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MN*B
2024-04-25 01:17:59
2276文字
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二次創作
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apple of the eye 【宿虎風味/双子パロ】
お題:黄金の林檎・暗黙のルール 小説お題ジェネレーター:
https://novel.tango-gacha.com/
時間:44分 +α
最初は五条夏油の組合せと迷ったけど、この二人は魂の片割れ同士じゃなくてもああなる形をしてそうなので違うなと。伯父甥概念が流行ってる中で双子パロ
追記:2025.1.10 - 13 2.13
元が560→770?字くらい→からの今
感想:オレンジを描写してるのに題材のせいで林檎の匂いしかしない
ps『林檎色の瞳は蜜が詰まっている。』
瑞々しい香りが、
暖かい
ぬくい
日差しのかかった台所に広がっていた。色褪せた壁紙が隅の陰りを深く見せる。年季の入ったシンクは細かい傷でくすみ、光を鈍く照り返していた。
ナイフを持った手元からサリサリと微かな音が立っている。その度に小さな飛沫が上がっていて、そこから目が醒めるような香りがしていた。
鮮やかな色をした半球体の皮が剥かれていき、緩くカーブしたオレンジ色が伸びていく。裏に見える白とのコントラストが目に眩しい。
「蜜柑じゃん。林檎って言ってたよな」
俺がそう言えば、宿儺はこれ見よがしに大きなため息をついた。で、「物を知らん奴め」と悪態もついた。
食道楽の気がある兄弟が言ったのだ、「黄金の林檎だな」と。それで柑橘を剥き始めたら誰だって疑問に思うだろ。
俺はシンクに寄りかかって、隣に立つ宿儺の顔とその手元を覗きこんでいた。手際よく動く指先は、ここまでくると一種の
娯楽
エンタメ
だった。
宿儺は皮を剝き終わると、用のなくなったそれを三角コーナーに入れた。
「黄金の林檎とは、即ちオレンジのことを言う」
「は? 林檎は林檎だろ」
「口を挟むな」
苛立ち混じりの乱雑さで、剥かれたばかりの果物が俺の口に押しこまれる。
……
やっぱり林檎じゃない。
じゅわっと口の中で酸味が弾ける。噛む度に粒がほぐれていく。俺は果汁を溢さないよう剥き身の実を噛み切り、一口じゃ入りきらなかった分を手に取った。うん、どう見ても柑橘系だ。
そんな見分けもつかなくなったのかと宿儺に目を向ければ、舌打ちが返ってくる。ついでに「蜜柑とオレンジの見分けもつかんとは嘆かわしい」と、ちっとも悲しくなさそうに宿儺は言い捨てた。
慣れた手つきで半分に切り分けられた果実が皿の上に置かれる。その剥かれた中身は皮よりも水気を含んだツヤのある色をして、白い皿の上で光って見えた。
「オレンジは花と実が同時につくことがある。そういった点から特別視された植物だ」
宿儺はナイフに伝った果汁を布巾で拭いつつ、話を続ける。
「他にはトマトのことを指したりもするな」
「トマト? あぁ、黄色いのもあるもんな。でも林檎とはやっぱ違くね?」
「しつこい。そんなに林檎が食べたければ自分の目玉でも食らっていろ」
「え、グロ。お前いきなり何言ってんの」
「これだから学のない奴は」
宿儺は手を止めずに、めんどくさそうな顔をして俺をこき下ろした。俺もムッとしながら、また一口、オレンジにかじりつく。
学のあるからって人が物食ってる時にグロいこと言うのもどうなんだよ。と思うも、俺がそう言ったところで倍以上の罵倒が返ってくるのが
常
つね
だから、思うだけに留めた。
ナイフと布巾を皿の横に置いて、宿儺は綺麗に皮を剥いた実に手を伸ばす。その手首には拭き逃したのだろう黄色い雫が滴っている。
「汁、垂れてんよ」
「お前もな」
「ぉわっ」
口の端から顎に落ちる果汁を、俺は慌てて手の平で受け止めて拭う。
宿儺は自身の手首についていた雫に直接口をつけて舐め取ると、何食わぬ顔でオレンジを食べ始めた。
俺も食べながら、その横顔を眺める。俺と似た顔、だけど絶対に違う顔つきで、そんで何かが足りない。俺と同じでホクロもない、まっさらな顔と手首を見て、いつもそう感じた。
そうしていると不意に、宿儺と俺の目がバチリと噛み合う。何も話すことが思い浮かばなくて、俺は黙ったまま、小さくなったオレンジの残りを口に放りこんだ。
宿儺は不満げに鼻を鳴らし、「見過ぎだ」と俺のことを軽くなじると、居心地が悪そうに姿勢を変えてそっぽを向いた。そのまま台所の天板に寄りかかる。
「切り分けた果実において、切り口が合うのは全く同じ果実から切り分けたものだけだ。
殊
こと
、オレンジに関してはな」
窓から差し込む日に背を向けたせいで、宿儺の顔には陰がかかっていた。そこからの視線がほの暗く映る。
「俺達は分断されているべきだ。
……
お前もそう思うだろう」
そうだな。言葉と一緒に口の中のオレンジが腑に落ちた。
俺らは双子だけど、他で話を聞くような一体感だとかニコイチ感はなかった。じゃあなんで一緒にいるのかと問われれば、相手が生まれ落ちたことを知っているから、のような気がする。
……
分かれているから、また一つになろうとするのかもしれない。
他人だったとしてもいずれ見つけ出すことが決まっている。きっとそれは俺らを縛る暗黙のルールだった。
宿儺も最後の
一欠片
ひとかけ
を口へ運ぶ。が、その途中でふと手を止めた。何を思ったのか行き先を変えて、俺の唇のすれすれまで近づけてくる。
口を開けたらまた放り込まれそうで、俺は目線だけで訴えるものの、それで機嫌を損ねたのか宿儺はムッとする。
「物欲しそうな目で見ていただろう」
「そんなんじゃねぇ、って
……
」
表情が柔らかく見えるのは陽の加減のせいか。後ろから陽が射して陰になっているのが、逆に表情を柔らかく見せていた。そのくせ眼はやけにギラついてる。
……
人のこと言えんのかよ。
毒気を抜かれて、言葉を失う。中途半端なところで止まってしまった口に、これまたずいっとオレンジが差し込まれる。果汁に濡れた実と指が俺の唇に触れた。
俺がおとなしく差し出されたオレンジを口にすれば、宿儺は満足そうに目を細める。言ったとおりじゃないかと言わんばかりだ。
その態度は気に食わないけど、なんか機嫌良さそうだし、まぁいっか。
オレンジの甘さと酸味に少しの苦味が舌の上から喉を通って、収まるところに収まった。
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