Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
櫨
2022-07-20 00:00:12
15817文字
Public
小説(pixiv公開済)
Clear cache
ダウト/コール
ベランダ事件後の部屋を掃除する話。
百の掃除下手と千の掃除上手について。
オリジナルキャラクター視点です。名前はありませんが、もそもそと主張しますのでご注意ください。
視点キャラの年齢・性別等の属性はあえて作中に書いていません。ご自由にお受け取り頂けますと幸いです。
時系列は第3部20章~第4部序盤(ふんわり)。
百の部屋はアプリ版準拠です。
お話の最後に参考ラビチャを掲載しています。
※pixiv版からべた貼りしただけで、レイアウト等は特に手を入れていません。あしからずご了承ください。
アイドルの部屋に入るのは、別に初めての経験ではない。
ハウスクリーニング請負業という業種、そして事業所が六本木にあることから、アイドルに限らず、いわゆる芸能人の住居への立ち入りは一度ならず経験がある。マンションも、戸建ても。自宅だけでなく、寮であったり、セーフハウスであったり。
人がいて、暮らしがあって、汚れるから掃除をする。掃除をする時間が取れないから、業者に依頼する。依頼されたから、掃除をする。それだけのことだ。アイドルだろうが、一般人だろうが、関係ない。
しかし今回の依頼物件は、住人に思いを巡らせる以前の問題として、部屋の状態そのものの不穏さに気圧されてしまい、顔に出さないようにするのが難しかった。
× × ×
そもそもが散らかった部屋であったらしく、床やテーブルの上にはさまざまな物
――
折り目のついた雑誌やら、しわくちゃになった百貨店のショッパーやら、緩衝材がはみ出した通販の段ボールやら
――
が乱雑に散らばり、あるいは層をなしている。
だが、入室してまず最初に目に飛び込んできたのは、もっとずっと非日常的な有り様だった。
横倒しになったサンセベリアの鉢は欠けて土を零し、筋のような模様を作っている。モノトーンのラグには泥水溜まりのような染み。ソファの一部が変色しているのも、水気を吸ってのことか。足元には砕けたボトルとその破片のガラスが散らばる。そして何よりも、部屋全体に感ぜられる強烈な酒気。
少しばかり羽目を外しすぎたホームパーティの後始末
……
にしては、物騒な雰囲気が漂っていた。
詮索しそうになった思考を、意識して空白にする。他人様の家の中という究極のプライベートを預かる仕事において、一片たりとも持ってはならないのは、無責任な好奇心だ。うちの会社はそのへん徹底していて、定期的な従業員意識研修を行うし、事業規模に見合わない個人情報マネジメント規格も取得している。また、案件ごとに開示条件を個別に定めた機密保持契約書を締結しており、これが大きな強みとなって、芸能人や政治家、財界人などの富裕層を顧客として抱え込むことに成功している。社長曰く、「ちょっとしたイノベーション」というやつらしい。
この案件もおそらく、そういったうちの特長を見込まれてのものだろうと察せられる。信頼を損ねるわけにはいかない。
「
――
お願いしたいのは、リビングの片付けと掃除です。床上のものについては、原則、処分していただいて構いませんが、判断に迷ったら声をかけて下さい。その他、細かい作業内容についてはお任せします」
部屋に迎え入れた男性は、岡崎と名乗った。ずいぶんと若そうに見えるが、言動はてきぱきとしており、有能かつ誠実そうだ。ただ、だいぶ疲れが溜まっているようで、眼鏡の下、はっきりと隈がある。
ハウスクリーニングは、作業開始前と作業終了後に、契約者もしくは居住者の立ち会いが必要になる。今回の立ち会いは、この岡崎が受け持つらしい。
部屋主は不在だ。だが、依頼の時点で、その人物の名前は明かされている。
壁にかけられた数多のパネルを眺める。CDのジャケット。ポスター。宣材写真らしきもの。こういう職業に就く人はやっぱり部屋に自分の写真を飾るものなんだな。と納得しかけたが、よく見ると、本人よりも相方の写真の方が多いのがちょっと不思議だ。それとも、部屋主の名を聞き違えたのだろうか。
Re:valeの「百」。確かにそう聞いたはずだ。「千」ではなく。
個人的に、アイドルやら芸能人への関心が薄いため、彼らのひととなりについて詳しくは知らない。
デュオグループで、老若男女に人気。歌って踊る他は、バラエティに出たり、ドラマや映画に出たり。その程度の認識だ。
……
まあ、百でも千でも、掃除には関係ない。
まずは見積を固めるところから。ゆっくりと歩きながら部屋全体を眺めて、頭の中でざっと作業の段取りを組む。手もとのタブレットに見積書を呼び出し、岡崎の方に向けた。
