この関係になってから時間だけならそれなりに経っているので、まさか毎日毎晩とはいかないが、それでもかたちを覚えるくらいには水木も慣れてきた。
だから余裕ができた、のかもしれないが、水木は自分を組み敷く義息を潤んだ目で見上げ、頬にそっと手を添えた。そのまま長い前髪を優しくかきあげて、開かない瞼をそうっと撫でる。引き寄せようとするのを感じ、鬼太郎は顔を寄せる。なんですか、と吐息に混ぜるように聞いたけれど、水木が何をしたいかはわかっていた。何ならこの所の水木はよく同じことをするので。
彼は鬼太郎の予想通り、開かない、くぼんだ眼窩の上に口づけた。幼い頃もよくしてくれた仕草だった。時に心無いことを言われても、水木が膝に抱えてそうしてくれるだけでどうでも良くなった。彼の愛情の揺るぎなさはいつも鬼太郎を救ってきたのだ。
ちゅ、ちゅ、とあやすように、慈しむように与えられる口づけ。合間に、吐息とともに呼ばれる自分の名前。
少しくすぐったく思い、鬼太郎は笑う。そのせいでつい体を揺らしてしまい、アッ、と悩ましげな顔で悩ましげな声を水木が上げるはめになった。
「……ばか、」
ふぅふぅ、肩で息をつき、指を噛むようにして水木がなじる。むっちりとした胸がぴくぴく震えて目の毒だ。
いやァ、この人は全身目の毒だけども!
内心大声で叫びつつ、かつ、下腹に諸々集まるのを感じながら鬼太郎は「ごめんなさい」と素直に謝った。流れるように水木の手を奪い、自分の頬に当ててからその内側、指の付け根の膨らんだところをちゅくちゅくと吸う。ふっ、と息を殺すようにこぼすのに眉を下げ、けれども同時に唇を舐め、鬼太郎は「水木さぁん」と甘えたように呼ぶ。ちょっと拗ねたような、怒っているぞという風だった顔が「しょうがないな」というものになる。世の酸いも甘いも噛み分けてきたような顔をして、その実この人はとことん甘く出来ている。懐に入れた相手ならなおさらだ。まったく、危なっかしいったら、と鬼太郎は今度は内心で嘆息した。
「…ね、もうちょっと、」
動いてもいいですか、の部分は耳元に囁いた。子どもの内緒話のように。当たる吐息がくすぐったかったのだろう、水木は目を蕩かして肩を揺らし、笑う。いいよ、の声もほとんど音を伴わなかったが、これは鬼太郎の内緒話に付き合ったから。
太く、しっかりした腕が鬼太郎の首に回された。…体が多少なりとも成長して良かったと思うのはこんな時だった。水木の遠慮が減るので。たとえ子どもの外見でも人間水木よりずっと体力も膂力も強かったが、どうしても見た目に引っ張られて水木はなかなかこんなことはしてくれなかった。よほど意識が飛んでしまわない限りは。
おれも、と短く言って、水木は鬼太郎を見つめた。短すぎるし省略され過ぎている。でも、何を言いたいかわかるくらいには、鬼太郎もまた慣れた。それが誇らしくも嬉しく、…水木が、かわいい。
鼻の頭をこすりつけ、額をねじこむようにして、顔を合わせる。甘い垂れがちな瞳の縁に涙が光っている。こんなにきれいなものを他に知らない。考えるより先に涙を吸い取れば、水木は肩を揺らした。
※めちゃくちゃ途中ですがおわり
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