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涼華
2024-04-14 01:03:51
2104文字
Public
支部掲載済み
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華氏94.1
ダングレ、平熱が異常に低いグレおじが事後人肌を求めるはなし
寒いのは嫌いだ。
指先は悴むし、酷いと関節まで痛みだす。身体も、頭も鈍くなる。まるで、虫ケラみたいに。
〈グレゴールってもしかして寒がりだったりする?〉
「んー
……
」
〈これ聞いてないやつだな〉
しょうがないなあ、なんて言った細身でも上背はある男の胸に収まりヒトに成りきれない身体に熱を分け与えられた。
情後の満ち足りた疲労感といつもより熱を帯びる身体が好きだ。ヒトのように愛されて、ヒトに似た温度の生き物になれるこの時間が好きだ。微睡み、半ば意識を夢の中へと飛ばしながら愛おしいひとのそばで取り止めもない話をする。気だるい身体を密接させて、愛おしいひとから熱をもらう。シングルベッドひとつ分の空間で、そのシーツの上でだけ俺はヒトらしくなれる。異形の右腕はそのままで、見た目を取り繕うことは出来ないけれど、温度だけはヒトになれる。ずっと昔に抱いて、諦めた夢が叶う、文字通り夢のような時間。
〈君って結構体温低いよね。〉
「ん、そう
…
だな
……
」
ふわふわ微睡みながら曖昧に答える。たしか母さん
…
ヘルマンに施術された俺だけが他の施術を受けた兵士と比べて体温が低かったような気がする。なにやら再生能力に割くエネルギーのため基礎代謝をどうとか、こうとか。誰に聞かされたかはもう思い出せない。くたりと身体を預けたままあやふやな記憶を語り聞かせる。
「昔から低かった気がするな
……
まあ、G社にいた頃はあんなだったし、その後も
……
」
そう、他人より体温が低かろうが、暑さ寒さで簡単に影響を受けようが、今まではどうでもいいことだった。俺の生活は、世界は俺ひとりで全て完結していたから。生活に不自由が発生しようと、虫ケラに成り果てた己の身体を呪おうと、誰にも迷惑はかからない。そもそも、こんな虫ケラのことなんて誰も気にしなかった。
けれど今はまた会社の一社員として働いていて、その上このひとに愛された。俺なんかが愛されてしまった。
こんなことを話したのも初めてのことだ。解決策もなければ共感もしてもらえない無駄話。それでもこの人は少しも聞き逃さずに聞いていてくれる。それがなんだか嬉しくて、ついつい要らないことまで口にしてしまう。
「だんなは、あったかいなあ
…
」
〈どうだろうね。君よりは確かに体温が高い気もするけど〉
チクタクと鳴る秒針の音。とくとくと響く胸の鼓動。それから人肌の熱。目蓋を開けるのも段々と億劫になり、諦めて目を閉じてしまう。彼と触れ合うためにと厚手の布地に包んだ腕は大人しいまま。それならばいいかと甘えるように両腕を背にまわす。
〈でもほら、言うじゃない〉
「
…
うん?」
〈手が冷たい人は心が温かい、ってやつ〉
「
…
手どころか、全身冷たいんだけど」
〈じゃあその分余計に温かいってことで〉
「雑すぎないか?」
そんな無茶なことを言う男に苦笑した。
なあ、管理人の旦那。本当に心が温かい人間は、仲間を見捨てて戦場から逃げ出さないんだ。俺みたいなやつにはならないんだよ。
今だって俺はあんたの優しさに甘えて、無遠慮に寄りかかってる。俺はあんたが思うよりずっとずっと冷たい人間なんだ。
──────いいや、俺は人間ですらない。虫ケラなんだよ。
〈
……
また何かよくないこと考えてたでしょ〉
「んー
…
」
〈本当君ってやつは
…
〉
でもそういうところも嫌いじゃないよ、なんて言って時計頭のこいびとはキスの代わりにぺたりと文字盤を額にくっつけた。
いつも当たり前のように受け入れているけれど、このひともヒトではない部位を持っているんだったっけ。室温と同じくらいの温度の頭は俺よりも少し冷たかった。
〈君が時計頭の私を好いてくれたのと同じように、私は君がヒトでなくても、本当に虫になってしまったとしてもきっと好きなままだよ。君だから好きなんだよ、グレゴール〉
「
…
ふーん」
〈ちょっと、ちゃんと聞いてってば〉
どうやったらちゃんと信じてくれるかなあ、なんて言いながらチクタク、カチカチと頭を捻るこいびとに気付かれないように笑う。
言われなくてもわかってるよ、そんなこと。俺の愛しいひと。俺をあいしてくれる、ゆいいつのひと。俺はどうしようもないやつだけど、あんたは俺のこと、諦めないでくれるんだろうな。だからいつもあんたにこうやって子供みたいに甘えてしまうんだ。
チクタク、カチリ、時計の音。とくとく、とくん、心臓の音。言葉を上手くまとめようと悩む音にぼんやりと耳を傾けながらゆっくりと摂氏36度と少しの
微睡み
ねつ
に意識を沈めていった。
グレゴール
変温動物ではないが平熱が低い虫おじさん
平熱は34.5とかその辺、寒さにも暑さにも弱い
ただそんなの気にしてられない環境で生きてきたので根性で行動してる
ダンテにメロメロだし自己肯定感もそこそこ高め
でもたまにドツボに嵌る
ダンテ
平熱は36度代、至って普通
頭の時計の炎は熱くもなく冷たくもないので文字盤は気温と同じか少し冷たいくらい、夏場はほかほか
じっくり恋人の自己肯定感を育ててる真っ最中
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