whityyokko_hkg
2024-05-05 23:07:40
1199文字
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蜜より甘いは

ちゅーする村グリ

 久方ぶりの口吸いは甘露だった。
 連日連夜に渡るレイシフトから戻ったばかりでの魔力供給である。疲れきった村正の霊基にグリムの魔力が沁み通っていく。

「っふぅ、んっ、ぅ」

 体液摂取による魔力補充、しかもサーヴァント間でのものなど、マスターとのパスやカルデアでの電力変換と比べるのが烏滸がましいほど微々たるものだが、馴染みの相手から直接受け取る充足感を加味すれば非効率性を補って余りあるものがあった。

「ぁぅ」

 圧倒的に足りない分量を質で補填するべく何度も口腔を吸い上げる。上顎を舌先で擽り分泌を促しては浸出した傍から次々と舐め取った。べろを擦り合わせ、じわじわと表面に沸き出る水分を己のそれと絡ませ念入りに混ぜ合わせる。歯列の裏から舌下を探りひだに沿ってちろちろと行きつ戻りつすれば、顎下腺からもじゅわりと液体が産出され、口内の僅かな隙間を充填した。互いの唇から溢れ出る直前まで耐え、溺れそうな男から一気に吸引し、喉を鳴らして飲み干す。
 求めていた以上の甘さに脳が痺れて蕩けた。
 注いだ傍から蜜みたいにとろりと広がった魔力は、口腔粘膜を覆うようにして吸収され、味蕾を刺激する。美味で口を満たす喜びが全身を駆け巡り、陶酔にも似た高揚へと昇華された。
 嚥下し咽頭を滑り落ちるときに蠕動する粘膜が、唾液に含まれる微量の魔力に過剰なほど反応し、度数の高い酒に灼けるにも似た感覚を引き起こしては、せっせと魔力を細胞に取り込もうと働きかける。
飢え渇いたエーテル体に神の血をひくドルイドの魔力は極上の馳走と言えた。戦闘に消費した魔力を補うためではなく、食の本能と人間であった者の快楽に連なる贅沢として欲望を挑発する。
 我が身に正直な男は恥ずかしげもなく自身の唇を濡らす残滓を舐めとり、更には先ほど搾取したばかりの唇までも舐めしゃぶった。
 口腔をねぶりあい涎まみれの唇を合わせ直す度、ぴちゃびちゃと際限なく水音が鳴り響く。

「んぁ、は」

 グリムが呼気を吐いたタイミングで村正がしたことといえば、噛み合わせを変えるのにかこつけ、口を塞ぎ直し再び舌を捩じ込む所業だった。
 反って抗う後頭部を掌いっぱいで押さえこみ、引き寄せる。
 頭蓋の重みが心地好い。爪に引っ掛かり抜けた髪がささくれに食い込み、血が滲んだ。
 犬歯が突き立てられるより早く喉奥めがけて舌尖を進める。舌根を抉り軽く歯を立て舌先まで刮ぐ。根こそぎ引っこ抜けた日には、心行くまで味わって咀嚼してこの体に取り込んでやるものを。
 舌をほどいて一呼吸分の自由を許しあう。痺れる口唇が息継ぎに開き、鮮紅色が艶かしく滑る中を覗かせた。
見上げた先では白皙が朱を刷いている。
 歪む眉間、震える睫毛、瞼の奥で潤む赤眼。研ぎ清まされた眸の光だけがその全てを裏切っていた。

 ああ、そんな顔を見せられちゃ、止まるもんも止まらねぇ。