「こちらの一般清掃プランの範囲内でおさまります。具体的な作業内容は、壁面と床面の清掃、フローリングのワックスがけ、整理整頓、ごみ・不用品引き取り。見積希望されていた消臭オプションは、この程度なら換気と壁床清掃でほぼ気にならなくなると思います。かわりに、と言うと何ですが、オプションのラグクリーニングをお勧めします。シミ抜きと、撥水加工サービスが付きます。この場で作業できますし、クリーニング店よりもお得ですよ」
岡崎が頷くのを確認し、見積書をタップしてオプションを追加する。
「不用品の処分は一任していただくということなので、廃棄証明書を後で郵送しますね。弊社の規定で、ゴミを持ち出す場合には必ず発行しています」
追加料金はいただきません、と付け足すと、へえ、と岡崎が言った。
「さすが、しっかりしていますね」
「場所がら、芸能関係のお仕事をされているお客様が多いので。タレントさんの出すゴミって、ファンにとっては、ゴミじゃない場合がありますから」
他社の話だが、作業員がゴミ箱の中身を「記念品」として持ち帰ってしまった事例があった。当然大問題となり、業界全体が再発防止に神経を尖らせている。
生活空間という究極のプライベート、そのさらに極北であるゴミを暴くなど、ファンであっても
――
ファンだからこそ
――
赦されないことだ。
ざっくりとそのへんを説明すると、岡崎はふむふむと頷きながら聞いていた。
「それでうちでは、著名人の方からのご依頼の場合、間違いを起こさないために、派遣する作業員にひとつ必須の条件をつけているんですよ」
「条件ですか。それは、どういったものですか?」
興味深げに切り返しをくれる。思うところがあるのだろう。多分きっと、ヒントを得ようとしている。自社のタレントを守るための。
見積書をまとめつつ、その条件を口にすると、岡崎は最初目を丸くし、それから、眼鏡のフレームを指で押し上げて、なるほどと呟いた。
「分かりやすくて、いい方法ですね。いい方法ですけれど
……
自分としてはちょっと複雑です。うちの子たちは、また別の感想を持ちそうですが」
と言いつつ、目もとは和らぎ、口の端が上がっていた。
この「条件」の話は鉄板ネタだ。芸能関係の依頼人に話すとほぼ確実に面白がり、且つ安心してくれる。ただ、不快感をあらわにする人もいるので、そこは見極めなければならない。今回の場合、安心感を持ってもらうという点においてまず外さないだろうと思ったし、実際、岡崎の纏う疲弊した空気がいくらかほぐれて、穏やかになった。
完成した見積から作成した契約書を岡崎の端末に送信し、電子署名をもらう。契約完了。
清掃作業員一名×二時間、一般清掃お得パックプラン、ラグクリーニングオプション付きのお買い上げだ。
作業は定刻で終わった。岡崎がずっと近くで立ち会ってくれたため、逐一判断を仰ぐことができて、片付けや不用品回収がスムーズに進んだのが大きい。
最初に換気をして、たちこめていた酒のにおいを飛ばした。零れた土を掃き出し、鋭利に割れたガラス片を集めて回収すると、物騒な気配はあらかた消え去った。壁とパネルの埃をはらい、クリーナーでざっと拭いて、静電気防止のケアスプレーを振る。ラグはシミ抜き作業の後、あえて毛足の方向を変えて整えることで、モノトーンの風合いの出方を優しくした。仕上げにフローリングの床にワックスをかけると、部屋全体の光沢度が上がり、もともと採光の良い部屋ということもあって、驚くほど明るくなった。
ビフォーアフターの変化は予想以上に劇的で、満足のいく出来栄えとなった。岡崎も何度も頭を下げ、礼を言ってくれた。
作業完了の確認サインを貰い、掃除道具と回収したゴミの袋を抱えて部屋を出る。
ドアの外で、ゴミ袋を抱え直しながら小さく息を吐き、ひっそりと達成感に浸った。今回の作業は、単純に荒れた部屋を片付けるというだけでなく、部屋の雰囲気そのもののリカバリに繋がるもので、貴重な経験だった。
日常の汚れも、非日常の痕跡も、粛々と清らにし、住人に心地よい暮らしを取り戻してもらう、清掃という仕事。
地味な3K仕事で、底辺と揶揄されることもある。きらめくアイドルとは天と地ほども違うけれど、これもまた社会の、誰かの心の、一隅を照らす仕事だ。そのことを忘れないようにしたい。
いくぶん高揚した気持ちで帰社して、作業報告書を作成し、フォルダに格納する。業務日報を書きおえれば、今日の仕事は終わりだ。この仕事も、少しだけ印象的な案件として、日々の業務と記憶の中に埋もれていく。
そのはずだった。
-----------------------------------
少し経ったある日。出勤すると、リピーターから指名での依頼があったと伝えられて驚いた。
うちの会社はハウスクリーニングの他に家事代行サービスも行っており、そちらは定期利用の顧客が主でリピート率も高い。けれど、スポットの清掃で同じ客から再度の依頼が来ること、ましてや指名されることは珍しいどころかほぼ前例がなかった。
