amarey
2024-04-27 13:43:39
4831文字
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ネクタイとバスルーム【テキ博・龙博】

https://x.com/hanachoco0923/status/1638739459062779906?s=46&t=LKY0MBA9_hCQsp7XX07EMw
↑こちらのワードパレット5番より。
テキーラくんの貴重なネクタイを引っ張りたくなっちゃった博inシャワー室なテキ博(龙博)

「ドクターはバスタブ禁止だね」
 その声でドクターはハッとして目を開けた。同時に身体を抱き上げる……いや、掬い上げられる感覚に驚かされた。
 目の前には心配そうな、少し怒っているような、呆れたような、そんな顔をした恋人が服が濡れることも厭わずに湯船に腕を突っ込みドクターの身体を支えている。
「ほら、起きた? なら自分でも立てる?」
 珍しくスーツを着て、先ほどまで閉じられた首元とネクタイは少し緩められていて、そのネクタイは濡れないように肩の方へと流されている。
 開けがちな胸元はまだボタンとシャツの向こうにしまわれたまま。
……窮屈そう」
「え?」
 テキーラの首元にあるネクタイに指を引っ掛け、下げようとして……途端にそれを引っ張りたくなり、衝動に負けた。

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 かっちり目の、できればスーツ。悪いけれどもネクタイも必須かな。
 よろしくね。

 と言うざっくりとした指示を受けてテキーラは、その意味合いを理解した。
 護衛として付き合って欲しいということだろう。
 正直なところ、極めてレアリティの高いドクターの外交着をお目に掛かれるのであれば役得だ。そんなことを考えていたテキーラは、当日疲労困憊のなか酒と人に酔ったドクターを見て申し訳なくて仕方がなくなった。
「大丈夫? 酔ってるでしょ」
「大丈夫。酔ってない」
「本当に? 少しも?」
……少しは酔ってるけど、どちらかと言えば疲労の方が強い」
 ドクターがそう言う通り、顔色は微妙だった。アルコールを入れるとほんのりと赤らむ頬はいま、どちらかと言えば白く色を無くすようだ。自ら具合の悪さを宣言することのあまり多くないドクターが、聞かれたからとは言えそう告げるくらいだ。
 すぐにでもベッドへ向かい眠って欲しいと、テキーラは考えていた。
「悪いんだけど、ラウンジで飲み物を買ってきてもらって良いかな」
「水だよね、もちろん良いよ。戻ってきたらベルを鳴らせば良い?」
「キーを渡す。シャワー浴びちゃいたいから」
 ぽん、と手渡されたカードキー。
 その当たり前のような仕草にテキーラは少しむず痒さを覚えた。
……それは、ドクター魅惑のシャワーシーンに俺もお邪魔して良いってこと?」
 なぁんてね、と続けるつもりでふざけたことを言うも、ドクターは不思議そうな顔でテキーラを見つめて、ふにゃりと破顔した。
「いまさらそんなことを聞いちゃうの?」
 ――かわいいね。
 ドクターの言葉に尻尾が跳ね上がりそうになった、いや上がっちゃったかもしれない。テキーラはそう思い、咳払いをした。

 恋人になったからと言って、ドクターとの関係がそれほど深まっているわけではない。ほんの少し……ほんの少し他の誰よりもドクターの素顔を知っているくらいだ。

 テキーラ自身は常々、自分にそう言い聞かせているのだけども。
「からかうつもりが、からかい返されちゃったか」
 んん、と誤魔化しながら呻き、テキーラは顔の熱を自覚する。どうにか目の前の恋人に文字通り噛み付きたくなる衝動を抑えて、お使いに行く決心をした。
「ドクター、ちゃんと鍵掛けてよね」
「オートロックなんだから心配ないよ」
 当たり前だとばかりにそう言って、扉が閉まる。確かに同時にカチッとロックの掛かる音も聞こえた。それでもこの一枚の扉の向こうに無防備な恋人がいることを考えると、いくら本人による要望とは言え1秒でも早く終わらせなくてはならない。
 いつも冷静なドクターは時々あんな爆弾じみた言葉を投げてくる。でも大体そう言う時はダメになる一歩手前。
 さっさと飲み物を買って部屋に戻って、そしてすぐにでもドクターを寝かせよう。

