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たかさき
2024-04-14 22:38:44
7600文字
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蜂蜜パイ(何でもない朝・迷子の夜)
FF7/ヴィンクラ/R-18
途中
11:喧嘩するヴィンクラ
「そういえば、クラウドはヴィンセントと喧嘩することなんてあるの?」
ティファが突然そんなことを聞いてきた。
クラウドは試食してみてと言われて食べた魚のマリネを口に入れたまま、暫く呆然としてティファを見やる。
ティファはテーブルに頬杖をついて、同じくマリネされた野菜を指で直接摘まんでひょいと口に入れた。うん、悪くない。そう言って彼女はクラウドに微笑んだので、クラウドも咀嚼しながらうんと頷いた。本当に悪くない、どころか美味しい。というか、ティファが作る料理で不味いものなど一つもない。
ティファが経営するセブンスヘヴンのため、クラウドは週に三日ほど、彼女と一緒に朝の早くから買い出しに行く。これはクラウドのデリバリーサービスの一環でもある。カームまで頼まれた荷物を運びがてら、新鮮な食材を手に入れて店まで戻り、ティファは夜の仕込みの準備をし、クラウドは店の掃除をする。それを昼までに終わらせて、ティファが作った仕込みを少し摘まみながら、軽い昼食にする。二人で並んで座って、ティファが入れてくれたお茶を飲んで、一息ついたところだった。ティファが何気なく、何の前触れもなしにさっきの質問を口にしたのである。
クラウドはもごもごと口を動かしながら考える。ティファはこんな質問をいきなり、どうしたんだろう。そしてどうやって答えたものか。
「
……
普段は、しないよ」
少しばかり時間をかけて飲み込んでからそう答えたクラウドに、ティファは興味深そうに覗き込んできた。
「普段は、ってことは、たまにはするの?」
「たまに
……
いや。殆ど、しない」
「しないんだ。そっか。うん。確かに喧嘩なんかしなさそうだね、クラウドとヴィンセントは」
「いや、喧嘩にならないんだ。俺はよく突っかかるけど、ヴィンセントは何も言わないし」
「ふぅん。大人、って感じするなあ。ヴィンセントは」
「
……
俺が何言っても単に相手にされてないだけ、って気もするけど」
「なぁに言ってんの、もう」
ふふっ、と彼女が笑うと、周りの空気がふわっと軽くなる。それに触れて、クラウドの表情も少しだけ和らいだ。残ったマリネの魚をフォークでつつきながら、ぼそりと呟くように言う。
「
……
でも、この前、したかな」
「え?」
驚いたようにティファが向き直る。
多分、とクラウドはぼんやりと考え続けていた。
多分、ティファは最近、デンゼルのことで悩んでいる
……
のかもしれない。
デンゼルがWROに入りたいと言い出して、ティファはそれに反対しているのだ。
だからか、デンゼルは最近、ティファと以前のように話をしなくなった。勿論、嫌いになったとかじゃない。デンゼルはティファやマリンのことをとても
――
多分、クラウドと同じくらいに、大切に思っている。でも、二人とは異なる自分の考えもあって、それをうまく伝えることができない。
それをティファも分かっている。分かっているけど、どう接したらいいのかが分からない。だから喧嘩とまではいかなくても、それだけにどうしたらいいのか分からない空気感になっている、のかも。それで、こんなことを聞いてきたのかもしれない。
ティファは遠慮がちに、それでも好奇心が勝ったようで、質問を口にしてきた。
「喧嘩? どんな?」
「喧嘩っていうか
……
喧嘩じゃないけど、ちょっと、気まずくなったというか」
「へえ、あるんだ。ヴィンセントとも、そういうこと」
「ん
……
俺が、悪かったんだけど」
徐々に小声になるクラウドに、ティファは悪いと思ったのか、それ以上は聞いてこなかった。
何となく二人ともマグカップを手に取り、かといってお茶を飲むわけでもなく、カップを揺らすなどして沈黙の時間を潰す。ふう、とティファが軽いため息を漏らした。
「難しいよねえ、人と一緒に生活するって」
「
……
そうだな」
「ねえ、仲直りはどうやったの?」
「
……
蜂蜜パイ」
「蜂蜜パイ?」
お茶を一口飲んで、窓の外に目をやったりしてみる。
「ヴィンセントが、蜂蜜パイを買ってくれたんだ。それを、二人で食べた」
「へええ、素敵な仲直りじゃない。
――
あれ? でも」
ぱっと顔を輝かせた彼女が、すぐに思い直したように首を傾げる。
「クラウド、確か、蜂蜜は嫌いだったよね? ヴィンセントには言ってなかったの?」