依頼名義は前回と同じく岡崎事務所。場所も同じ部屋。
違ったのは立ち会い人。
「住人の春原です。前回は立ち会えなくてすみませんでした。今日はよろしくお願いします」
すのはら。
思わず、壁のパネルと見比べる。
白いメッシュの入った髪。耳を飾るカラフルなピアス。瞳のあざやかな明るい虹彩。挨拶を交わす笑顔の下、ちらりと八重歯が覗いた。
正真正銘、Re:valeの百だった。
× × ×
今回は、キッチン部分のクリーニングを依頼したいという。
シングルレバーのついたシンクと、ガラストップのIHクッキングヒーターで構成された、必要最低限のシンプルなユニットキッチンだ。都心に建つ単身向けマンションの常として、自炊はあまり考慮されていないのだろう。
状態を確認する。換気扇に油汚れはほぼ無く、クリーニングは容易そうだ。クッキングヒーターにも、汚れというほどの汚れはない。シンクは幾分くすんでいるが、軽く磨けば光るだろう。排水トラップだけは、少し念入りに洗浄したほうがいいかもしれない。
総じて、ハウスクリーニングを依頼するほどの汚れ具合ではないように思える。
百は一歩離れた横に立って、興味深げにチェック作業を眺めていた。シンクから顔を上げると、目が合って笑まれた。笑顔のまま、口が動く。
「料理はほとんどしていないのに、換気扇とか流し台とか、気がついたら汚れてるし、なんか曇ってるように見えて。いちどすっきりさせたいなって思ったんです」
「このタイプのレンジフードはダクトに直結しているので、生活しているだけで部屋の埃が蓄積してしまうんです。使い捨てフィルターを取り付けるとお手入れが楽になりますよ」
「へえ、便利そうですね。それって通販で買えます?」
「ネットで検索すれば出てくると思います。あと、うちの会社でも取り扱ってまして、サービスの試供品を持ってきているので、作業後に付けときますね」
「わー、助かります! じゃあ今日は自炊して使用感を試してみようかな」
「継続してお使いになる場合は、ご連絡をいただければ事務所のほうに納品しますんで、ひとつよろしくお願いします」
「あ、だったら事務所名義でマネージャーを通して注文するかも。その時はお世話になります」
何ということもない定番の掃除談義とセールス会話だが、さくさくと運ぶやりとりが妙に気持ちよかった。懐っこく、感情豊かに上下する眉。ゆるく上下する口の端に、ずっと刻まれた笑み。声は明るく跳ねるようで、耳にざわめく感触を残す。歌でなくても心地いい。
何よりも、会話のあいだずっと、真っ直ぐに見つめられている。
人間を見る目で。
清掃作業員という仕事を長くやっていると、居るのに居ないみたいに扱われることに慣れてしまう。
端的に言うならば、背景。あるいは名もなきモブだ。
たとえばオフィスビルに、ショッピングモールに、作業中の清掃員がいたとして。通る人の視界に入るのは、人格を持った存在ではない。「掃除の人」だ。
ハウスクリーニングの場合、もう少し交流はあるが、根本は変わらない。挨拶をして、段取りを確認したら、あとは「掃除の人」として意識の外に追い出される。
別に良いのだ。こちらとしても気が楽だし、仕事の場なのだから、個ではなく、職業
――
もしくは、身分
――
で認識されることには、ある種の正当性がある。
けれど、稀にこうして対等な人間としての視線を向けられると、さざめくような、沸き立つような、そんな心持ちになってしまう。
落ち着かない気持ちを抑えて、キッチンに向き直り、レンジフードの清掃作業を開始する。整流板に始まり、フィルター、シロッコファンと部品をひとつひとつ取り外して洗剤をスプレーし、スポンジで磨いていく。思ったとおり汚れは軽く、つけ置きなどの必要は無さそうだ。予定の作業時間よりもだいぶ短く終われるかもしれない。
「前回の掃除、ほんとに助かりました。ちょっと事情があって、荒ら
……
荒れてしまって。あの状態の部屋に戻るの、気が重かったんですけど」
作業を見守りながら、なにげないふうに百が語り出した。
「帰ってきてみたら、リビングが輝いてるみたいに明るくて、すごくびっくりしました。それで、ずっとお礼が言いたかったんです」
思いがけない言葉に、息を詰めた。スポンジを動かす手が一瞬だけ止まる。
「部屋が綺麗になったってだけじゃなくて、なんていうか、オレの気持ちまで綺麗にリセットされて。なんだか、ヒーローに助けられたみたいな気分になったんだ」
なんて、子どもみたいだけれど。そう言って百は笑った。本当に子どもみたいな、顔いっぱいの笑顔だった。
あの日の気持ちを思い出す。あの日だけじゃない。地味で汚くて危険な仕事をしながら、ひそかに抱えている願い。一隅を照らしたいという気持ち。
それは確かに叶っていたのだと、こんなにストレートに伝えられるなんて、思ってもみなかった。
