恋人初日

できたてなロナドラ話。
なのにロナ君の出番は少ない。

付き合いはじめてテンション上がっちゃうドラちゃんかわいいよねの妄想から発展させてみた。

短い着信音に気付いて掃除機を止めた。
エプロンのポケットからスマホを取り出してRINEを開くと、ロナルド君から一件、お父様から五件、半田君から一件、あとはメルマガがずらっと数件ずつ来ていた。
いつの間にこんなに来てたんだろ。
メルマガは後でゆっくり見るとして、ロナルド君のから確認することにした。


……
順番に深い意味はない。
別に、恋人になってから初めてのRINEだからって、浮かれてるわけじゃない。
たまたま。
そう。
たまたま着信音に気付いたときに見たら、ロナルド君が上にきてただけなんだよ!
だから!
これには深い意味はないんだ!
「君もそう思うだろ!?」
「早く確認したらどうだ同胞」
「キンデメさんは冷たいなぁ」
この前寄ったスーパーに売ってたんだよね、この高級な吸血金魚のご飯。
鱗も鰭もツヤツヤになるんだって。
めったに入荷しないらしいよ?
「聞いてやらんこともない」
「なんと言っても、あの告白シーンは最高だった」
退治から帰ってきたらいきなり抱きしめられて『好きだ』って。
またポンチに催眠でもかけられたのかと思ってたら、これが違ってたんだよね。
『冗談なんかじゃねぇし、催眠でもない。本気で好きなんだ』って必死になって縋るあの顔。
私の記憶違いでないなら、衣装より赤くなってたね!
「そういうお主も真っ赤だったではないか」
こほん」
この世に生まれて200余年。
世界から愛され、何もかもが完璧な存在として育った吸血鬼界のアイドル。
笑顔がキュートで家事はパーフェクト、対人スキルはカンスト。
全てにおいて完璧な私。
五歳児ロナルド君を籠絡することなど、私からすれば赤子の手を捻るようなもの!
「石像のように固まっていたように見えたが?」
「君は特売のご飯がお好みかな?」
「素晴らしい手腕だ同胞よ」
「そうだろうとも!!」
だがしかし!
あの瞬間を録画していなかったのが、ドラドラちゃん最大のミス!
今度隠しカメラ設置しようかな。
そして『ドラルクキャッスルマークⅡの日常』って配信したら楽しそうじゃない?
私の料理動画と同じぐらいの再生数は確実にいくよね。
「それはそうと、いい加減確認したらどうだ」
「すぐに既読をつけたら、連絡くるのを待ってたみたいじゃないか」
「実際待っていただろう」
「んぐ




それはそう。
ロナルド君専用の着信音に変えたのは、実は結構前だったりする。
さっきもその音が大きく響いたから、すぐにRINEに気付くことができた。
「こほん」
キンデメさんが急かすから見てあげよう!
時間は充分過ぎた!
「えいや!!」
【ロナゴリ】をポチッと。
写真が一枚と『どっちが良い?』のひと言。
「ただの買い物の相談か」
ちょっとつまらないな。
恋人になってからの初RINEがこれとは。
さっきまでのドキドキとトキメキを熨斗つけて返してほしい。
「はぁぁぁ」
「此方を見るな」
「だってこれ、布の色選べってだけだよ?」
もっと。
もっとさ。
恋人に送るようなこう
「甘い言葉のひとつやふたつ送ってきていいと思うだろ?」
「それで、返事はしないのか?」
「何のための布かも分からないのにどう返事しろって?」
「聞けばいいだろう」
「そうだけど」
なんか、ムカつくんだよ。
真面目なロナルド君のことだから、RINE画面開きっぱなしで返事を待っているに違いない。
だが、用途が全くわからない布のドアップ写真一枚でどう判断しろと。
これで何か作れってこと?
「仕方ない
『この布なにに使うんだい?』
フリック入力でささっと返信。
紙飛行機を飛ばしたとほぼ同時に既読がついた。
ほら、私の言った通りRINE開いたままだ。
充電早く切れるようになってきたって言ってたのに、帰ってくるまで足りるのかね。

デンワワワワワ♪

「ひぇっ」
ロナゴリから電話だ!!
どうしよう!!
恋人からの初電話だよ!!
やだっ!!
これテレビ電話じゃないよね!?
髪乱れてないかな!?
ねえ!!
キンデメさん!!
どうしたら!?
「切れる前に出ろ」
「それはごもっとも!!」


えいやっ!!


もしもし」
『あ、俺だけど』
「何か用かな?」
あ〜もう!
心がソワソワしちゃう。
何だろう、何言われるのかな。
『さっきの写真』
「ああ、あれ何のための布なの?」
『あ、えっと遮光カーテン』
「しゃこう」
『遮光率99%で!吸血鬼用のだし、それにっ安いし!!』
「なんで?」
事務所はブラインドだし、リビングには今使ってるのがあるでしょ。
ブラインドは拭き掃除してるからきれいだし、カーテンは色褪せたりほつれたりもしてないよ?
『いいから!買い替えてぇと思ったんだよ!』
「無駄遣い嫌いなのに?」
『これは、無駄遣いじゃねぇし』
「まぁロナルド君がそう思うならいいけど」
『んで、どっちだよ』
「じゃあパステルブルーの方で」
『分かった。じゃ買ってから帰る』
「うん。気をつけてね」


「何で遮光カーテンなんだろう」
キンデメさん、どう思う?
あ、カーテンと言えば、予備室のカーテン洗っちゃおうかな。
ちょっと埃っぽいな〜って思ってたんだよね。
「お主意外と鈍いな」
「もしかして理由知ってるの?」
「ぐぶぶ」
「教えてくれない?」
「直接聞けば分かることだろう」
「ケチだねぇ」
まぁいい、彼が帰ってきたら聞けばいいだけのことさ。
リビングの掃除が終わったら、予備室のカーテンを外して洗濯してしまおう。
洗ってる間に事務所の掃き掃除もしよう。
そうこうしてるうちにロナルド君がお腹空かせて帰ってくるだろうから、ちょっと豪華なディナーを出してあげるんだ。


「早く帰ってこないかな〜!」