 そうじゃないとサポート万全、そして優しい自分でいれる自信がどんどんとなくなってくる。

###

「ただいま、ドクター」
 テキーラがそう言って部屋に入るも、室内はしんと静まり返り物音がしなかった。
 シャワー室は明かりがついているものの一切の音もなく、出て早々に眠ってしまったのかと思いベッドをのぞけばまだそこは客を迎えるために整えられたままだった。
 改めてシャワー室の前に立つ。
「ドクター?」
 声を掛けるも反応がない。
……開けるよドクター」
 一時的にとは言え、護るべき対象《恋人》から軽率に離れたことを後悔した。
 シャワー室の扉を開けてすぐに見えたのはバスタブのへりに頭を乗せて目を閉じる恋人。無事かどうかを疑う前に聞こえてきた呼吸音。湯船に浸かったそのひとは、すうすうと心地良さそうなに寝ているようだった。
……こんなとこで寝たら死んじゃうよ、ドクター……
 思わず大きくため息を吐いた。
 ドクターがそこにいたことの安心感と同時に軽率にこんなところで寝る主人《恋人》に呆然としてしまった。
 やはり自分も離れるべきではなかった、もしくはシャワーを浴びる上での確認をするべきだった。ドクターが疲れ果てていることを認識してきたのだから。
「ドクターはバスタブ禁止だね」
 ロドスでも設置されている場所が限られているのは幸運なのかもしれない。
 そう考えながら、テキーラはジャケットを脱ぎシャツの袖を捲り上げる。湯船に腕を突っ込み、眠っているドクターの身体を支えてそう呟くと、ぱちりと目を開けて驚いた顔をしていた。
「あ、起きた? だめだよドクター、こんなとこで寝ちゃ」
「ん……?」
 寝ぼけているのか、酔っているのか。ぼんやりとしたまま瞬きを何度かしている。
……ドクター、バスタブで寝て溺れちゃったら大変だよ。ほら、自分で立てる?」
…………
 促されるまま、ドクターはテキーラの腕を借りて立ち上がり、バスタブから出た。その間、一言も喋らないのは眠いのか疲れているのか。バスタブから出て立ったまま動かないドクターを不思議に思いつつも、バスタオルを取ろうとシャワー室の扉を開けようとしたとき、ようやく一言聞こえた。
「たぶんもうとっくに溺れてる」
 何のこと、と問い掛ける前に、戻した視線は寄越されていた瞳に捉えられる。一瞬目を離しただけなのに、ドクターが裸であることを改めて認識してどきりとする。
「エルネスト」
 ぽたぽたと垂らす雫に構うことなく名前を呼ぶ。
 コードネームではなく名前を呼ばれて、思わず耳も尻尾もぴくりと震えた。
……きみに」
 名前で呼ぶ時は大抵"おねだり"だ。
 テキーラのネクタイを引っ張り、ドクターは唇を寄せた。
 つま先立ちで身体を寄せるドクターを支えると、ずぶ濡れの身体がシャツもスラックスも濡らしてくる。
 ぱたぱたと雫を垂らし、裸のままドクターはテキーラの唇に自身のそれを重ねる。重ねるだけでは飽き足らず、テキーラの唇を、閉じられたままのそこを自身の舌で舐めている。
 ――ずいぶんとしつけのなってない犬みたいだけど、何処でそんなの覚えたの?
 叱ろうと口を開こうとすれば、もっと顔を寄せろとばかりにネクタイを握る手に力が入り引っ張られる。
 こんなに乱暴に求められることはあまり好まないとしても、結局は相手に寄る。
 夢中になって舌で唇へ媚びるドクターの姿に、思わずテキーラは口元が歪んでしまった。
 ドクターの後頭部は手を回すと離れることを許さないとばかりに抑える。執拗に舐めてくる小さな舌を歓迎するようにテキーラは口を開け、甘く噛み付いた。自身の舌をそれに絡ませると、口の中がドクターの吐息と唾液と薄い嬌声でいっぱいになる。
 まだ濡れている腰に手を添えるとそこは嬉しそうに小さく跳ねたが、同時に肌が冷たくなっていることをテキーラに伝えてきた。そして、ここがシャワー室であり、ドクターは疲れ果てていることも思い出させた。
