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ガイベル
2024-04-23 03:38:25
1516文字
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お話
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蜃気楼の夢
2023.11.13
公園の奥、秘密のたまり場。
バジルは湖に足をつけて、パシャパシャと水を弾いて遊んでいる。波を打つ水面が太陽の光を反射して眩しい。サニーは隣で膝を抱えながらそれを見ていた。
少し前に僕が溺れてからここにはもうマリが来たがらなくなったから、今ではみんなで湖に集まることもなくなった。また溺れるのは怖いから水には入れなくなったけど、せっかくの自分たちのたまり場に来れなくなるのは少し名残惜しくて、こうしてこっそり遊びに来ている。
『
……
でも2人とも無事でほんとによかった。
……
ぼくは泳げないから、役に立てなかったな。サニーくんを助けてあげられない。やっぱりマリちゃんはすごいや。
……
ぼくもマリちゃんみたいに頼れる人になりたいな。』
バジルはそう言ってまたパシャリと水面を蹴った。
年上のマリやヒロは、やっぱり頼り甲斐がある大きな大好きな存在で、みんなの憧れだ。
自分たちもいつか、あんな風になれるのかな。
『
……
溺れるのはこわいけど。
もしもバジルが溺れることがあったらその時は僕が助けるよ。』
自分の気持ちを言葉にして伝えるのは苦手だから、声が震えて耳が熱くなる気がする。
バジルは僕の言葉に驚いたように目を丸くしてしばらく固まった後、嬉しそうな笑顔で
『本当に?ありがとう。』と言って笑った。
緊張して出た声は掠れていた気がするけど、しっかり届いたようだった。
バジルは湖から足を上げてより近くに座り直すと、僕に少しだけ寄りかかり、体重を預けてきた。くっついた部分から体温が伝わる。
なんとも言えない気恥ずかしさから、膝を抱えなおして顔を伏せる。でも、今はなぜだか勢いのままに言葉が出てきた。
──バジルが悪いやつに捕まっても僕が助ける。
『ええ、そんなこわい人、公園やたまり場に来るかな。
……
でも、わかった。らんぼうな人に捕まっちゃうのは怖いけど、サニーくんが助けてくれるならうれしい。』
サニーくんはかっこいいね。
そう言ってまた心の底から嬉しそうに笑った。
受け取られた言葉はやはりどこかこそばゆい。
でも笑っているバジルの顔を見るのは好きだから、少しだけ顔を上げて、彼の顔を伺い見る。彼の頬も照れたように赤く染まっていて、この恥ずかしさは自分だけではないことにちょっぴり安堵した。
──『サニーくん、あのね。ぼくも次は、
君のためなら
…
きっとなんだって』──
一瞬、ザアッと強い風が吹いて思わず目を閉じる。
次に目を開けた時、サニーの目の前に彼らの姿はなかった。楽しそうに会話する幼い2人の姿がないことが当たり前であるかのように、湖は静かに光を湛えている。
数日前、ケルに促され数年ぶりに外に出るようになってから、町中を歩くと時折幻のように色々なものを見る。
公園で遊ぶ夢の中のおともだち、道に浮かぶエネミー
……
。昔のみんなが遊んでいるのが見える事もある。
ヒロが大学から戻り、こじれていたオーブリーとも会話して。みんなが努力して、表面上は少しずつ昔ような形に戻りつつあるが、自分はいまだに現実と夢との境がひどく曖昧だ。
先ほどの光景、あるいは記憶も。きっと昔あったことのはずだけれど。
……
もしかしたら昔教室で1人していた空想冒険譚のように都合のいい、願望だったかも。
……
。
目を閉じて深呼吸をすると、サニーは秘密のたまり場を後にした。他の3人も、サニーの様子を気遣いつつもそれに続く。
本当の、今のバジルの様子を見にいかなくては。
誰の気配もしなくなった公園の奥、湖の近くに佇む風車たちが静かに風に揺られていた。
end.
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