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さちこ/Sharia
2024-04-22 17:13:03
1597文字
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I miss you
非カセン軸・漆黒.0〜.3期間
あの幼い子が倒れたと、友人から連絡があった。
久々にテレポを使ったと思う。連絡をもらった時はひんがしの山奥深くの遺跡にふらりと立ち寄っていたけれど、入国許可とか全部放り出して、何も考えずに呪文を唱えていた。
テレポ代も何も考えていなかったから、財布の中身もすっからかんになっちゃったけど。
石の家に帰れば、友人とタタルちゃんが出迎えてくれた。
タタルちゃんといつも共にいる彼の姿が見えないな、と探せば、今はヤ・シュトラの旦那と一緒に外の市場へ買い出しに出ているらしい。
わたしがキチンとくるか心配だったのだと笑った友人は、彼女の恋人へ与えられた作業場へ引っ込んでしまった。
「本当に、来てくださるか心配だったんでっすよ」
「やだなあ、そこまで薄情じゃないもん」
「アラミゴ解放の時は来ませんでっした」
「うぐっ
……
」
いや、だってあの時は危篤じゃなかったもん。やっと南洋諸島に渡る船に乗せてもらえそうだったし。
……
ひんがしの奥地に潜り込むのだって苦労したけど、今は暁もピンチらしいから。彼がいない間、暁を回すタタルちゃんの手伝いくらいはしてあげようと思って。
未明の間の扉を開けると、中は真っ暗になっていて。僅かに漏れるエーテルの光に導かれるように、タタルちゃんとわたしは部屋の奥へと足を踏み入れた。
「まあ、シャリアさん! 珍しいわね」
「クルルちゃんまで
……
こう見えて情にアツいのよ、わたし」
本当かしら?と笑う彼女の顔色は、正直言ってベッドの上で眠る彼らよりも悪い。笑顔にもあまり力がなく、今にも倒れそうだ。
見ていられない。すん、と大気の匂いを嗅ぎ、一際ミストの濃い場所に触れ、ぐっと握りクルルちゃんの左胸へと押し当てる。
そうして小さく鼻歌を奏で、手の中の物を押し当てるようにクッと抑えた。
彼女から香る匂いが通常通りに戻ってから、再び低い位置にある顔を見下ろす。多少は戻ったようで安心してほうとため息をついた。
「
……
あんまり無茶しないでよね。しばらくはわたしも代わってあげられるんだから」
「ふふ、ありがとう。エーテル操作は苦手って聞いてたけれど?」
「魔紋やら呪文やらが無理なだけよ」
レヴナンツトール周辺は特にミストが濃い。可視化するほどなんて、故郷を出てから初めて見た。
弟も両親も、あちこちで頑張っているらしいから。わたしもここで少しくらい支えようと、弓だけ構えて椅子へ座った。
「ほら、クルルちゃんは休憩してきなさいな。タタルちゃんも、そろそろあの子が帰ってくる頃じゃない?」
ポロンと弦を爪弾けば、ララフェル二人は顔を見合わせてから、申し訳なさそうに笑って、頷き、光の漏れる方へ歩いていった。
長さがバラバラな弦を弾き、真っ暗な部屋で詩を口遊む。
賢き者を讃える詩。ジェアンテルから一番最初に教えてもらった詩であり、一番お気に入りの詩でもある。
バラードと名の付く通り、ゆったりしたテンポで進行するメロディに呼応するように、エーテルの奔流が賢人達の肉体へと降り注いだ。
一曲弾き終えた後、そっと左手に眠る少年を見遣る。
最後から2番目に倒れたと言う、上司だった子。きっと向こうでも頑張っているのだろうと、そっとふわふわの白髪を撫でる。
いつもなら頭に手が当たった時点で飛び起きるのに。手の先すらぴくりとも動かず、まるで死体のようだ。
……
いいや、死体にしないために帰ってきたのだ。かの英雄がみんなを連れて帰ってくるまで、なんとしても持ち堪えてみせる。
あぁ、でも。
やっぱり、声が聞きたい。
だって、なんだかどうにも寂しいのだ。
「
……
好きだよ、アルフィノ」
言ってしまえば何かが壊れるような気がして、言えなかったことをあっさりと告げる。
「愛してる」
きっと、もう一度、わたしを見てくれたら、素直に言える気がするんだ。
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