ガイベル
2024-04-18 01:05:05
994文字
Public お話
 

お誂え向き

鼻歌混じりの子守唄が聞こえる。

日当たりの良い場所に設置されたソファ。
そこでまどろむことのなんと心地よい事か。
外はとてもいい天気で、暖かな日が差し込んできている。
こんな日に家から一歩も外に出ずにゆっくりするなんて、なんて贅沢な事だろう。室内最高。もう何があってもここから動かない。
そんなことを考えながらうとうとしていると、他の部屋で作業をしていたバジルが近くにくる気配がした。
咄嗟に目を閉じて狸寝入りを決め込む。彼には悪いが、僕は今日テコでも動かないと決めたのだ。
彼が近くに止まった気配と、こちらを見ている視線をすごく感じたが特に声をかけられることなく離れていく。
薄目を開けて様子を伺うと、ブランケットを手に戻ってくるのが見えたので再び目を瞑った。
バジルはそれを優しく僕の膝にかけると、また静かに離れていく。
……何もなく離れていかれると、それはそれでちょっと。

「バジル」
彼の背に呼びかけると、すぐに気づいて僕の目の前まで戻ってきた。寝起きの僕への配慮なのか、いつも以上に優しさを孕んだ柔らかい声が降ってくる。
「起こしちゃった?」
それには言葉を返さずにぐいっと彼の手を引く。
突然の事にバランスをくずして僕の膝の上に丸ごと倒れ込んできた彼を抱え込んだ。
わあ!と心底驚いたような声が上がる。
1人がけでもゆったりとしたソファは問題なく僕たち2人が収まった。
びっくりしつつも特に抵抗することもなく静かになったバジルは、少し何かを考えるような顔をすると、モゾモゾと動きながら器用に体勢を整える。そうして膝の上にすっぽりと収まるようにサニーに身を寄せた。
えへへと満足そうに小さく笑ったバジルに僕も嬉しくなって顔を寄せる。スリスリと鼻先を触れ合わせて、それからちゅ、と唇に軽いキスをした。本当はもう何度かしたかったけど、その一度だけで彼は恥ずかしがるように僕の首元に顔を埋めてしまった。
密着したところから彼の体温が伝わる。
……あったかい。
ぎゅう、と抱きしめる力を強くして深呼吸する。
トクトクと少し早い心臓の音がわかる距離。
もう、これだけでいい。
サニーは口には出さずに、頭の中で彼の名前を何度も呼んだ。そのまま目を閉じていると頬や頭を撫でられる感触がして、小さく子守唄が聞こえてくる。
また子供扱いされているのかもしれないけれど、構わずに彼の手に顔を擦り寄せた。




end.