溶けかけ。
2024-05-01 20:55:40
1499文字
Public ほぼ日刊
 

魔法少女フォンティナリア

過去ツイより、『フリーナが魔法少女で猫ヌヴィがマスコット』のお話。
猫ヌヴィですが、普通に人間体にもなります。


「!フリーナ殿、上だ!」

頭上を仰げば大きな鳥が飛んでいた。

「見つけた!――これで、終わりだっ!」

 フリーナが魔法のステッキを振れば、サロンメンバー達が鳥に一斉攻撃を仕掛けた。鳥は奇声を上げて消えていった。

「ふう。任務完了だね、ありがとうヌヴィレット」

 その名を呼べば、茂みから一匹の猫が出てくる。
 
「流石はフリーナ殿だ」
 
 猫はフリーナの肩へ飛び乗った。
 
「じゃあ、帰ろうか……早いね、キミと会ってからもう半年も経つんだ」
 
 フリーナが変身を解く。可愛らしい魔法少女の服がセーラー服へと一瞬で変わる。
 何を隠そうフリーナは、この街を脅威から人知れず守る魔法少女なのだ。

 事の起こりは一ヶ月前、弱っていた猫――ヌヴィレットを拾ったことから始まる。彼はフリーナの魔力を無意識に吸い上げてしまい、契約が成立してしまったため、フリーナは魔法少女になった。
 はじめのうちは意見の対立もあったが、まあそれなり仲良くやっている。



「ヌヴィレット危ない!」
 
 フリーナが私を抱き抱える。強い衝撃波が彼女を吹き飛ばした。私を抱えたままの彼女と地面に転がり変身が解ける。魔物が舌舐めずりをしながらこちらへ歩いて来るのが分かった。
 
「フリーナ!目を覚ましてくれ!」
 
 何度も呼び掛けるも反応がない。完全に気を失っているようだ。
 仕方ない、とヌヴィレットは目を閉じて自身の体に魔力を行き渡らせる。
 
……頭を垂れろ」
 
 ヌヴィレットは人間の姿に戻ると魔物に手を翳す。そしてその手を指揮者のように振り下ろせば、操り人形のように魔物もひれ伏した。
 
「な、何者だ……!?お前は!?」
 
 ヌヴィレットは魔物に歩み寄る。腕には気を失ったフリーナを抱えて。
 
「ほう、私の威圧に耐えるとは中々上位の魔物のようだな」
 
 魔物はひれ伏した体のまま、唯一自由な顔を上げた。驚きで目を見開く。
 
「あ、あなた様は……り、龍王陛下!?あ、あなた様のような尊き御身がなぜ魔法少女如きといらっしゃるのですか!?」

「君に説明が必要か?」

 ヌヴィレットの威圧感に魔物は再び頭を垂れた。

「も、申し訳ありません!!」

「今回は見逃そう、帰るべき場所へ帰るがいい。そして同胞達にも伝えよ。王の帰還は間近だと」

「か、畏まりましたっ!!」

 魔物が消え去る。後にはヌヴィレットと気を失ったままのフリーナが残された。
 ヌヴィレットがフリーナの額に口づける。

「この半年で君の魔力は十分に高まった」

 ヌヴィレットの脳裏にとある光景が浮かぶ。



『ねえ、ヌヴィレット。キミは何か願い事はないかい?』

『願い事?』

『うん。キミはよく僕を助けてくれるだろ?だから僕にできる範囲で何か出来ることがあったら遠慮せずに言ってくれ』

 ヌヴィレットは驚きで目を見開いたまま、止まる。

……ふむ。生憎、今は特に必要性を感じていない』

『そうかい。なら、必要が出来たら言ってくれ』




 ヌヴィレットはフリーナを強く抱き締める。元々、彼女の魔力は強かった。だからこそ、彼女ならあるいは、と思う。

「私の本当の願い……か」

 フリーナをベッドへ寝かせる。

 時は満ちた。恐らく、もう側には居られない。けれど、彼女は一人でも立ち向かえる女性なのを知っている。

「また会おう、フリーナ殿」

 彼女の髪の色をした月が夜空に煌々と輝く。

 あまりの眩しさに目を閉じた。



 どうか、私を殺してくれフリーナ殿――