かみや
2021-02-06 22:42:14
2031文字
Public とーらぶ
 

夜に吠える

くまみさん(@kumamimm)の狛犬くわまつのお話が最高だったのと、狛犬くわまつが人間(または可愛いわんちゃんねこちゃん)になって夜の神社に肝試しに来る輩を追い返したりしてたら最高だなって思って書きました。
くまみさんありがとうございます!
※前半モブ視点
※ちょっとホラー

夜の神社ってやばいらしいよ。
誰かが言い出したその噂は、マンネリ気味な日常の退屈しのぎには丁度よかった。面白そうじゃん。じゃあ今夜行こうぜ、とその場にいた友人たちと深夜に集まることを決めた。
小さいながら地域を見守る神社でも、夜になるとどこか異様な雰囲気がする。
市街地から外れた場所にあるため街灯が少なく、スマホのライトだけを頼りに参道を進む。
「や〜なんか、結構雰囲気やべえな」
「明かりないだけでこんなに違ぇんだな
「それな。そこら辺の心スポよりやばそう」
境内は暗く、あまりにも静かだ。自分たちの足音だけがやけにはっきりと響く。ずるずると暗闇が後ろから迫ってくるような気がして背中がぞくぞくする。
拝殿の前に着くといよいよ異様さが増し、押し潰されそうな重い空気に一同は口を閉ざした。木の影や拝殿の後ろの色濃い闇から「なにか」が飛び出してくるのではないかという想像が一瞬頭をよぎり、どきりと心臓が波打つ。
ふと、拝殿に掛けられた注連縄の紙垂が、風もないのにゆらゆらと揺れた。
え、と違和感を感じたとき、隣で「あれ?」と声を上がった。
「そういやここってさ

「ねえ」

突然、背後から掛けられた声に心臓が一気に縮み上がりうわっ!?っと互いに身を寄せ合いながら振り向くと、参道から少し外れた御神木のあたりに、人影が二つあった。
二人ともしゃがんでいるように見える。恐る恐るライトを向けてみると、辺りの闇が深すぎてよく見えないが、自分たちと同じくらいの青年のようだった。一人は長い前髪で目元を隠して口をへの字に曲げ、もう一人は肩口にさらりと流れる黒髪に中性的な顔立ちがひやりとするほど冷たい。
自分たちの他には誰もいなかったのに、いつの間に来たのだろうか。
後から来たと言うより、まるでずっとそこで話でもしていたかのような二人の雰囲気にざわりと胸が騒ぐ。
あ、これはやばい。
直感的にそう思った途端、中性的な顔立ちの青年の瞳がギラリと光った。すっと細められた瞳から放たれる青く鋭い光。背中に冷水を浴びせられたような悪寒と共に足元からはい上る恐怖感に突き動かされ、一同ははじかれたように元来た道を走り出した。

入口まで大して距離はないはずなのに妙に遠く感じられ、一同は無我夢中で走った。走って走って走って、気付けば近くのコンビニの駐車場でしゃがみ込んでいた。
心臓が飛び出しそうなほどばくばく鳴り、指先は冷たく震えていた。放心状態のまま息を整え、ようやく落ち着きを取り戻すと「なにあれ」と心許ない言葉が滑り落ちてきた。
「えあれってガチ?」
「いや……ガチだろ
「やば
マジかー。重苦しいため息がもれる。夜の神社はやばい説を身をもって立証してしまったのだ。
ふと、思い出し「そういやさ」と声をかける。
「さっきお前なんか言いかけてたじゃん。何かあった?」
ああ、と彼は一同を見て、

「あそこさ、お参りするとこの両脇に狛犬いるじゃん?さっきいなかったような気がしたんだよね」


◇◇


「だめだよぉ松井〜」
大声を上げながら走り去って行った彼らを見送り、桑名はよいしょと立ち上がる。
「あの子たちわりと普通そうだったのにあんなに怖がらせたら可哀想だよぉ」
澄まし顔で松井も立ち上がると「何言ってんの」とお尻の辺りを優雅な手つきで払う。
「ヤンキーじゃなくてもあのくらいやらないと、次こそはってまた来るよ」
「でも出るって噂になった方が気になって逆にみんな来ちゃうんじゃない?」
う。一瞬言葉に詰まる松井に畳み掛けるように「だからわんちゃんになろうって言ったのに」と桑名が唇を尖らせた。
「可愛いわんちゃんで気を逸らせば、可愛いね〜で終わりじゃないか。平和に解決だよぉ」
まあ確かに桑名は迫力に欠けるものね。さっきの何アレ、ガンつけてたんだろうけど厠我慢してるような顔してたよ」
「ちょっと厠我慢ってどういうことー!松井なんか無愛想で目付き悪い上に人の子相手に本気で殺気だして大人気ないやん」
「それは彼等を帰す為にやっただけで
言いかけて松井ははっと振り返る。桑名も同じ方を見ると、延々と続く闇がぞぶりと蠢いた。
参道の脇からぞぶり、ぞぶり、と闇が腫瘍のように不気味に腫れ上がり松井と桑名の方に向かってずるずると移動してくる。
一人は気付いていたみたいだね。彼奴らが追いかけてきたことに」
「ここは鬼門だから、彼等に続いて鳥居から入って来たんだ」
また一つ、ぞぶりと闇が蠢いた。ボコボコと腫れ上がったそれらがずるずるとこちらにやってくる。長い夜になりそうだ。
松井は腰に手をやり、ため息をつく。
「桑名。これが終わったら焼き鳥食べに行こう。美味しいレバー焼きが食べたいな。桑名の奢りで」
「焼き鳥は賛成だけど松井も出してよね」
桑名も腰に手をやりそう返すと、二人は鋭い牙のようにギラりと輝くそれを一気に抜いた。