さちこ/Sharia
2024-04-11 08:54:05
801文字
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魔法の使い方

漆黒のおはなし

「この眼になって、一つわかったことがあるの」

森を歩く高いヒールがぴたりと止まる。
至極の髪が振り返ると共にふわりと靡き、紫の瞳が不思議そうにヤ・シュトラを捉えた。

「何がわかったの?」
「貴女のエーテルの使い方と、見ている世界よ」

そう言って、ヤ・シュトラは上空に手を掲げ────そこにあるはずの環境エーテルの奔流を軽くかき混ぜた。
そうして数量を“手に取り”、ボッと音を立てて燃やす。
すると、光の戦士は驚いたように目を見開いた。

「まさか、そこまで視えてるの?」
「えぇ」
「ふぅん……やるじゃん、小娘」

第一世界の、ほとんど光で構成されている環境エーテル。その香りを吸うようにシャリアは両手を広げ、心地よさげに深呼吸する。
それに応えるように森が騒めき、エーテルが女の体に巻きつく。音をかき集めるように至極の毛で覆われた耳がぴこりと反応した。

「ラケティカは黒衣と似てるね。厳格なおじいちゃんだ」
「貴女ね……ただでさえ光のエーテルでいっぱいでしょう。第一世界の環境エーテルは光で満たされているのよ」

大丈夫、と女はにへらと笑って、小娘の頭を撫でた。

「この森、きみの事を気に入ってるみたい。夜の気配がして心地いいんだってさ」

英雄の、弓だこだらけの手。暖かなそれが耳を掠るたびにぴこりと動かせば、彼女はクス、と笑って手を退けた。
普段は子供っぽいくせに、変なところお姉さんぶるのだから、たまったもんじゃない。

賢人のバラードが女の声で一節だけ紡がれる。彼女の十八番であり、戦歌の中で最も得意とするそれ。
今の眼ならばわかる、エーテルの奔流がぐにゃりとうねり、雨雲のような形をとって────ヤ・シュトラの肉体へと降り注いだ。

「嘘つき。誰が操作下手ですって?」
「何とでも言いなさいな」

だって、きみしかわからないんだから。
女は悪戯が成功した子供のように笑った。