誰よりも世界を輝かせる、誰よりも輝いているアイドルの彼に。
喉の奥、ぐっと込み上げるものを呑み込む。泡のついたスポンジでごしごしとフィルターをこすりながら、ありがとうございます、今後ともよろしくお願いします、という決まり文句を口にするのがやっとだった。
しかし。それはそれとして、現況は。
振り返って、キッチンカウンターの向こう側、前回の清掃場所であるリビングへと目を向ける。本当は入室した時から、目の端にとらえてずっと気になっていた。あの日綺麗に片付けて、ワックスでつやを出し、ぴかぴかに仕上げたフローリング。
そこはいま、埋もれていた。
無造作に積まれたさまざまな判型の本、くしゃくしゃのレジ袋、抜け殻と化した衣服。その他もろもろ、雑多というより乱雑に放り出された残骸の数々。生活感が強く出た散らかりようで、まじまじと見てしまったことに、なんとなく罪悪感めいたものを抱く。
目線を追って、百はいくぶんきまり悪そうな顔をした。
「最近、仕事が立て込んでいて、片付けられなくて
……
っていうかオレ、掃除が苦手なんです。せっかく綺麗にして貰ったのに、だらしなくしちゃってすみません」
ぺこりと頭を下げられた。白いメッシュがふわりと広がる。
「いやそんな、謝られるようなことじゃないですよ。お仕事お疲れさまです。お忙しいんですよね。あの、よろしかったら、またご依頼くだされば」
いくぶん慌てて、なんとか無難そうな答えを口にする。と、頭を上げた百は、少し背筋を伸ばし、神妙な顔をした。
「あのう。依頼とはちょっと違うんですけれど。もし大丈夫だったら、世間話として聞きたいんですが」
歯切れが悪い物言いだが、言葉はしっかりとしている。あらかじめ準備されていた気配がした。
「こんなふうに散らかしまくって片付けられないのって、プロの方から見て、おかしいですか? 異常な
……
病的な感じとか、あったりします?」
そう言ってこちらを見つめる瞳の色は深く、強く光っている。
それで、なんとなく察してしまった。
キッチンをすっきりさせたかったのも、感謝を伝えたかったのも、本当だろう。けれど、今回の依頼のいちばんの理由は、この質問にあったのではないか。
部屋を散らかしてしまう。片付けることができない。自分を大切にできない。
自己放任
――
セルフネグレクトに陥っているのではなかろうか、という疑念だ。
似たようなニュアンスの質問を受けたことは、これまでにも何度かある。質問者はたいていの場合、こわごわとした笑みを浮かべて聞いてくる。そこにあるのは、弁解と自己憐憫の気配だ。
翻って百は、ごく真面目な表情をして、声は幽かに強張っていた。目を合わせたまま返答を待ち、身じろぎもしない。
どんな事情を抱えているかは知る由もないし、一介の清掃員が軽々しく判断できるものではない。事例や経験を語るにせよ、職務上の秘密という問題がある。
しかし、この問いかけを、ていのいい営業用トークに埋もれさせることはできない。というより、したくない。そう思った。
ひとつ息を吸って、話し始める。
「
――
世間話というか、一般的な範囲でお話します。うちの会社は特殊清掃も請け負うので、そういう現場を見たり聞いたりしたことはそれなりにありますが」
リビングを指し示し、ちょっと芝居がかって肩を竦める。選ぶ言葉は慎重に、けれど気安く、やわらかく。
「本当に片付けられなくなった人の部屋って、こんなもんじゃないですよ。足の踏み場もなくて、床が見えないのがデフォルトです。それと比べたら、このリビングなんて、子ども部屋におもちゃが散らかってるくらいのレベルです」
子ども部屋、という例えを聞いて百はちょっと面映ゆそうな顔をしたが、言葉は差し挟まず、真っ直ぐな姿勢のままで聞いている。
「片付けとか、不用品の処分って、実はものすごく精神力を消費するんです。これはこっち、あれはそっち。これは要る、あれは要らない。っていう、過去と現在と今後を踏まえて、多数の決断をするのが、人間の脳には大きな負担になるそうです。さきほど、仕事が立て込んでるって仰っていました。仕事やプライベートにキャパをたくさん使っていると、片付けをするための気力は残らなくて当たり前なんですよ」
もちろん、その人にとっての優先順位や、適性の問題はある。例えば主夫や主婦など日々の家事自体がメインタスクであるとか、逆に外で仕事をしつつ家事を息抜きとして積極的に楽しんでいるとか。しかし、目の前の彼
――
「Re:valeの百」にとっては、義務としての家事のプライオリティは低いだろう。
「あとですね。実際に病気でそういう状態になっている人は、自分に疑問を持てないらしいです。家族や、同居人に指摘されても否定してしまう。
……
つまり、そうやって不安に思ううちは全然大丈夫だと思います」
大丈夫、の部分に力を込めて言い切る。
百はゆっくりと深呼吸のような息をついて、頬を緩ませた。
