻という自体になりかねない。
「退院してもしばらくは自宅療養なんだろ?」
「まあそうだねぇ」
「明後日迎えに来っから」
「いいよ別に。これくらいの怪我慣れっこだし」
「うっせぇ、手前は信用ならねぇんだよ。ほっときゃ酒飲むわ食事抜くわやりたい放題なんだからしばらくは俺の家で大人しくしてろ」
「はいはいわかりましたー」
 ここに入院した当初は殺風景だった部屋には、探偵社の奴らが見舞いに持ってきたのだろう、花やぬいぐるみが飾られて賑やかになっている。マフィアの頃ならこんな物もらってもすぐに焼却炉行きだったのに、随分と変わったものだ。きっと律儀に持って帰って、自宅なり職場なりに大事に飾るのだろう。
 本人の荷物はそれほど多くないが、それらを持って帰るとなると1人で運ぶのはきついだろう。迎えが必要なはずだ。荷物の多さは、それだけ太宰がこの世に繋ぎ止められている証のようで、かつてのコンテナより好ましく感じた。

***

 太宰が怪我をして入院してから、俺はほとんど毎日見舞いへと通っていた。いつもの自殺趣味ではなく探偵社の業務の一環での怪我だった。太宰には家族がいない。それどころか探偵社員以外の交友関係も定かではない。
 太宰は「見舞いなんて必要ない」と言うが、入院は長引けば長引くほど気が滅入るものだと経験上知っている。与謝野女医のお陰で久しく世話になっていないが、だからこそ探偵社員で唯一それが叶わない太宰のことを蔑ろにするつもりなどない。スケジュールの都合で長居できないこともあったが、それでも行かないよりはずっとましだろう。
「すまんが明日は遠方に出張で来られない。代わりに敦と鏡花が来る予定だ」
「ああ、お見舞いはもういいよ。明日退院するから」
「はぁああ!? そういうことはもっと早く言え!」
 太宰はなんでもないことのように言うが、退院とは入院・手術に次ぐ一大イベントのはずだ。俺が驚いて立ち上がると、如何にも面倒くさそうに顔を顰めた。わざとらしく両手で耳を塞いでいる。
「今言ったじゃない。っていうかここ病院なんだから叫ばないでよ」
「遅すぎると言っているのだ!!」
 太宰の指摘に怯んで、小声で怒鳴ったから、吸い込んだ息の大半が無駄になった。
 入院して間もなくの頃、俺が「退院はいつだ」と聞く度に嫌そうにしていたから気を遣っていたというのに、この男は人の気遣いをなんだと思っているのだ。俺の予定を真っ向から崩すのはこの男の十八番ではあるが、それにしたって性質が悪すぎる。
 退院なら迎えがいる。敦と鏡花は身の回りの細々としたことに気が回るので人選として悪くはないが、運転はできない。明日空いているメンバーで再度人員を選定し直さなければならないではないか!
 手帳を取り出して素早く明日の予定を確認する。谷崎が行く予定だった依頼に代わりに賢治を行かせればいいだろうか。賢治だけでは些か不安だから敦か与謝野女医について行かせるべきか。だがそうなると――
「私の退院は気にしなくていいよ」
 太宰が俺の思考を遮った。
「気にしないわけにはいかないだろう」
「1人でもタクシーぐらい乗れる」
「だが……
「ここは人が多くて気が休まらなかったから、久しぶりに1人になりたいんだ」
 簡単に引き下がるつもりはなかったが、そう言われてしまうと無理に押し通す気にもならない。その気持ちは痛いほどにわかる。あまり気にならない性質の俺でさえ入院が長引けば多少なりそういう気持ちになるし、太宰は俺よりも他人の気配が気になるタイプだ。ストレスは計り知れない。