クラウドは窓のほうを向いたまま、言った。
「
……
うん。今でもあんまり好きじゃないけど
――
言ってない」
* * *
朝、起きる瞬間はクラウドにとって好きな時間の一つでもある。
クラウドの目覚めは早い。兵士の頃の習慣が未だに強く残っているせいで、今でも朝日が昇るころには自然に目が覚めてしまうのだ。
ヴィンセントは特に事情がない限り、クラウドより先に目を覚ますことはあまりない。クラウドが少しでも体を動かせば起きるようなのだが、すぐに目を開けようとはしない。クラウドが体を起こして完全に起きる気配を見せてからようやく目を開ける。それまではじっと深い海の底に眠る貝のように目を閉じたままでいる。
クラウドが目を覚ますと、大体いつも、ヴィンセントの腕の中にすっぽりと包まれている。ヴィンセントの体はあのひどい実験のせいなのか、通常時の体温がクラウドに比べてかなり低い。そして、クラウドの体温は一般成人よりも高めだ。前に聞いたことがある。クラウドの体はちょうどいい湯たんぽなんだと。寝るときに抱いているととても温かくて気持ちがいいんだそうだ。言うに事欠いて、人のことを湯たんぽってアンタ。そう思いはしたが、朝起きたときに、まるで小さい子供がぬいぐるみを抱きしめるみたいに、ヴィンセントがその腕にクラウドを閉じ込めるようにして眠っているのは、こちらにとっても心地良いことだったので特に文句は言わなかった。
今日もベッドの中はほかほかと温かくて、ヴィンセントはクラウドを抱きしめながら静かに眠りについている。
クラウドは薄く目を開けると、体を動かさないように気を付けながら、その温もりを堪能する。静かで、幸福と思える時間だった。頭は完全に覚醒しているけど、もう少しだけまどろみの中に戻ろうとする。
暫くして、そうっと顔を窓のほうに向けた。カーテンを閉めた窓の隙間から、まだ早い朝の薄白い光がぼんやりと漏れている。空気が少し湿って重い。今日は雨かもしれない。それを確かめようとして、体を起こしてカーテンを開けようとすると、後ろから長い腕が伸びてきてベッドに引き戻された。うわ、とつい声が出る。
「
……
アンタ、起きてるんじゃないか」
「寒い」
「もう朝だぞ」
「あれはナイチンゲールだ。ひばりじゃない」
首を傾げながら、ヴィンセントにされるがまま、ベッドの中に再び潜り込む。ずれた毛布も戻して、温かい空気が逃げないようにして。
それにしてもヴィンセントは時々、妙な言い回しをする。昔に見た芝居の台詞らしいが、アンタ芝居なんか見たことあるのかって聞いても、笑みを浮かべただけで答えてくれなかった。
何にせよ、長い腕に巻かれてぴたりと体をくっつけ合うのは、クラウドにとっても嫌なことじゃない。昨晩も散々抱かれて、甘やかされたこの体の中にはまだその名残が残っている。それを思い出すと、腹の奥がじわりと熱を帯びた。
クラウドは目を閉じて、自分より少し低めの体温の体に擦り寄った。するとより一層くっつくように腕が巻き付いて、背中をゆっくりと撫ぜられる。手の平と指先が背骨の凹凸を確かめるように一つ一つ辿っていく。直接的な行為でなくても、朝の濃密な交わりがここにはあった。
ただ、一度目が覚めてしまったからには、ずっとこうしているわけにいかないのも事実だった。もともと眠りが浅いクラウドにとって、よほど疲れているのでもない限り、二度寝ができない性質なのだ。この温もりに浸っていたいという気持ちもあるけれど、瑞々しい身体は朝を迎えて動き出そうとしている。ヴィンセントがいつも淹れてくれるコーヒーの香りを思い出して、クラウドは今度こそぱちりと目を開けた。
「ヴィンス、もう起きないと」
「なぜそんな残酷なことを言う
……
」
「何言ってんだ。アンタだってコーヒー飲みたいだろ、ほら」
だからこの腕をどけて。言葉では言わずに、巻き付く腕をぽんぽんと叩く。とうとう観念したのか、ヴィンセントは腕を緩めて、目をうっすらと開けた。まだ朝日がきつく差し込む時間でもないのに、彼は眩しそうに眉根を寄せて目をぱちぱちと瞬いた。億劫そうに上体を少し起こして、落ちてくる長い前髪をかきあげながら、本当に太陽が出ているかどうかを確かめたいのか、窓のほうを睨みつけている。そして更に目を細めて、ふあ、と小さく欠伸をした。
クラウドは間近でそれを眺めていて、何と言うか、何とも言えないくらい満ち足りた気分になる。ヴィンセントのこんな表情を見られるのは、きっと、自分だけだ。そう思うと、限りなく幸せな気分になれる。自分で起きろと言ったくせに、その体に抱き着いて頬に唇を寄せた。ふふ、と耳元で笑う気配がする。気にすることなく首に腕を回すと、離れた腕がもう一度巻き付いてベッドへと深く沈み込んだ。