「ありがとう。オレってわりとやらかし系メンタルでね。自分のこと、あんまり信用できないんだ。だから、客観的な基準で言って貰えて、ほんと助かりました」
再び、ぺこりと頭を下げられて、やっぱりなんだか慌ててしまう。
「いやそんな、ただの世間話ですから、本当に」
その時、くぐもった電子音のメロディが鳴った。
百がキッチンカウンターに置かれていたスマートフォンを取り上げる。ディスプレイに浮かんだ通知を見て、微笑むような、困ったような、微妙な唇の曲げかたをした。
顎に指をあてて少し考えてから、メッセージを返信する。しばらくのやりとりのあと、スマホから顔を上げて、こちらを見た。「困った」の割合のほうが少し多めの表情をしている。
「すみません、今から相方が来ることになりました。作業終了まで、一緒に立ち会うことになると思います」
Re:valeの百の相方。それはつまり。
「
――
Re:valeの千
……
千さんが? ここに?」
不意打ちの驚きに、思わず口から洩れた呟きを聞いて、百が衒いなく笑った。
「あ、名前を知ってくれているんだね。なんか嬉しいな」
「いや、そりゃ、Re:valeですから、名前くらい
――
」
そこでふと、言外の意味に気づく。
トップアイドルだというのに、メンバーの名前を知らない可能性があると思われていた。つまり、彼らに抱く興味関心が著しく低いということを知られている。
岡崎の顔が脳裏に浮かんだ。
――
いい方法ですけれど
……
自分としてはちょっと複雑です。
――
うちの子たちは、また別の感想を持ちそうですが。
作業員の必須条件の話は、依頼主を和ませ、面白がらせる話のネタとして鉄板だ。であれば、聞いた人間もまた、話のネタとして語りたくなる、ということはあるだろう。しかしまさか。
「うちのマネージャーに聞いたよ。貴方、オレたちの『ファンじゃない』んでしょ?」
当人に伝えるとか。
心の底から、勘弁して欲しいと思った。
-----------------------------------
弊社、社員マニュアルより抜粋。
『芸能人など著名人からの依頼の場合、その依頼人のファンであることを自覚している者は、担当から外れること』
研修や教育を徹底していても、いざ憧れの存在に近く寄れるとなったら、ファンとしてはどうしたって冷静ではいられない。すると、倫理的な問題のみならず、物理的にも事故を起こす蓋然性が高くなる。その予防策として定められたものだ。
このルールは意外なほど上手く機能していた。これをきっかけとして同好の士を見つける者も多く、社内の会話を増やし、雰囲気を和やかなものにすることに一役買っている。対外的にはネタとして良し。社内的にも効用多し。
さりとて、当の本人に、しかも人気商売であるアイドルにこれを明かすのは。
お前に興味関心がないと言い放ったようなものだ。
× × ×
Re:valeのファンではない、と百に認識された。それだけのことなのに、妙に動揺してしまい、会話をしつつも作業は続けていた手が、泡だらけのスポンジを強く握りしめたまま完全に止まってしまった。
「あー、そんな顔しないで! 大丈夫、ぜんぜん気にしてないから! それよりもいいアイデアだなって感心しちゃった」
百は笑いながらそう言って、ひらひらと手を振った。
「いつかはRe:valeのファンになってくれたらいいなとは思うけどね。ヒーローと思えた人を籠絡しちゃうって、ぐっと来るシチュエーションだと思わない?」
よくわからないが、なんだかすごいことを言われた気がする。咄嗟のいらえも返せずに硬直していると、ドアチャイムが鳴った。千が到着したのか。
ちょっとごめんね、と言い置いて百が玄関へと向かう。
ふと気づく。エントランスからの呼び出しがなかった。このマンションのオートロックは物理的な鍵が必要なタイプのはずだから、千は合鍵を持っているということか。だからどう、というわけでもないけれど。
スポンジを握り直し、黙々とシロッコファンを擦る作業を再開する。落ち着け。落ち着こう。そのためには慣れた作業をするのがいちばんだ。
洗い終えたファンとフィルターを流水で洗い流す。百はなかなか戻ってこない。すすぎを終えて水を止めると、玄関の方から微かに声が聞こえてきた。
「
――
こんな時に、
――
部屋に
――
れるなんて」
「それで作業切り上げて来ちゃうとか、気にしすぎだよ。二回目だし、前回のおかりんチェックをパスしてるんだから。おかりん認証マークつけてもらう?」
より距離が近いためか、百の声ははっきりと聞き取れる。明るい口調だが、どこかしら宥めるようを調子を含んでいた。一方の、おそらく千の声は、途切れ途切れにしか聞こえない。低く唸るように喋っていて、なんとなく不機嫌そう、というよりも駄々をこねているような声音だった。
