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奴田原 ミズキ
2024-04-23 21:15:57
1439文字
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もう毒味は必要ないの。
現パロ同棲ビマヨダ
ビマの為にヨダが作った料理をふたりで食べる話。
ふわりと香るミルクの香りがキッチンからリビングへと広がっていく。
とろみがついた所を見計らって砂糖を入れていく。少し甘すぎるくらいが好きなので多めに入れた。砕いたカシューナッツをぱらぱら落とし、瓶からレーズンを取り出し入れていく。くつくつと音を立てる鍋をかき混ぜながら、リビングへ向かって声をかけた。
「もう出来るぞ」
「
…
ん、ああ」
ソファに沈んでいた紫頭がのそりと起き上がる。重い足取りでキッチンへ入ってくるのを見届けてから味見皿に少量取り口を付けようとして⸺止められた。
「今日はいい」
「は?何故だ。いつもやってるだろう」
「いいんだ。もう、いい」
有無を言わさぬ物言いに、これは梃子でも動かないと察したので素直に従う。味見をしないそれを深めの皿に2つ均等になるよう取り分け、ピスタチオを乗せた。
「ほれ」
「ん」
皿を渡し二人でキッチンを出る。テーブルに向かい合わせで座り、カトラリーケースからスプーンを取って差し出した。
「
…
本当にいいのか?」
探るように、声が出てしまった。
つとめて平然に振る舞おうとするが、自然と手を握りしめてしまう。そんな俺を知ってか知らずか、俺の手を両手で包んで、そうとスプーンを抜き取った。
「大丈夫だ。
…
いただきます」
キールを掬う。そのまま迷い無くスプーンを口の中へと運び、咀嚼し、やがて喉が上下に動く。
「うん、美味い」
にかりと笑う顔に緊張で固まった身体がゆるゆると解け、深く息を吐いた。
「
…
一流シェフに言われても嬉しくないわ」
そう言って、キールを口へ運ぶ。砂糖をたくさん入れた筈なのにあまり味はしないし、湯気で視界がよく見えない。スパイスを入れ過ぎたのか、鼻がツンとした。
「お前が俺の為に作ってくれるから、美味いんだ」
「
………
ふぅん」
顔を見たくなくて、俯いたまま食べ進めていく。ぼたぼたと何かが頬を伝って不快だ。乱暴に拭っても次から次へと溢れ出て来る。
「スヨーダナ」
いつの間にか移動していたらしい。ビーマは俺の真横に立って、ぎゅうと頭を抱き寄せてくる。
ぽたり、と頬に何かが落ちる。見上げると、淡く輝くアメジストの瞳から、ひとつ、またひとつと雫が零れ落ちていた。
「
……
さめるぞ」
「いいんだ。キールは、冷めても美味いからな」
そうか。なら、いいか。もういいか。もういいのだな。
スプーンを置いて、ビーマに向き直りその広い背に腕を回す。きつくきつく抱きしめ合って、お互いに涙が枯れるまで泣き続けた。
冷めたキールは、甘い味がした。
*あとがきのようなもの
ヨダが自分で作ったものをあげる時は、必ずビマの前で一口食べてからあげていました。ヨダ的には「まぁ前世のこともあるし、こうした方がこいつも食べやすいだろう」くらいの気持ちでした。
ビマはどうしてもトラウマを克服したとは言い切れないのでヨダの行動に特に何も言いませんでしたが、自分に対してずっと真っ直ぐ向き合い続けてくれたヨダに失礼なんじゃないかと思って今回はやめさせました。
そうして口付けたキールは甘く優しく、奇しくもあの時のお菓子と同じ甘く、しかし毒の入っていない食べ物に、あぁ やっと俺達ここまでこれたんだなと泣いちゃいました。
ヨダは自分が与えた、悪意のない純粋な愛情をしっかり受け入れてくれたビマに嬉しくて胸がいっぱいいっぱいになっちゃいました。
「一生俺の為にキールを作ってくれ」
「普通に嫌だしプロポーズとしても最悪」
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