スサ
2024-04-11 13:25:36
1607文字
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【鬼水】初夜に父臨席、ありやなしや

つい…
本番(?)はありません。問答まで。

……なんだって?」
 あぐらをかいて、腕組みした水木は眉間に皺を寄せて目の前の小さな目玉のいきものを見、聞き返した。何か信じられないことを聞いた気がして。疲れによる空耳と思いたい。思いたいのだが。
「わしもついてるから安心せよと言ったんじゃ」
 目玉はニコニコしているように見えた。これがからかっているならまだ良かった。だが、本当に本心から、純粋な善意から言っているのがわかるから水木は頭を抱えたくなかった。
どこの世界に息子のしょ、初夜にくっついてくる親がいるんだ」
「それを言うたらおぬしもそうじゃろ」
 馬鹿野郎、と言い返した水木の声は、しかしあまり威勢のいいものでもなかった。顔なんてもう、真っ赤になっていたし。
「お、おれは、くっついてくとかじゃ」
「そうですよ、水木さんは主賓なので」
 あぐらを崩し、固くした拳を振り上げた水木を後ろからどうどうと抱きとめた腕があった。
「お布団敷きましたよ」
……………おう」
 後ろから真っ赤になったうなじをまじまじと「食っちまいたいなぁ」という眼差しで確かめた後、先程まで話題にのぼっていた息子、鬼太郎は養父ごしに実父を見て「父さん」とたしなめる。
「父さんが水木さんの親友なのも相棒なのもわかりますけど、閨のことまで一緒にってのは、ちょっと、いかがなものでしょうか」
「む、何をいう。良いか、お前は初めてじゃし、こやつは人間じゃぞ」
 目玉のおやじはぷりぷりと熱弁をふるい始めた。鬼太郎の腕の中でぷるぷる震える水木は羞恥になのか、耳も真っ赤だ。かわいいなあ、と実父の話は半分くらい聞き流し、鬼太郎は目の前の耳たぶを食んだ。ひぇ、と油断しきったところを驚かされた声をこぼして水木がどうにか首だけひねってくる。目がうるんで、とても美味しそうだった。
「おためごかしはよしてください。正直に言ってくださいよ、息子が相棒を抱くところが見たいって」
「きっ!」
 水木はもはや名前すら呼べず固まっている。この人ほんとにモーレツサラリーマンとやらだったのかな?と鬼太郎はちらりと思った。
「むう
 だが実父の方はちまこい体で腕組みし、何やら考えこんでしまった。
っ!」
 おまえは否定しろ、と言わんばかりの顔で水木が今度はそちらを見たが、おやじの方は気づいていないのか、水木を見もしない。
「まあ、見たいか見たくないかでいえば、そうじゃな」
「こら!!」
「じゃって、息子が立派に本懐を遂げるところは見たいじゃろて。な?」
「な?じゃねえーよ!」
「それにのう、このじゃじゃ馬がしおらしくなるのかも、ま、興味はあるの」
 水木は今にも爆発しそうな顔をしたが、後ろから抱きしめる腕が強くて少しも動けない。せいぜいバタバタするくらいだ。
 鬼太郎は呆れたような顔でため息をついた。
「父さん」
「やっぱりダメかのぅ」
「僕はかまいませんが」
「そうだろ、ダメだろ、っ、は?!鬼太郎?!何言ってるんだ!?」
 断るに決まっていると思った水木は最初台詞を勘違いして同調しかけたが、途中で気付いてあ然とした。そんな水木に抱きついた体をさらに密着させながら、鬼太郎は淡々と続ける。
「邪魔をしないでくれるなら」
「邪魔などせぬよ、決まっておろう」
父さん、本当にいいんですか?」
「良くない!」
「水木さんはちょっと黙って」
「床に入ったら水木さんが見るのは僕だけだし、呼ぶのも僕の名前だけですよ」
 経験がないとはとても思えない確固たる自信である。あまりにも堂々としているため、水木は少し怖くなってきた。俺はどうされてしまうんだ?と。
「本当に?父さんの親友じゃない顔で僕だけ見てるのを横から?」
 ねえ、と念を押す顔は笑っているのだが、あまりにも不穏だった。

 結局鬼太郎と水木の初夜に目玉のおやじが臨席したかどうかは、三人の秘密である。