いずれにせよ、ふたりともにプライベートな距離感が強く感じられる声の調子だ。聞かないようにしたほうがいいだろう。耳に届く音を打ち消すため、カランのレバーを押して、水を流したままシンクを磨き始める。
それでも水音に混じり、会話の切れ端
――
というか、言い争い一歩手前くらいの強い調子の声がしばらく聞こえていたが、やがて静かになり、ふたりぶんの足音が近づいてきた。
「ごめんね、長く外しちゃって。ユキも一緒に立ち会って、作業を見学させてもらっていい? 邪魔はしないようにするから」
「あ、はい、どうぞ。立ち会いでしっかりと見ていただくのは、こちらとしても助かりますんで」
マニュアル通りの答えを口にしつつ、覚悟を決めて振り返った。
百の後ろから、もうひとつ人影が歩み出る。変装のためだろうか、大きめのキャップを被っていた。不織布のマスクは顎へと引き下げられている。
と、キャップが取り去られ、中に収められていた髪が銀光をたなびかせながら零れ落ちた。青く塗られた指先が梳いて、さらりと背に流す。
顔を上げた眦に、いくらか不機嫌の余韻が残っている。それでも瞳は涼やかに瞬いていた。
こちらも正真正銘。Re:valeの千だ。
「あの
――
」
挨拶の言葉を探す数秒の逡巡のあと、口から出たのは、自分でもよく分からない言葉だった。
「
――
お邪魔しています」
すると、千はわずかに目もとを緩ませた。
「うん。いらっしゃい」
身構えていた気持ちが溶けるような、穏やかな声だった。さきほど漏れ聞こえてきた会話での、機嫌を損ねた印象は無い。内心でほっと息をついていると、千は含むような笑みを浮かべ、言葉を継いだ。
「あなたが、僕たちのファンじゃない人?」
ああ
……
。
「その言い方はどうかと思うよ、ユキ。確かにこの人がオレたちのファンじゃない人だけど」
わざとなのか、そうじゃないのか、ふわっとした千の表情と、とにかく朗らかな百の表情からは、判別しがたい。いずれにせよ、針のむしろとはこのことだ。
とにかく作業を続けるしかない。早いところ掃除を終えて、退散してしまいたい。
クッキングヒーターにとりかかる。専用のクリーナーを塗布し、やわらかな布で拭いていく。こちらも汚れは軽微で、さっと拭くだけでくすみも取れ、表面がすべらかになった。次に奥の排気口のパネルを取り外し、ミニブラシで金具の汚れを落とす。
Re:valeのふたりは、それぞれ右肩と左肩の斜め後ろに立って、まじまじと手もとを見ている。ひたすらやりにくい。
「やっぱりプロの手つきは違うよね。無駄がない動きで、見てて気持ちいい」
「この作業、心を無にしたい時にいいかも
……
」
「曲作りの気分転換になったりする?
――
あ、おかりんからだ」
右肩の背後で、スマートフォンの振動音が響いた。百がポケットからスマホを取り出しながら、千に言っている。
「こっちにはまだユキとおかりんしか登録してない」
「データ復旧できなかったの?」
「いや、メインとは別に端末をもうひとつ増やそうかなと思って。Re:valeホットラインみたいな。あ、Re:valeホットライン、恰好良くない? なんか企画になりそう」
軽い口調で言いながら、ディスプレイに目を落とし、ううんと唸る。
「リスケの相談だ。ソロ仕事のほう。調整が複雑になりそうだから、ちょっと向こうで通話してくる。ユキはこのまま立ち会いしてもらってていい?」
千が頷くのを確認して、こちらにも笑顔を向ける。
「じゃあ、お掃除の続き、よろしくお願いします」
そう言って百はスマホを持った手を振りながらキッチンから離れ、リビングを抜けて別室へと入っていった。
作業に戻る。排気口の内部を洗剤を染み込ませたタオルで拭き取りつつ、中にゴミが落ちていないか点検する。グリルはついていないタイプなので、これが終われば布拭きで仕上げをして、今回のクリーニングはほぼ終了だ。
ちらりと横目で窺うと、千はなにやら難しい顔をして、リビングを眺めていた。散らかり放題の床を見下ろし、小さくため息をつく。
「リビングの片付けは、この後?」
「すみません、今回はキッチンのクリーニングというご依頼なので
……
そっちはまた別見積の作業になります」
「ああ、そうなんだ」
落胆されるかと思ったら逆で、なぜか少しだけ嬉しそうな顔になり、顎に落としていたマスクを着け直してリビングへと向かう。
え、と思うあいだに、脱ぎ散らかされた服を拾い上げて畳みはじめた。ソファの上にぽんと乗せて、次は空のペットボトルを拾い集める。落ちていたレジ袋に放り込んで、口を縛りベランダへ。本は判型ごとに揃えられて、部屋の隅に小さな階段のように積まれた。
手早いし、手慣れている。おまけにやたら滑らかで流麗な動作で、しばし見惚れてしまった。ただ手慣れているというだけではなく、部屋の配置において最も効率的な動きと片付け方で、とにかく迷いがなかった。
視線を察してか、千が口を開く。
「ダーリング夫人がね」
誰だ。ダーリン? 夫人?
