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夜明 奈央
2024-05-05 08:46:05
1060文字
Public
くりつる
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デートでくらい甘えたい
現代遠征中のくりつるがナンパされる話
2023年3月18日初出
大倶利伽羅が厠へ行って戻ってくると、鶴丸が女性2人に囲まれていた。
会話の内容までは距離があるのでわからないが、所謂“ナンパ”というものであろうとわかる。女性は2人とも露出の多い派手な格好をしていて、自分たちに自信があるのだろうことが窺い知れた。
今は鶴丸と2人で審神者の時代に遠征に来ていた。情報収集がひと段落して、休憩がてら立ち寄った茶屋でのことだった。確かに荷物も置いていなかったし、食器も立ち上がったついでに返却口に持っていってしまったので、1人客だと思われてもおかしくないかもしれない。大倶利伽羅は、鶴丸を1人残していったことを激しく後悔した。
大倶利伽羅が近づくと、気づいた鶴丸がわかりやすく安堵の表情を浮かべる。それがなんだか腹立たしくて、ずかずかとわざと大きな足音を立てて近づいた。女性たちの背後に立って、できるだけドスの効いた声を出す。
「おい、そいつに何の用だ」
恐る恐る振り返った女性たちが、小さく息を呑んだ。日頃から目つきが悪いと言われる大倶利伽羅だ。不機嫌で人相の悪さは3割増し。子供なら泣いてしまうかもしれない凶悪さだった。
「あ、すみません。じゃあ私たちはこれで」
さっと視線を逸らしてそそくさと退散する女性たちを、大倶利伽羅は苦虫でも噛み潰したような気分で見送った。
「こんなとこ、さっさと出るぞ」
「そうだな」
鶴丸の腕を掴んで引き寄せると、妙に弾んだ声で同意される。顔を見るとにこにこと楽しそうに笑っていた。視線で問いかけると「俺の旦那様はやっぱりかっこいいなと思って」と返される。
鶴丸は掴まれていた手を外して、代わりに指を絡めるようにして大倶利伽羅の手を取った。
「お前はまたそういう調子のいいことばかり言って」
文句を言いつつも、大倶利伽羅は繋がれた手を握り返す。そのまま店の外へと連れ立った。
「そんなことはないぞ? せっかくの“でえと”なんだ。旦那様のかっこいい姿を見たいものじゃないか」
そこで大倶利伽羅は、はた、と気づくこととなった。伊達でいた頃も、たまに一緒に行く万屋でも、鶴丸が言い寄られているところは幾度となく見たことがある。その度に冷たい視線と態度で追い払っていた。
隣の鶴丸を見ると、にこりと笑みを返される。
「たまにはこうやってお姫様気分も味わってみたいものさ」
「
……
今は遠征中だ」
「そうだったな」
つい言葉に詰まってしまったのは、そんな可愛らしい我儘なら悪くないと思ってしまったからだった。たぶん、鶴丸には全部バレている。
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