高梨 來
2024-04-13 13:52:00
4234文字
Public ときメモGS2/感想
 

世界でいちばん素敵な恋をした女の子のこと――千代美ちゃんとのVSルート解消について

小野田千代美ちゃんという女の子から見た「氷上くんという素敵な男の子」のこと、デイジーとの出会いが氷上くんを成長させたこと、淡い恋心を乗り越えた先で新しい希望がきちんと残されていたこと……VS解消ルートがあまりに良すぎて爆発したので気持ちの整理に書きました。

※書き写しではないのでセリフは正確ではありません
※個人の見解であり解釈です。プレーした人の数だけはね学ライフはある!

【読まなくてもいい前提】
・一昨年くらいに鈴木千尋さんのファンになったので(水泳アニメFree!の中で唯一泳いでないバスケボーイ鴫野貴澄くんをよろしくお願いします)「CV鈴木千尋がいる!?」の情報を得たのでそのうちGS2をやろうと思ったけど中古市場で高騰していたので様子見していた。
・switch移植で価格が下がったのでDS版を無事入手。逆裁シリーズやDQをさんざん一緒に遊んだ3DS、まだまだ君と遊びたい!
・軽い気持ちでプレーしはじめたら氷上くんが好きになりすぎてこのざまで他の子ルートに全然いけないまま氷上くん3週目。
友達として程よく付き合う分にはハリーも佐伯くんもくーちゃんも結構好き。
・基本的には一次創作の宣伝と好きなクリエイターさんの活動を追っかけるアカウントなのでGS専用じゃないんです、いろんなことを話すけどごめんね。




ときメモGS1/2には、ヒロインと同じ男の子を好きになり、ライバルとして宣戦布告を持ち掛ける女友達が幾人か登場します。
「まっすぐ突進型」の生徒会執行部員であり、風紀委員の優等生、氷上格くんの恋のライバルとなるのは彼と同じく生徒会執行部に所属する小野田千代美ちゃん。
眼鏡姿の小柄でキュートな努力家で優等生の女の子です。

氷上格くんは真面目過ぎるほどに真面目で自分にも他人にも厳しく、学校生活においてもルールを重んじる男の子です。
なにせ、主人公がほんの15秒ほど学校に遅刻しただけで「アウト!」と厳しく叱責し、自転車通学の際にはヘルメット着用&手信号で交通安全対策を遵守(いまでこそヘルメット着用は努力義務になったことを思えば、18年前から先見の明がある、としか言いようがありません)、入学したばかりの学校で校門前に立ち、先輩の校則違反を臆せず注意し、挨拶運動を自ら実施するのです。
「真面目過ぎて疎ましい」と思われてしまいそうな氷上くんではありますが(実際に一年生にして果敢にも挑戦した生徒会選挙では「風紀の乱れ、ルールの遵守」を声高に訴えるのですが、当然ながら口うるさい先生のような態度は生徒から指示されることもなく、敗退となってしまいます)通っている塾での年始のお餅つき大会では餅を丸める特技を披露しているのだということ、テスト前には皆に囲まれて(普段からしっかりノートを取っているから特別に勉強をする必要はないという彼が)「ヤマを張るならここにしたほうがいい」とアドバイスを交えながら勉強を教えている姿を見れば、「変わり者」の彼に同世代の子供たちの中での居場所が一切なかったようには見えません。
個々の考えや信念があること、それらを尊重しながら共に生きていくことの大切はきちんとわかっているし、そんな彼の思いやりや優しさ、ユニークさという「個性」を快く受け止め、クラストメイトとして適度な距離感で付き合おうとしてくれる学友はいままでにもきっと多数いたのでしょう。
それでも、「勉強熱心なストイックな努力家で科学技術に何よりもの関心があり、人工物よりも自然の美しさに心を惹かれる感受性の持ち主。社会において定められたルールを遵守することが安心・安全な生活において何よりも大切なこと」を信じている彼の生き方は同世代の少年少女と相容れることは難しく、「堅物の変わり者」とみなされてしまうことに少なからず傷ついてきたよう。そんな自分にとって「君は初めての友達だ」いうことを、ヒロインへと告げてくれます。

厳しい規律を重んじる優等生と聞けば、子供のころから躾を重んじられ、息苦しさを感じながらもそこに逆らうことが出来なかった……というキャラクター造形を想像する人も多いかと思います。しかし、氷上格くんはそうではありません。
次第に交流が深まるのにつれ、氷上くんのご両親は一人息子である格くんを深く愛し、彼の知的好奇心に答えるように興味を持った本や高価な天体望遠鏡を買い与え、ルールを守ることの大切さ、相手の立場や状況を慮っての声掛けを忘れず常に紳士的に接することを幼いころから教え、深い愛情を注ぎ、「生まれてきたこと」をまっすぐに祝福してくれたこと、そんなご両親や「クールでカッコいい憧れの大人の男性」の背中を見せてくれることで格くんを導いてくれた心から尊敬する憧れの従兄・零一兄さんの存在が彼を屈折させずに済んだことが示唆されます。
「真面目な優等生」の内側にはまっすぐで優しく思いやりと愛情にあふれ、初めての「男女交際」において年相応の欲望や好奇心に時に傷つき、戸惑いを抱えながらも大切な人にどう向き合えばいいのかと真摯に思い悩んでいることをありのままにヒロインへと打ち明けてくれる、とびっきり純粋で優しい等身大の男の子がいたこと、おそらく氷上くん自身が気づくことが出来ないまま(閉じ込めていた)だった情熱的なロマンチストな感性の持ち主であることを知らされるにつれ、ヒロイン=私たちプレイヤーはますます氷上格くんという男の子に恋をしていくのです。