声には出さなかったが、こちらの顔を見た千は、頷いて言葉を続けた。
「ダーリング夫人。ウェンディの母親。『ピーター・パン』に出てくる。『ピーター・パン』、知ってる?」
小さい頃にアニメか何かで見たような気がする。空を飛びまわる天衣無縫な少年と、彼に連れられておとぎの国へと飛び立つ子どもたちの話。
「ダーリング夫人は、夜、子どもたちが寝ているあいだに、心の中を整理整頓する。ワードローブの整理みたいなイメージかな。引き出しをひっくり返して、昼のあいだに散らばってしまったいろんな心をあつめて、風を通して。すてきな考えはすぐに取り出せる手前に、そうでないものは心の奥深くに、小さく畳んでしまってくれる」
ソファに置いた服の皺を指先で伸ばしながら、独り言のように呟きを落とす。
「そういう風に、できればいいんだけど。難しいね」
低く落ち着いた抑揚の中に、沈み込むようにしてわずかに諦念の響きがあった。
手にしていた布を強く絞る。キッチンカウンターを拭き上げながら、知らず口を開いていた。
「千さんは、Re:valeは、掃除なんかよりもっとずっと心を整えてくれるもの、持ってるじゃないですか」
思ったよりも強い口調になった。千が少しびっくりしたように顔を上げる。
手すさびの気分転換としてするのは全然構わない。けれど、鬱屈の種にしてしまうなら、さっさとプロに任せてくれたらいい。彼にしか、彼らにしか、できないことが他にあるのだから。
「それで、狂気の主から救ってくれたりするじゃないですか」
「
……
え? それって」
「
…………
あ」
やってしまった。
「それ『NO DOUBT』の歌詞だよね?」
「あ、ええと
……
」
「しかも落ちサビ」
動画サイトで無料公開しているMVや、テレビの歌番組のショートVer.では流れない、落ちサビ。フルVer.を聴き込んでいないと、咄嗟には出てこない
――
むしろ、知りようがない部分。
「お待たせー。あれっちょっとユキ、なんで片付けしてくれちゃってるの。いいって言ったのに」
折悪しくか、折良くか。寝室から百が出てくる。それに向かって千が告げ口するように言った。
「ねえモモ、この人、ファンじゃない人なのに『NO DOUBT』の歌詞を暗記してるんだけど」
「え、なになに、何の話?」
「狂気の主だって」
「誰が? じゃなくて、『NO DOUBT』か。君を蝕むやつ?」
「そうそう。ファンじゃないのに落ちサビの歌詞を知ってるってどう思う?」
「うーん。カラオケで歌うためとか」
「ファンじゃないのにカラオケで歌うの?」
「あ、それもそうか」
「まあ、本人に聞くのが早いかな」
ふたり揃って、キッチンへやってきた。
先ほど見学していた時と同じポジション
――
右肩の斜め後ろに百、左肩の斜め後ろに千が立つ。
そのまま、覆いかぶさるように、耳の近くまで寄せてきて、
「
――
言えよ」
「No doubt
――
」
膝が崩れ落ちそうになった。顔が熱い。
口を押さえて振り向くと、ふたり並んでこちらの様子を眺めて、とてつもない満面の笑みを浮かべている。にこにこ、というより、にやにや。加虐的な笑みだ。
このふたり、Sだ。紛れもないSだ。
-----------------------------------
ミニキッチン全体の拭き上げをした後、約束していたとおりレンジフードに使い捨てのガラス繊維フィルターを貼り付けて、作業はすべて終わった。道具類を片付けて手を洗い、作業確認の書類を手渡す。
百が受け取って、サインをする。無論、アイドルとしてのサインではなく、本名であろう名前だ。それを見守りながら、言い訳のように言う。
「
……
ファンじゃない、とは言ってないです。岡崎さんにも」
アイドルとしての彼らに興味を持っていなかったのは事実だ。雑誌は読まないし、バラエティやドラマを見る習慣がなく、家にはテレビもない。
ただし。Re:valeの音楽はずっと以前から気に入りだった。楽曲も、ふたりの歌唱も。Re:valeだけで、プレイリストをいくつも作ってしまうくらいには。
しかし、アルバム等を購入したことはなく、コンサートに行くでもなく、サブスクリプションの定額の範囲内で聴いている立場で、ファンを名乗るのはおこがましい。自分としては、単なる「Re:valeの音楽好き」と思っている。
そう言うと彼らは顔を見合わせた。
「シーンごとのプレイリストを作るくらい熱心に聴いてくれていたら、僕としてはじゅうぶん嬉しいし、ファン認定してしまうけど」