「これはまだ夜だろう」
「朝だよ」
事実はきちんと述べた上で、唇を合わせた。ちゅ、と音を立てて一回。すぐ離した唇をヴィンセントが追ってきて、二回。もう少しだけ、と思って三回。
少し長めの三回目を終えて、間近で見つめ合う。見つめ合うということは、クラウドも目を開けているし、ヴィンセントも目を開けているということだ。ふふ、と笑い合ってもう一回。
結局、二人がベッドを出るまでにあと数十分はかかるという、ただ幸せな朝の時間。
* * *
朝の予感が的中して、夕方からやっぱり雨が降り出した。
小さな雨粒がぱたぱたと顔に降りかかってくる。フェンリルを飛ばしていたクラウドは更に加速して、帰路を急ぐ。
エッジの我が家に着いたのは間もなくのことで、見上げた空はさっきまでの青を忘れたように薄墨色へと変わっていた。
少し気分が重たくなるのを感じながらリビングに入ると、珍しいことにヴィンセントが先に帰っていた。スーツでもなく、すっかり部屋着に着替えた状態で、ソファーでくつろいでいる。ただいま、と声をかけようとして、クラウドは頬を緩ませた。ヴィンセントは組んだ足の上に本を乗せ、肘掛に頬杖をついている。てっきり読書に夢中になっているのかと思いきや、そのまま眠ってしまったようだ。片手はページの端に力なく置かれている。
朝のやり取りを思い出して、あんなに眠たそうにしていたのは本当だったんだな、などと思う。起こすのはかわいそうだから、そうっと足音を立てないようにして近づいて(僅かの気配でも感じたらすぐさま起きてしまう)(そうじゃなきゃタークスなんかやってられない)、ヴィンセントの足元に膝をついた。下から覗き込むと、確かにヴィンセントは眠りに落ちていた。まるでしていないかのような、ひっそりとした静かな呼吸の音。長い睫毛が呼吸に合わせて揺れる。口元は僅かに上がって、何だか笑っているように見えた。いい夢でも見ているのだろうか。クラウドもつられるように微笑んだ。悪夢にうなされる彼を知らないわけではなかったから、それはとても良いことだ、なんて。朝の幸せな気分を引きずりながら見守っていた。
ヴィンセントの口元が微かに動く。
「
……
――
、
……
」
漏れ聞こえた声に、クラウドの表情から、すぅっと色が消える。
握りしめる指の先が白く変わっていく。雨に濡れた服が冷たくて、重い。さっきまでは気にもしていなかったのに。
(
……
今、何て)
考えなくていい。クラウドは思考を遮ろうとした。これは考える必要のないことだ。それより靴を脱いで、熱いシャワーを浴びよう。温まったら昨日の残りのコールドチキンでも食べて、そうしたらヴィンセントも起きるだろうから、いつものようにソファーに並んで座って今日あったことを喋りながら
――
(
……
ルクレツィア)
考える必要はないと知っているのに、頭は勝手に考え始める。
さっき、ヴィンセントが口にしたのは、彼女の名前ではなかったか。
幸せそうな寝顔で、朝も起きたくなさそうにしていた、その夢の中で見ているのは
――
瞬間、反射的に手が伸びる。指が膝の上にある本を掠めて、もともとアンバランスな状態にあった本はぐらりと揺らいで、床にばさりと落ちた。
「
……
クラウド?」
静かに目を覚ましたヴィンセントは、二度瞬きをして、目の前にいるクラウドを不思議そうに眺めた。
小さな動きで辺りを見回し、ああ、と呟く。
「
――
夢だったのか」
伸ばされた手が、肩についた水滴を払うように触れてくる。クラウドは気まずい気持ちになりながら目を逸らし、床に落ちた本を拾ってテーブルに置いた。
「お前の言ったとおり、雨が降ったようだな」
「あ
……
起こして、ごめん
……
うなされてた、から」
そう言ったクラウドを、ヴィンセントはまたも不思議そうに見つめた。
何か言わないと、と思ったが、何も言葉は出てこなかった。立ち上がり、シャワーを浴びるよ、と言ってその場を離れた。
* * *
クラウドがうまく眠れなくなったのは、その日からだ。
ヴィンセントがいない日は、夜がきても一向に眠気はやってこず、まどろんだと思ったら朝が来ている。
ヴィンセントがいる日は、どんなに抱いてもらっても以前のような満ち足りた気分がやってこない。それを知られるわけにはいかないから、後ろからひどくしてもらうように頼むしかない。そうして疲れ切ったふりをして眠ろうとするけれど、ヴィンセントが目を閉じると、その中に現れているだろう彼女の姿に胸を焼かれる。そんなわけないと思いながら、そうかもしれないとひどく落ち込む。
