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夜明 奈央
2024-05-05 10:13:34
967文字
Public
中太SS
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中太 太宰がジャム瓶の蓋と格闘するだけ
2024年2月7日初出
朝食のパンにジャムを塗ろうと思ったが、ジャム瓶の蓋が硬くて開けられなかった。
冷蔵庫から出したてだったのでそんなものだろうと思い、一旦金属の蓋を手で握って温める。程よく温まったことを確認して再度力を込めたが、蓋はびくともしなかった。
こういう時はじわじわと力を掛けるよりも、勢いを付けた方が開けやすいものである。手を離してから気合いを入れ、勢いよく力を入れたが、やはり動かない。
手が滑っているのだろうかと近くにあったタオルで覆ってから同じことを試してみたが、微動だにしなかった。
どういうことだ。大抵の場合ここまですれば開くのだが、全く開きそうに思えない。
他に考えられる手段としては、ゴムやシリコンを使うぐらいだろうか。確かシリコン製の洗って何度も使えるタイプのラップがどこかにあったはずだ。どこだろうか。
探しながら、どうしてこんなにも硬いのだろうかと考える。昨日開けたばかりなので、噛み合わせについたジャムが乾いて固まってしまったとも考えづらい。そういえば昨日使った後、冷蔵庫にしまった記憶どころか閉めた記憶もない。そこでようやく、これを閉めたのが自分ではなく中也だということに気がついた。おそらく蓋も閉めずに放置していたのを、中也が片付けたのだ。
気づいてしまえば、開けようとすることさえ莫迦莫迦しく思えてきた。きっと嫌がらせのつもりで硬く閉めたのだ。中也の莫迦力で閉めたものを自分が開けられるとは到底思えない。嫌がらせなら異能力を使った可能性すらある。そんなものに挑戦するだけ時間の無駄である。これは中也に開けてもらおう。
と、決心したところでタイミングよく中也が起きてきたので、無言でジャム瓶を差し出した。
「んだよ?」
「嫌がらせにしては地味すぎない?」
「あ? 何もしてねぇけど」
言いながらも意図は察したらしく、中也は不承不承といった感じで瓶を受け取った。そのまま蓋に力を込める。
「は、かってぇなこれ」
言い終わるより先に手元が稲光のように小さく光って、すぐに軽快な音を立てて蓋が開いた。
中也が無言で差し出してくるのを太宰も無言で見つめ返す。押しつけられて、仕方なく受け取った。
「君が開けられないもの、私が開けられると思った?」
「言っとくけど俺は普通に閉めただけだからな!?」
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