「だよね。でもそれで、音楽が好きなんであって、ファンを名乗るほどじゃないから、担当になったってこと?」
「いえ、依頼の時点で自己申告して、社内規定的にはファン認定されました」
「社内規定でファン認定
……
」
百が繰り返すと、千が小さく吹きだした。なにかツボに入ったらしい。
「担当になったのは、自分以外に派遣できる作業員がいなかったからです」
「ファンだって認定されたのに。なんで? ルールが変更になったとか?」
サインを書き終えた百が、ボールペンと書類を差し出した。それを受け取りながら、首を横に振る。
「そうじゃなくて
――
」
ひとつ、深呼吸をする。
「弊社、全員がRe:valeのファンだったんです」
× × ×
今回の依頼に伴う確認の結果、初めて判明した。社長をはじめとして、正社員と非正規社員、総勢17名。事業所の全員が、Re:valeのファンであるということが。
自分のようにサブスクリプションで楽曲だけを追っていた者もいれば、CDをすべて揃える者、ツアー全通を目指す者、出演番組のチェックを欠かさない者、動画サイトで後追いする者。熱量や経路は違えど、全員が、何らかのかたちで、Re:valeを「好きで、追いかけて」いたのだった。
本来の社の理念と方針からすれば、断るべき仕事だったかもしれない。けれど、総務担当者がひとつ、気になる点を指摘した。
依頼を受けたマンションの管理会社は、中堅どころのハウスクリーニング業者と提携している。そこをあえて使わずに、機密保持に定評のある弊社に依頼してきたことには、何らか事情があるのではないか。
だとしたら、微力ながらも力になりたい。社長以下、全員の意見が一致した。
しかし、経営理念にはできるかぎり沿いたい。そこで妥協案として、音楽性に惹かれてはいるが、アイドルとしてのRe:valeのパーソナリティへの興味が薄い
――
全社員のなかで、最もファンとしての熱量が低いとみなされた
――
自分に白羽の矢が立った、というわけだ。
説明を終えて、ひとつ息をつく。そろそろ作業終了時間だ。
「社員全員が
――
」
「オレたちのファン
――
?」
百と千は、首を傾げるようにして、互い目と目を合わせている。それから、照れたような笑みを浮かべ、こちらに顔を向けて、声を揃えて言った。
「
――
ありがとう」
深く流れる抑揚の声と、弾むように明瞭な声が、綺麗なユニゾンになって耳に響く。歌うように。
Re:valeの声だ。
書類をリュックに入れ、掃除用品の詰まった荷物を手に持って、深々と礼をする。
「こちらこそ、ありがとうございました。お気づきのことがありましたら、何でもお問い合わせください」
事務的なことだけを話していないと、もう持ちそうになかった。
歩いた後を布で拭きつつ、玄関へと向かう。背後から百が追いかけてきて、言った。
「また掃除をお願いしたら、来てくれる?」
靴を履いて振り返り、後ろ手でドアをあける。
「ご依頼はいつでも承ります。ただ、次があったとしたら、おそらく自分以外の者が作業にあたらせていただくと思います」
「え、なんで?」
最後にもう一度礼をし、できるだけきちんとした仕事用の笑顔をつくって、言った。
「自分は、弊社でも有数の、おふたりのファンになってしまいましたから」
× × ×
この件以降、弊社は月曜日がノー残業デーになった。「NEXT Re:vale」の放映日だからだ。見逃しネット配信もあるけれど(テレビのない身には有り難い)やはりリアルタイムで視聴したい者は多いらしい。
社長は酔っぱらうとカラオケで「NO DOUBT」を歌う。ただし「ダウト」を「ダスト」に替えて歌うので、社員からは顰蹙を買っている。いつの日にか「ダスト」替え歌バージョンでテレビCMを作るのが夢なんだそうだ。
ある時、Re:valeが大量のスキャンダルに塗れた。不自然なほどのバッシング、凄まじい個人攻撃、過去の掘り返し。
みんなで怒って、泣いた。そして、掃除をした。
捏造の情事も、人格攻撃も、捩じ曲げられた過去も、全部全部、掃除した。
そういう気持ちで、仕事をした。
きらめくアイドルとは天と地ほども違うけれど、きらめくアイドルの心を照らす明かりになれることもある。そのことを知ったから。
毎日ただ、掃除をしている。
誰かのヒーローになるために。
〈Fin〉
---
ラビチャ参考
百[リハーサル中~本番] 第3話
千[メルヘンドリーム] 第2話 選択肢1
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内