 結局退院に、探偵社からの付き添いは出さなかった。

 そうは言っても心配なものは心配だ。あの男は日頃から不摂生を辞書で引けば出てくるような生活をしている。退院したからといって完治したわけではない。また食事を酒と蟹缶だけで済ませていては治るものも治らない。せめてもう少し良くなるまではまともな食事を食べさせねばならない。
 出張を終えた俺はスーパーで買い出しを済ませ、太宰の寮を訪れた。しかし扉の前に来ても、中に人がいるような気配は感じられない。もう日もとっぷりと暮れているというのに灯りもついていない。念のため呼び鈴を鳴らしてみたが、やはり何の反応もなかった。
 仕方なく電話を掛けてみると、数コールで繋がった。
「お前は病み上がりだというのにもう遊び歩いているのか」
「なんだい、いきなり。人聞きが悪いなぁ」
「退院したんだろう。何故家にいない」
「ああ、国木田くん以上に世話焼きの知り合いがいてね。私のことが信用ならないらしくてその人の家に拉致されちゃった」
「拉致?」
 不穏な単語に眉を顰める。
「そうなのだよ。悔しいことに、今最高の蟹鍋を食べているのにどうしても日本酒を飲むことを許してくれない! あ、ちょっと! 痛いってば! そこまだ痛いんだってさっき言ったでしょう!」
 なんだか随分と楽しそうな声が聞こえてくる。とりあえず拉致というのはただのジョークだろう。よくわからないが、俺の他にも太宰の世話を焼く人物がいるらしい。それは願ったり叶ったりだ。見捨てる気はさらさらないが、太宰といるとしょっちゅう苛立たせられる。俺の力量では禁酒を守らせられるかもわからない。進んであいつの世話をしようという人物がいるのであれば、そちらに譲るに越したことはない。太宰も何やら俺よりその人物の言うことの方が真面目に聞くようであるし。
「それなら安心だ。誰だか知らないがそのまま面倒を見てもらえ。その人には『くれぐれもよろしく頼む』と伝えてくれ」
 電話口で何やらごにょごにょと文句を言うのが聞こえたが、気づかなかった振りをして終話ボタンを押した。
 しかし驚きだ。自らあの男の世話をしようと思う奇特な人物がいるとは。しかもどうやらあの男を尻に敷いているようだ。いずれお目にかかってみたいものだ。
 感心しつつ自分の部屋へと向かいながら、ずっしりと手にかかる重みに意識をやる。2人分のつもりで買ってきた食材は1人で消費するには少しばかり多い。傷む前に使い切るなら何食か続けて同じ物を食べる必要があるだろう。俺の主義には反するが食材に罪はない。
 消費できる献立を頭の中にいくつか思い描き、しばらくしてやめた。明日賢治にでもお裾分けしよう。敦と鏡花でも良い。きっと喜んでもらってくれるはずだ。

***

「手前同僚にそこまでさせてんのか?」
 太宰が電話を切るのを確認してから、鍋の具材をよそった器を差し出してやる。漏れ聞こえてきた会話が大人しく静観できるものではなくて電話中につい脇腹を蹴ってしまったが、致し方ないだろう。身内として、あまり他人に迷惑をかけるようなら黙っているわけにはいかない。やっぱり退院後ここに連れ込んだのは正解だった。中也が連れてこなければあの国木田という男が太宰の世話をさせられていたのだろう。
「君だって元同僚でしょう」
 太宰は受け取った器の中身にふうふうと息を吹きかけて冷ましながら、なんでもないことのように答えた。
 確かにその通りなのだが、中也は太宰のことをただの同僚だなんて思ったことは1秒たりともない。最も遠かった初対面の頃は“いけ好かないガキ”だと思っていたし、マフィアに入ってからも“ライバル”という方が近い。それもすぐに“相棒”に取って代わった。この期間は事実上同僚ではあったのだが、短くも濃密な太宰との関係は同僚なんて薄っぺらな言葉ではとても言い表せるものではない。それが“元相棒”を経て今は“恋人”だ。何がどうしてそうなってしまったのかは、あまり考えたくない。
 太宰が探偵社の面々を大切にしていることはわかる。けれど中也相手のような執着もないことを知っている。
「家まで来んの?」
「まあそういう時もあるね」
「もういい大人なんだから同僚に迷惑掛けんのも大概にしろよ」
「まあ考えとくよ」
「考えとくじゃなくて、やめろっつってんだよ」
 語気を荒げると、熱々の白菜と格闘していた太宰が顔を上げた。中也の様子がいつもと異なることにようやく気づいたようだった。
「前から言ってるけど、もうこのままここに住めよ。どうせ最近じゃほとんど帰ってないんだし一緒だろうが」
「どうしたの? もしかしてヤキモチ?」
「はぐらかすなよ」
 この話をすること自体は初めてではなかった。あまり強引に迫って逃げ場を失わせるのもよくないだろうと思って冗談として流されてやっていたが、そろそろちゃんと話をするべきだろう。
 しょっちゅうここに出入りしている太宰が、ちゃんとここを気に入っていることは知っている。逃げられては堪らないのでじっくりひっそり、太宰がその気になるのを待っていた。その甲斐あってか、今やほとんど毎日ここに来ている。もうほとんど住んでいるようなものだ。そろそろ決定打を打つべきだろう。
「もう住んでるようなもんだろ。一緒じゃん」
「それはそうなんだけど」
「不満でも要望でも、なんかあるならはっきり言えよ。ないならさっさとあの寮引き払え」
「あるよ。引越しめんどくさい」
「じゃあ俺が手配する。それで文句ねぇな?」
「ああ、まあ、それなら」
 てっきりかぐや姫ばりの無理難題でも押し付けられるかと思っていたが、想像以上にあっさりしたものだった。なんだ、そんなものか。拍子抜けしていると、太宰が自分の器を中也の方に押し付けてきた。
「なんだよ」
「殻、剥いてよ」
 見れば器の中には綺麗に殻付きの蟹だけが残されている。
「それぐらい自分で剥け」
「えー、じゃあやっぱさっきの話はなしで」
「『言え』とは言ったが『聞く』とは言ってねぇよ」
「ケチー!」
「知るか」
 しかしこれぐらいなら可愛いものなので、自分の器に入っている殻を剥いた蟹と交換してやった。

