2022-12-06 19:20:51
2096文字
Public 小説(pixiv公開済)
 

ネトゲ世界に転生したのでハーレムを作ろうと思ったら男アイドルだらけのタイアップドラマの方だった件 ~チートもないよ~

だいたいタイトルオチ。
ダンマカwebオンリーの当日お題企画(「運命」「居場所」「世界」)に参加してぱーっと書いたもの。

オンラインゲーム「ダンスマカブル」のプレイヤー(オリジナルキャラ・名前無し)視点での仮想メタな(ネタな)エピソードです。
ネットゲーム用語・スラング、ネットミームなどを特に解説なく使用しています。ご注意ください。
シリーズ化していますが、各話は独立しておりますので、単品でも問題なくお読みいただけます。
(今回はシリーズ番外編扱いになります)

FOCUS:アルム
※オンラインゲーム「ダンスマカブル」のゲームシステム・世界観・サービス状況・ドラマとの関連性等、ほぼすべて二次創作です。
※pixiv版からべた貼りしただけで、レイアウト等は特に手を入れていません。あしからずご了承ください。

 あのさ。ダンマカの世界に異世界転生するのはいいんだけど。
 ゲームじゃなくてドラマの方って、どういうことっすか。
 イケメンアイドル16人とフラグ立てろってことっすか。

 ×   ×   ×

 実際のところ「転生」なのかどうかはわからない。死んだという記憶はない。ただ、オンラインゲーム「ダンスマカブル」を三日三晩ぶっ続けの不眠不休でプレイしていたら(期間限定うまうまイベントを必死こいて周回していた)ふうっと意識が飛んで、気がついたら、砂と塵のにおいにつつまれて、大の字で寝っ転がっていた。
 誰かが心配そうにのぞき込んでいる。
「だ、大丈夫か……? 水は要るか? すぐそこにオアシスがあるぞ」
 黒と金の装飾に包まれた衣装。柔らかで優しげな卵型の輪郭。手に持った器の水を反射して、きらきらと光る瞳。
「天使……
 じゃなくて、これは。
「私を、知っているのか?」
 天子だ。


 まあ、オンラインゲーム「ダンスマカブル」は、決してハーレムとかが作れるような世界観じゃない。いくつもの陣営が対立しあう、ディストピアとポストアポカリプスの隣り合うダークな世界だ。恋愛イベントなんて一切なし。皆無。絶無。
 だが、タイアップのプロモーションドラマはもっとひどい。イケメン男アイドルが大量に出てきて、女性の登場人物なんてモブにいたか? いたかも? ってレベル。そのうえ世界観の容赦なさには拍車がかかり、メインキャラ死亡率驚異の三割オーバー、しかも主人公ポジションのキャラを含んでいるっていう。つまり、転生主人公していても全然安心できないやつ。
 っていうか、転生だとして、お約束の「神様にすごい能力をもらう」シーンがなかったのはどういうことだ。生存率が厳しい世界。チート能力なし。かわいい女子もなし。
 いろんな意味で詰んでる。詰んでるよ俺の異世界人生。


 それでも、どこかで能力覚醒イベントとか、主人公補正がかかるんじゃないか、って少しだけ期待していた。
 天子を連れたリベリオンに拾われて、成り行きで行動をともにすることになり、襲撃イベントフルコースの波乱万丈な道のりを、うまいこと逃げたり隠れたり助けられたり逃げたり隠れたり助けられたり逃げたり(以下略)しつつダンマカの世界を生きながら、いつかどこかでストーリーを動かすような関わりかたができるんじゃないかって、ひとすじの希望を持ち続けていた。
 チート能力がないなら、せめて、現代人の知識で出来ることはやってみようと試みもした。最近はこっちのほうが流行りだしな。持てる知識や特技を生かして地道にスローライフ。スローライフどころじゃない世界なんだろって? ごもっとも。
 アルムにストレスマネジメントという言葉を教えたり(内容は俺もよく知らんのでお互い???となるばかりだった)、リーベルとアルムの物理的な距離をそこはかとなく離したり(でもすぐに傍に寄るんだよこいつら……おんぶすんな)、フーガのメンタルにめっちゃ気を遣ったり(ピキピキしてるとこにがんばって話しかけて、ほぼスルーされたけど)。
 しかし、何も変わらなかった。
 死ぬ奴は死ぬ。破滅する奴は破滅する。血を吐いて、砂を噛んで、地に倒れ伏して。傷だらけで、空に手を伸ばしながら。
 俺には、何の力もなかった。


 そして迎えたクライマックス。
 転生主人公らしいイベントが、たったひとつ、たった一回だけ。
「リーベル……? リーベル!!」

 ポコン。

【ともに永遠を生きる】
【死を受け入れる】

 世界の運命を二分する選択肢が、フローティングボタンのかたちをして、俺の目の前に現れた。
 なんでやねん。これ俺が押していいんかい。
 逃げて隠れて助けられた俺が。死ぬ奴を破滅する奴を血を吐く奴を見送った俺が。

 ……やれやれ。そんなん、できるわけないな。

 肩をすくめて、てのひらを上にして。やれやれポーズのまま、アルムの出す答えを待つ。こうしていると、ちょっとはラノベの主人公っぽいかね。どこからどう見ても脇役だけどね。
「私……私は……
 濡れた瞳が瞬いて、きらきらと光る。出逢ったあの日、俺にくれたオアシスの水を映したみたいに。
 答えを聞いて、頷いて、その選択肢を押した。


 チート能力は何もないけれど。
 旅をしているあいだに、ひとつ気がついたことがある。
 呪いの力を宿した天子であるアルム。彼の傍にいても、俺の身体も、精神も、いっさいダメージを受けなかった。
 異世界から来ているから、こっちの世界のことわりの影響を受けないとか、そういうご都合主義な理由だろう。たぶんきっと。
 
 物語には、エンドマーク。けれど帰れる気配はない。まあ、その気もない。
 ハーレムも作れないし、チート能力も貰えず、世界の端役をつとめた俺が、その後どうしたかというと。
 アルムの、居場所になった。
 名前を呼び、肩を組み、未来の話をする。一緒に笑い合う。
 世間一般では、たぶん、別の名前で呼ぶやつ。

 友達ってやつだ。


   〈Fin〉