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kaede
2024-05-01 15:48:06
1518文字
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ほんの出来心で一彩くんにキスしてしまった燐音くんのはなし
燐一
このあとめちゃくちゃ一人反省会した
ほんの、出来心だった。
いや、出来心、なんて無責任な言葉で片付けていいもんじゃない。俺は一度だってそれに対していい加減な態度で接したことはないし、いつだって真剣に考えていた。そうしたいと求める自分の感情よりも、そうすべきではないと律する理性の方に常に比重を置いていた。
第一、一彩に対して失礼だろう。
ついうっかりキスしちゃいました、なんて。
一彩が無防備に俺との距離を詰めるからとか俺を上目で見つめるからとか、そんなものは俺が一方的にこさえた俺にだけ都合の良い理屈であって、一彩には何の理由も責任もない。一彩にとって俺は、大好きなお兄ちゃんでしかないのだから。
そう、それだけだ。
だから、いくら実の兄でも、実の兄だからこそ、お前は俺を非難し糾弾しなくちゃならない。
「のに何で怒ンねェんだよ」
ため息混じりに吐き捨てた俺を、一彩がまっすぐ見つめ返す。
あ、これ、何もわかってねェな。
俺の方が怒りたくなる。警戒心やら嫌悪感やらのハードルのあまりもの低さに。低いどころか地面に埋まってンじゃねェか。
だから俺がちっと脚を上げただけで越えられちまった
……
というか、ただ跨いだだけになっちまったンじゃねェか。
もっと危機感を持ちなさい、一彩。
一彩は本当に何もわかっていないのか、もしくは特段気にすることでもなかったのか。
「それでね、お昼に真白くんとひなたくんと、オムライスをつくったんだけど」
「一彩」
「ウム?」
「お兄ちゃんに唐突にキスされたことに対してのコメントは?」
これだけ直接的に訊けば、いくら鈍感オリンピック金メダル保持者の一彩でも、何かしら言わざるを得ないだろう。
なんて、思ってた俺っちがバカでした。
「ちょっと唇が荒れてるようだから、僕のリップクリームを貸してあげるよ。HiMERUさんにもらったのだけど」
いつの間に俺の弟と仲良くなってんの? メルメル大佐。
「いや、そうじゃなくて」
「
……
あっ、僕が使ったものでは不快だったよね、ごめんね!」
いや、間接キス以上のことした相手に言ってどうすんの案件だろ、それ。
「いや、そうじゃなくて」
「これも違うのか? うーん
……
兄さんの求めている正解がわからないよ」
何で一番簡単な答えがわかんねェのかねェ、この子は。
「あー、だから。何の断りもなくお兄ちゃんにキスされたのに、なんで何も気にしねェの? 普通嫌だろ、ってことを訊いてンの。答えになっちまったけど」
「嫌かどうかと言われたら別に嫌ではないけど
……
でも言われてみれば確かに、何も気にならなかったな
……
どうしてだろう
……
」
うーん、と真剣に首を捻る弟に、正直なところ、驚いた。
てっきり、兄さんにされたことなら受け入れるのが弟だから、とか自分の意思が微塵もないことを滔々と語ると思っていたから。
……
違うのか。
そうじゃないのか。
へェ
……
なるほど
……
。
「ならもう一回お兄ちゃんとキスしてみる? そしたらなんかわかるかもだろ?」
「ウム! それは確かにそうだね! よろしくお願いするよ!」
「じゃあ、目を閉じてな」
「どうして?」
「その方が感覚が鋭くなって、正解に近づきやすくなるかもだろ」
「なるほど! 神経を研ぎ澄ませる、ということだね!」
俺のそれっぽい出まかせをまるで疑うことなく、言う通りに目を閉じた一彩に罪悪感がまったく湧かなかったか、といえばそりゃもちろん嘘になる。罪悪感バリバリだ。
でもよ、ここは全額ベットする場面だろ。なんせ俺っち、生粋のギャンブラーだからよ。
だから今度は、自前の長ェ脚で素直にハードルを跨いだ。
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