ガラス細工のように様々な角度から光をあてるほどに、奥深い美しさを見せてくれる彼に惹かれる女の子は我々プレイヤーの操作するヒロイン(通称デイジー)のほかにもう一人、作中で現れます。それが、(ルート次第ではありますが)主人公の親友となる千代美ちゃんです。

真面目な優等生の千代美ちゃんは、自身と同じくルールを遵守し、自身にも他者にもストイックで努力を怠らない氷上くんを「尊敬している」のだといいます。
「氷上くんのことは尊敬出来る素敵な男の子だと思っていたけれど、大切な友達だと思っていたあなたが氷上くんと距離を縮めていく姿を見ているうちに自分の気持ちに気づいた」のだとライバル宣言を持ち掛けられたことにより、親友だったふたりはある日突然ライバルとなってしまいます。

他者の振る舞いにより、自身で気づけなかった気持ちに「気づいてしまった」その日からはいままでには戻れない、というのは往々にしてあることです。
大好きな男の子を取られたくなんてない! 嫉妬心に駆られながらも、氷上くんにふさわしい素敵な女の子になろうと自分なりに努力を続ける千代美ちゃんはヒロインの努力を称えながらも「お互いに良いライバルとして切磋琢磨しあおう」と言わんばかりに火花を散らし、時にすこしいじわるめいた牽制のような言葉をかけながらも勝負を挑んできます。

VSルートと呼ばれるライバルとの闘いはプレイヤー次第で分岐します。
・そのままライバルを無視し、男の子との親密度を高めてライバルに打ち勝つ
・ライバルに敗退し、彼女が意中の男の子と結ばれるのを見届ける
・意中の男の子との親密度を高めていきながら、友情を取り戻せるようにと根気強くライバルとも共に時間を過ごす。

上記ふたつを選んだ場合はいずれもライバルとなってしまった元親友とは絶交となりますが、3つ目の選択を選んだ場合に限り、元親友が身を引き、友達としてやり直そうと持ち掛けてくれます。
どれだけ睨みつけられ、チクチクと嫌味を言っても根気よく友情を修復しようと努力し続けたその先で、ついに千代美ちゃんはヒロインを受け入れ、いままで厳しいことを言って済まなかったと謝罪の言葉を告げてくれます。

「ずっと氷上くんを尊敬していたけれど、尊敬と恋は違うことに気づいた」
「あなたに出会ったことで氷上くんは優しくなった」

高潔で純粋な魂の持ち主である氷上くんは千代美ちゃんにとっての理想の男の子でした。それでも、自由奔放で明るくおおらか、時に度を越した天然ではつらつとした性格のヒロインに出会ったことで氷上くんは変わっていくのです。

「学校帰りの寄り道はいけないことだけれど喉が乾いているのなら仕方ないから良しとしよう」

「おおきな声では言えないけれど、学校帰りに飲むお茶ってうまいよな」

放課後に一緒に喫茶店でお茶をして帰ろうとヒロインに誘われた際の返答が親密度が上がることによって変化することでもそれは顕著です。
「ルールを遵守し、つねに正しくあることが満ち足りた学生生活を過ごし、人間として成長するために何よりも大切なこと」
だという考えにある種固執していた氷上くんは、「少しだけルールをはみ出すことを自身にゆるすことでしか得られない、大切な友達と過ごす時間の楽しさ」を知ったことにより、いままでになかった柔軟な考え、他者に寄り添うやさしさを手に入れ、果敢にも再挑戦した二年時での生徒会選挙では「皆の学校生活をより素晴らしいものとするために出来ることを」と方針を転換して見せたことで、生徒会長に選ばれるのです。

千代美ちゃんは「尊敬と恋愛感情を自分の中で混同していたが、気持ちの整理がついたのだ」とヒロインに事実上の敗退宣言を告げます。
この言葉には千代美ちゃん自身の自らを省みることの出来る聡明さ、キツイ態度でかつての親友を無碍に扱ってしまったことへの後悔、心から反省しているからこそ、調子のいいことを言って……と思われるのを覚悟した上でやり直したいとまっすぐに告げてくれる彼女の信念の強さ、心からの優しさが詰まっているように感じられます。
志が高く優しい彼女は氷上くんともきっとお似合いの女の子です。
しかし、ヒロインが氷上格くんという男の子との関係性を深めていくルートを選んだこの世界線では、友人として、そして恋愛として発展していくあたたかで優しい絆の中で氷上くんを成長させていく役割を果たし、彼にとっての「たった一人の大切で特別な女の子」として選ばれるのは千代美ちゃんではなくヒロインであるデイジーなのです。

千代美ちゃんにとっての氷上くんは「尊敬できる素敵な男の子」です。それは残酷な言い方をしてしまえば、思春期特有の理想や憧れの投影ともいえるのでしょう。
傷つき、戸惑いながらも自分の気持ちに真摯に向き合い、自らの恋を「終わらせる」ことを決意するのと同時に、厳しく当たってしまったヒロインへ「私の大好きな男の子の素敵なところを引き出してくれてありがとう。もう手遅れでなければ改めてあなたと友達になりたい」と告げてくれる千代美ちゃんはとびっきりの勇気と優しさと信念をもった素敵な女の子です。
こんなに素敵な女の子と親友になれて、同じ男の子を好きになれて本当によかったと心からそう思いました。