そんな日を繰り返しているとさすがに体調もおかしくなってきて、当然ヴィンセントだって気付くし心配そうに声をかけてくる。
しかし、別に倒れ込むほどの体調不良でもない。ちょっと頭が重い程度なだけで、大丈夫だしすぐ治る、くらいの返答しかできなかった。
――
夜。
目の前の体温の低い体にしがみつくように腕を絡ませて、クラウドは目を閉じる。
(
……
ルクレツィア)
ヴィンセントの声が脳内に響く。自分じゃない名前を呼ぶ声など聴きたくないのに、その声は何度も何度も繰り返される。
手袋に包まれていない手が、頭を優しく撫ぜてくれる。クラウドが最近よく眠れないのを知っているからか、ヴィンセントは自分が眠りに落ちるまでずっとそうしてくれている。
ヴィンセントは、クラウドに理由を聞くことはしなかった。いや、最初はどうしたのか、とは聞かれた。あまり体調が良くないように見えるが、眠れていないのではないか。あまり大仰にならないように訊ねる彼に、何でもない、としか答えなかった。数回同じように聞かれて、同じように答えたからか、それ以降は聞いてこなくなった。
ヴィンセントはこうやってそばにいて、眠るまで頭を撫ぜてくれている。それの何が不満なのか。クラウドだって自問自答を繰り返している。そんなことをしているから余計眠れなくなるわけだが。今、ヴィンセントの目の前にいるのはクラウドで、彼女じゃない。そんなことは分かっている。
――
夢でも、彼女を思い出してほしくない。
それが本音だ。分かっている。無茶な話だ。夢をコントロールすることなどできない。
(私は、彼女を愛した)
(
……
ルクレツィア)
声が脳内で繰り返される。妄想じゃない。彼が実際に言った言葉だ。クラウドに言った言葉。目の前で呼んだ、あの声。
(アンタが今も本当に愛しているのは
……
)
声にならない悲鳴をあげて飛び起きる。
は、と息を大きく吐き出した。心臓がうるさく鳴っている。喉がからからに渇いていた。冷たい水を飲みたかった。嫌な汗をかいていた。
汗をぬぐって、体を起こす。咄嗟に手を伸ばして、窓を覆うカーテンを掴んだ。何か現実だと分かるものが欲しかった。手にした厚い布の質感で、安心して脱力する。これは、夢じゃない。
「
――
眠れないのか」
後ろから伸びた長い腕が上半身をとらえて、温かいベッドへと柔らかく引き戻す。
この腕が好きだ。堪らなくなって、その体にしがみつく。そうしたら、腕は優しく抱き留めてくれた。
「
……
嫌な夢を見た」
するりと素直な言葉が漏れ出てしまう。そうか、と耳元で声がして、頭を撫ぜてくれる。この声が好きだし、この手が好きだ。
「クラウド
……
夢は、夢でしかない」
髪を優しく梳かれて、顔を上げた。カーテンを閉め切っているので月の光も差さない真っ暗な中、ヴィンセントの赤い目がこちらを見ているのが分かる。じっと見ていると、ぼやけていた輪郭が徐々にはっきりとしてきた。いつもの彼の穏やかな表情だった。
「何を見たとしても、夢は、夢だ。気にすることはない
――
忘れたらいい」
染み入るように、彼の声がすっと耳に入ってくる。クラウドは頷いて、目を閉じようとして
――
。
安心したようにヴィンセントも目を閉じるのを見て、目を閉じられなくなった。
疲れたように、息を吐き出す。胸元に額を押し付けると、背中を優しく叩く手があった。それでも、目を閉じることはできなかった。
「
……
時々、夢の方がマシだって思うんだ」
多分、ヴィンセントは聞いていないだろう。そう思って、口にした。さっきまで寝ていたところを起こしてしまったのだ(本当にすまないと思う)、きっとまたすぐに眠りに落ちるだろうと思って。
「夢ならいつか覚めて終わるけどさ
……
現実は逃げられないから
……
ずっと続くから、それなら夢の中にいるほうが、いい
……
」
だって、ヴィンセントの見る夢は、現実だ。夢でしか見られない現実だから、ずっと終わらない。それをクラウドは知っている。
こんなことを考えるのは嫌だ。少しだけでも眠りたい。そう思って無理やり目を閉じる。夢なら、いつか覚める。自分の言葉で安心するのも滑稽な話だが、クラウドはそう思うとようやく眠れそうな気がしたのだ。
ふと、背中を撫ぜる手が止まる。
ヴィンセントも寝たのだろう。良かった。そう思って枕に頭を沈めようとしたところ。
「
……
そう、思うのか?」
声が聞こえた気がした。小さい声だった。聞き間違いかもしれなかった。クラウドは顔を上げようとしたが、久々にやってきた眠気の気配に、目を開けることができなかった。
* * *
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