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kaede
2024-04-15 02:02:25
2175文字
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一彩くんが燐音くんとニキと一緒にクッキー食べるだけのはなし
一彩くん愛され燐一・ニキひい(相変わらず長い)
湯船に浸かりながらものすごい勢いで書いてさっと読み直しただけなので粗がすごいけどめちゃくちゃ楽しかった
兄さんと椎名さんはとても仲が良い。
兄さんはあまり都会に来てからのことを語りたがらないし、そんな兄さんの意を汲んで椎名さんも多くは語らないので、二人がこれまでどう過ごしてきたのか、具体的なところは僕にはわからない。けれどかなり長い間、兄さんは椎名さんのアパートで共同生活を送って、だいぶお世話になっていたようだし、一時はコンビでアイドル活動もしていたそうなので、その信頼関係は相当に深いのだろう、と推測できる。
だから、本当にいいのかな、と考えてしまうことは多々あるのだけれど。
「弟く〜ん。焼きたてのクッキーだぜェ〜! ほら、あーんしな?」
「弟さんの大好きなレモンでアイシングしたクッキーっすよ〜! あーんしてほしいっす!」
「お兄ちゃんのクッキーのが美味そうだよなァ?」
「ちょっと! それ全部、僕がつくったんすけど! 燐音くんは引っ込んでてほしいっす!」
「ンだとォ!?」
「本当のことじゃないっすか!! だいたいここは僕と弟さんの部屋で、燐音くんは部外者っすよね?」
「ほーォ? ヒナは邪魔者ってか」
「今ここにはいないから省略しただけっす! 正真正銘の邪魔者は燐音くんでしょ」
「あァ? 大事な大事な一彩くんのお兄様を邪魔者扱いすんのかてめェは」
「そういう時ばっかり兄貴面するの、どうかと思いますけど!」
「
……
ふふ」
僕が思わず笑ってしまうと。
「どうしたんだよ、弟くん」
「どうしたんすか? 弟さん」
二人の声が虹のように綺麗なユニゾンを描くから、また、笑ってしまった。
「二人とも、本当に仲が良いよね」
「どこが」
「どこがっすか?」
「
……
そういうところが?」
具体的には言わなくても、自分たちの直近の言動を振り返ればすぐに思い当たることだ。二人は顔を見合わせて、僕には何を含んでいるのかよくわからない顔をしてお互いに笑って
……
多分笑って? 二人同時に、ソファへ深々と沈み込む。
やっぱり、二人は仲が良い。
だからたまに、考えてしまう。
いくら二人が誘ってくれたからといって、二人の間に割って入るようなかたちになってしまって良いのだろうか、と。
「多分、邪魔者は僕だよね」
「はァ!? 何でだよ!」
「そうっす! このクッキー、全部弟さんのために焼いたんすよ? 邪魔者なわけないじゃないっすか!」
「そうなの? 部屋に戻ったら椎名さんと兄さんが二人してクッキーの前に座ってたから、二人で食べようとしてたんだと思ってたよ」
だから荷物を置いたらすぐに席を外そうと思っていたのに、思いがけず二人から、お茶にしよう、と誘われてびっくりしたのだった。
椎名さんが首を振る。妙に力強く。
「違いますよ! 燐音くんが勝手についてきちゃっただけっす!」
それを聞いた兄さんは、椎名さんを細目で見つめる。
「当たり前だろ。どうせ二人でイチャイチャする気だったンだろうけど、そうはいくかってんだ」
「うっ
……
」
「ほらみろ」
椎名さんは、しりとりでうっかり「ん」のつく言葉を言ってしまって負けたような顔をして、兄さんは勝ち誇った顔をする。
兄さんたちはたまに、僕には今ひとつわからない話で盛り上がっているけれど、それを見てると、やっぱり二人は仲が良いんだなぁ、とほわほわした気持ちになる。
大好きな兄さんに気の置けない友達がいることも、大好きな椎名さんに兄さんを大事に思ってもらえていることも、とても嬉しい。
それにしても、美味しそうなクッキーをたくさん目の前に並べられてるのに、ずっとお預けでいるのも、なんていうか、その、その
……
包み隠さず言うなら、早く食べたい。はしたない、とは思うけれど、僕が食べてもいいものではあるはずなので、当然の欲求と言っても差し支えはないと思う。多分。
「僕もクッキー、いただくね」
手にしたクッキーを一口かじる。
「あ」
「あ」
「わあ、本当だ! 爽やかなレモンの味がするね!」
さくさくの食感だけで頬が緩んでしまうのに、ほろほろ崩れて甘酸っぱさが口の中いっぱいに広がって幸せもいっぱいになる。
兄さんと椎名さんは、やけにぼうっとした表情で僕を見つめていたけれど。
「ありがとう椎名さん! 兄さんもいだだこうよ。とても美味しいよ!」
椎名さんにはお礼を、兄さんには幸せになってほしくてそう言うと、兄さんは覚束ない顔で小さく笑ったあと、手にしていたクッキーに口をつけた。
「
……
美味ェな、これ」
「ありがとうございます
……
」
いつもよりも控え目にかじりついた椎名さんも、だんだん表情が明るくなっていく。
笑い合う二人を見ながらもう一口食べると、さっきよりも美味しさが増した気がして、幸せももっと、大きくなる。
「三人で食べると、もっと美味しいね」
本当なら今すぐにでも二人に抱きつきたいところだったけれど、あいにく僕の身体はひとつしかないし、お行儀も悪いからぐっと堪える。
そんなふうに我慢したのが、もしかしたら顔に出てしまっていたのかもしれない。
「
……
そうだな」
「そっすね」
兄さんと椎名さんは二人して笑って、両側から挟むようにして僕に身体を寄せた。
あのね、兄さん。椎名さん。
またこうやって、二人の間に入れてもらえたら、僕はとても嬉しいよ。
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