***

 退院後も療養期間として太宰には数日休みを与えていた。今日はその療養期間の最終日だった。
 平和そのものといった平凡な朝の情景を掻き消すように、複数の人間が寮の前に降り立つ足音が響く。襲撃などではなさそうだったが、無視するにはどうにも人数が多い。しかもすぐに立ち去るわけでもなく騒々しさは増すばかりだった。俺はいつも通り朝食を食べている最中であったが、とても呑気にそんなことをしている場合ではなさそうだ。
 玄関横の小窓から外の様子を窺うと、引越し業者のような風貌の男たちが忙しなく働いている。寮の前にはその業者のものだろうトラックも止まっている。
 どうやら引越しらしい。だが探偵社の誰も「引越す」などという話はしていなかったはずだ。もちろん新たなメンバーが増えるといった話も聞いていない。なんといっても入社試験をしていない。
 持ち前の嗅覚が厄介事の気配を感じとる。男たちの行き先を探ると、不在のはずの太宰の部屋へと吸い込まれていく。手には大量の段ボールを抱えている。
 またあの唐変木は厄介事を持ち込みよって! あいつの所為で今日もまた手帳通りに進まないではないか!
 腹の中から沸々と怒りが沸いてくるが、かといって家財道具一式が堂々と盗まれるのを、見て見ぬ振りをするわけにはいかなかった。それは俺の理想からは程遠い。
 少し離れたところから様子を窺うと、男たちはテキパキと動き回り、太宰の私物を箱に詰め込んでいる。梱包が済んだ物から順次運び出すつもりのようで、箱を持って出てきた男の肩に手を置いた。
「おい、誰の許可を得てそんなことをしているんだ。その家の家主は今不在のはずだ」
 場合によっては戦闘になるかもしれないと思い、もう片方の手にはしっかりと手帳のページを握りしめていた。もちろん記入済みで、すぐにでも武器を出すことができる。まだ通勤通学の時間帯には少し早いが、それでも人通りがないというわけでもない。なるべくなら穏便に済ませたい。
 しかし男は困惑した様子で首を傾げ、少し離れた場所にいる別の男を呼んだ。簡単に事情を説明しているのを聞く限り、この集団のリーダー格なのだろう。説明を聞いた男は礼儀正しく俺に向き直った。
「我々は家主の太宰治さんよりこの家の中の物を全て運び出すよう指示を受けています。この家の鍵もお預かりしております」
 ポケットから鍵を出し、目の前に翳される。受け取って確認する。確かにその鍵はこの家のもののようだった。
「本人不在の引越しなどあるか?」
「あまり例はないでしょうが、ただいま怪我による療養中と伺っております。お疑いでしたら、ご本人に今ここで確認されては?」
 ぎろりと睨みつけても、男は怯んだ様子さえなかった。どうにも信じがたいが、敵意も感じられない。面倒事に直面してしまったことに対する苛立ちさえ感じられない。いっそこの事態を予想していたかのようだ。
 あまり出会ったことはないが、詐欺師の類ならこの程度のことは容易にやってのけるだろう。身近にいる詐欺師のような男を脳裏に描けば、なかなかどうして重なる部分があるような気がする。しかし「本人に確認しろ」とまで言うのであれば、それなりに自信はあるのだろう。
 促されるままに電話を掛けるが、なかなか繋がらない。もし確認が取れないならそれを理由に作業の中止を要求しようと思ったところで、ようやくコール音が途切れた。「ふぁい」とまるで今起きたとでも言わんばかりの声が耳に届く。実際今起きたのだろう。確かに今日は休みだが、そんな自堕落な生活をしていては明日からの出社に差し支えるだろうが。
「今お前の家に引越し業者が入って家財一式を運び出そうとしているのだがこれは了承の上か? それとも家財泥棒か?」
「んー?」
