梶間
2024-04-18 01:08:16
1205文字
Public カブライ
 

王と側近を推し活する人々

モブにより世界観が崩壊している

他国の人間と交流する場は好きじゃない。必要なことだと分かっているけれど、にこやかな笑顔の下で何を考えているのか分からないし、君をじっと見つめる人間がいるから。
ああ、今日もまたいる。メリニと是非交易をしたいと言う商人。なんでも西方大陸とも伝手があるとかでカブルーとそちらの地域の話で盛り上がっている。いつも人の機微に聡いカブルーは愛想良く対応しながらも、用心深さを忘れないのに、この商人にだけは打ち解けた笑顔を見せている、ような気がする。
人間に関心が薄い俺がカブルーの真意を測ることは到底出来ない。でも、共に過ごすうちに今浮かべている笑顔がただの愛想か、心からのものなのかくらいは少しは分かるようになってきた。
俺でも分かるくらいあからさまな下心をのせた視線に彼が気づかないものだろうか。自分に向けられていることが分かった上での対応なら、なにか考えがあるのだろうけど。そして彼はそういう考えの元で動く人だけれど。
あまり、下心のある人間に打ち解けた姿は見せてほしくないな、と思ってしまう。

*

他国の人間と交流する場は楽しいけれど面白くないこともある。この国のためになる交渉をするのはとてもやり甲斐があるし、人間同士を繋げて起こる連鎖反応も楽しいけれど、あなたをじっとりと見つめる人間がいるから。
また今日もいる。ライオスに軽々しく近寄り話しかける学者。きちんと学位を修めた研究者らしく、魔物の話について盛り上がっている。好きなものの話なるとすぐこれだ。好意を隠しもせず全力で懐いてます、と言わんばかりの笑顔と距離の近さ。魔物関連には容易く心を許してしまう警戒心の無さは元からだったが、もう少し慎重になってほしい。
他の人間には愛想笑いもそこそこに強張った顔でいることが多いので冷たい印象を与えがちなのに、全力の笑顔を向けたときの差でやられている人間がいることにはいつ気づくのだろう。気づかないか、ライオスだし。
盛り上がっている二人の間に入り、会話を中断させる。学者に睨まれるがこちらも笑顔で牽制する。王はあんたの話に興味があるだけであんた自身には興味がないんだ、分かったらさっさと退け。

*

新生メリニ国には今熱い催しがある。
我らが悪食王ライオス様とその側近カブルー様にお目見えした際、二人について熱く語る会だ。
「今日ヤバかった」
「それな」
「どちらかと話してると絶対もう片方が嫉妬とかこもった眼差しで見てくる」
「分かる」
「カブルー様がニコニコしてるときに寂しそうに見てくる王様ヤバかった」
「いいなー」
「そっちもカブルー様に近距離でめちゃくちゃ牽制されてたじゃん」
「推してるの王様の方だから……表面上笑顔なのに目はぎらっぎらの敵対心剥き出しな御顔最高だったけど」
「いいなー」

そんなやり取りがあることを、当の本人たちは露ほどにも知ることはなかった。