 ――酔ってるのだとすれば、悪酔いにも程がある。
 唇を離し、テキーラはドクターに問い掛けた。
「ねぼけてる?」
…………
 その言葉に不満を覚えたのか、舐めるようなキスが噛み付くようなそれに変わった。
 と言うか実際ドクターはテキーラの唇に噛み付いた。
「いて」
 先ほどまでのムードなんて忘れた、とばかりにテキーラは言う。痛いと言ってみせたが実際には大して痛くもない。
 肩に手を当て、身体を剥がすと思った通りにドクターは少しさみしげな顔をして、唇を尖らせていた。
「疲れちゃったんでしょ? だめだよ、こんなことしたら」
……やだ」
「甘えたいならベッドで一緒に寝てあげるから」
「やだ。きみが言うそれは私がして欲しいことじゃない」
「え? 嫌い? 俺の添い寝」
「ばか言うな。好きに決まってる」
 するりと当たり前のように告げられた言葉は少し刺激が強い。何度か同じベッドで寝た際、それが閨事を経ていてもいなくても穏やかに眠るドクターの様子から好まれているだろうと予測はできていたとしても、直接的な言葉は理性を抉る。
……わかった。でも疲れ果ててこんなに甘えん坊になっちゃってるドクターに無理はさせたくないから……気持ちいいことはだめだよ」
「うー……
 掻き集めた理性に従いそう告げると、ドクターは拗ねて睨み唸る。その身体をバスタオルで軽く拭き、巻き付けた。
「そのかわりにドクターが満足するまでたくさんキスしてあげる」
 そのまま抱き上げようとすれば、素直に抱かれてくれるが、その代わりとばかりにドクターは言う。
「ほっぺとかじゃ怒るよ」
「ははっ」
 かわいい、と呟いて怒ると宣言された頬にキスをする。むぅとあからさまに拗ねた顔を向けるものだから、口元が緩んだまましばらく戻りそうにない。
「じゃあ何処がご所望?」
……くち」
 タオル一枚に包まれたドクターをベッドまで運び、濡れた髪を拭いているとぽつりと聞こえた。
「エルネストのべろで舐めらてもらうのも、絡ませてくるのもだいすき。さっきのよりもっと、息するの忘れちゃってくるしいのにきもちいいやつとか……
「ドクター……
 タオルでは乾かしきれない髪の毛が、ドクターの耳や頸にぴとりと引っ付いている。それをタオルで見えなくさせて改めて拭き、テキーラは大きく息を吐いた。
……ほんっとにそんなこと、他の誰にも言わないでね?」
「キスなんてきみとしかしてないんだからきみにしか言わないけど……それともきみとそういうのをしてるって話を誰にもするなってこと?」
「〜〜〜〜……ッ」
 今度はテキーラが唸る番だった。
 何かを言いたいのに取り繕うにも形にならない感情のまま、ただ唸るしかできなかった。

「ドクターのこんなかわいい姿を誰にも見せたくないって意味!」

 既にだいぶ自信がない。
 ドクターが仕事に専念できるようにサポートを万全にすること。大好きなドクターに"優しく"すること。
 添い寝を宣言した自分はまだ自信があったのかもしれない。
 少しでも早く寝かし付けないと、優しいまま眠らせられるか、自分でも怪しく思えてしまう。
 ――ここまで求められて応えないのは男がすたるだろ?
 ――すたらせておけよ、そんくらいですたるなら。ところで予定では明日の午前は大した用事もないし必須任務もないんじゃないかな?
 テキーラの頭の中で悪い奴らが声を上げている。
 理性はたぶんとっくに溶けて消えた、もしくは悪い奴らの仲間入りをした。
 いまどうにか耐えているのはただ単に"ドクターの側にいる自分はこうでありたい"という理想だけ。
 なのにベッドの上ではまさにその対象である、愛おしくてかわいい大好きなひとが恋しそうにテキーラの名前を呼んでくる。
 それに応えたくて堪らない。
「かんべんしてよ、どくたぁ……
 情けなくぼやきながらも尻尾は素直に大きく揺れてしまった。