『最近忙しくて話す暇がない。毎日顔を合わせてはいるし話してもいるのだけれど、それは政治や仕事の話ばかりで、二人の話をする機会がまったくないので、手紙を書いてみた。』
そんな冒頭から始まる手紙が私室の机の上に置いてあった。
丁寧に封蝋がされているからなにか重要なことかと思えば、今日の会議は大変だったとか、今日の昼食の他愛のない感想などばかり。
日記か。
読みながら手紙の内容と実際にあったことを思い返しながら、あの表情のときはこんなこと考えてたのか、とか、案外顔出さないよう今日は頑張ってたんだな、と感心する。
昼食がいかに美味かったのかが長めに綴られているところは思わず笑ってしまった。
「昼食が美味しかったのは見てて分かりますよ」
気がつけば手紙の内容につい返事をしていた。
その後もなんでもない出来事が綴られているのに会話のように相槌を打つ。相手は目の前にいないのに、実際に会話をしているような気分になれた。
一通り読み終わったところで、よし、と呟いてペンを取る。
大切なことだからよく伝わるように書こう。ライオスのことを思いながら一字一句丁寧に。
手紙をしたためながら、久々に穏やかな夜だな、と安らいだ気持ちの自分がいた。
翌日、顔を合わせた瞬間、ライオスが期待した表情で見てきたので昨夜書いた手紙を渡す。とても嬉しそうにいそいそと封筒から手紙を取り出した。
いや封蝋はしてない簡単なものだけどその場で読むのか。まあ読むと思ったから封をしなかったのだけども。
一枚の紙を取り出すと、ライオスの期待に輝かせた顔がみるみるしょぼくれていく。
「そんな訳で手紙は禁止です」
「返事もなしに!?」
「返事ならそれですけど」
「手紙禁止としか書いてないけれど」
「一国の王の自覚あります?そう軽々と自筆の手紙残されると色々厄介なんですよ」
「そういうものなのか……」
「そういうものです」
すっかりしょげて眉尻を下げたライオスにやれやれ、と思いながら近づいてそっと耳元で囁く。
「ちゃんと夜一緒に話しましょう。二人だけのなんでもない話を」
手紙自体はとても嬉しかったと、きちんと伝えてやろう。
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