 太宰はしばし意味のない音を発し、やがて「ああ」と声を上げた。
「うん、そう、引っ越すことにしたんだった」
「そんな大事なこと忘れるか普通?」
「なんていうか、そもそも最近あんまり帰ってなくて」
 何やら長引きそうな気配を察知した。とりあえず太宰は了承の上らしいので、一旦電話口から離れて男たちに作業を続けてかまわないと伝える。男たちは迷惑を被ったにも関わらず、然して嫌な顔もせずに頭を下げて作業へと戻っていった。後で改めて仕事を邪魔した詫びを入れなければならない。
「世話してくれる人がいるって言っただろう? 今回のことで怒られちゃって。正式に一緒に住むことになったんだけど、引越しが面倒だって言ったら『じゃあこっちでやっとく』って言い出してね。お言葉に甘えることにしたんだ。まさか今日とは知らなくて」
「そんなことあるのか……!?」
「あるみたい」
 まるで他人事のようだった。
 太宰の相手はなかなかの強者らしい。太宰と一緒に住むというだけで俺には十分考えられないことだが、太宰相手に随分と強引な手段を取ったものだ。けれど本人に嫌がっている風はないし、どこの誰かもわからないがそれなりに上手くやっているのかもしれない。
 これはおそらく太宰の門出になるのだろう。咳払いをして、喉の調子を整える。
「お前にそんな相手がいるとは知らなかった。おめでとう。式にはぜひ呼んでくれ」
「式?」
「結婚するのだろう?」
「しないけど?」
「は?」
 頭の中に疑問符が浮かぶ。先程から俺の理解の及ばないことばかり聞かされている。
「流石に古風すぎやしないかい? 一緒に住むから結婚だなんて」
 太宰の呆れたため息が電話越しに届いて、思わずおかしな声を出してしまった。
「お前はまたそうやって女を弄ぶつもりか! いい加減にしろ! その気もない女と一緒に住もうだなんてそんなふしだらなこと許されるわけないだろう!!」
「だいじょーぶだいじょーぶ。相手女の子じゃないから」
「は?」
 ついに頭の中の疑問符が踊り出した。改めて思い返してみる。確かに相手が“女”とは聞いていない、ような気がする。つまり友人か何か知らないが、男と一緒に住むということだろう。太宰を1人にしておくと不安なのは確かだが、ただの友人相手に普通そこまでするだろうか。実は生き別れの家族、みたいな可能性もあるかもしれないが、それにしたって太宰はもういい歳である。例え家族であっても自立して1人暮らししていておかしくない。それを今から一緒に住もうというのは、一体全体どういうことだろうか。俺にはとても理解が及ばないが、本人たちが納得しているのであれば俺が口を出すようなことでもないだろう。
 ないのだが。
「念のために確認するが、まさか詐欺でもしているわけではないな?」
「詐欺ねえ……、」
 太宰の間延びした声が電波に溶けていく。考えるような間が俺を不安にさせる。何故「していない」と即答できないのだ。
「してないとは言わないけど、私も詐欺に遭っているようなものだし、おあいこじゃないかなあ?」
 周囲ではチュンチュンと鳥が長閑に鳴いている。朝のいつもの光景だ。太宰の呑気さはそれにマッチしているが、内容はとても相応しくなかった。そんな不健全な関係を見過ごすわけにはいかない。カッとして再び怒鳴り声を上げようとしたところで、電話の向こうで何かに打つかるような鈍い音が響いた。続いてツー、ツーと無機質な通話終了音。再びコールするが、今度は繋がらなかった。
 明日奴が出社してきたら詳細を聞き出して、場合によっては今からでも同居を解消させねばならない。俺は心に決め、端末をしっかりと握りしめた。


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