はとこ
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エンゲージ・ブルー

お付き合い通り越して結婚してるっぽい翔藍と嶺二先輩。
#翔藍春待ちチャレンジ

「藍!」
 撮影スタジオのあるビルに入ると、ちょうど階段から駆け下りてきたショウの姿が見えた。変装用の黒ぶちの伊達眼鏡越しの青い目をきらきらと輝かせ、こちらへ駆け寄ってくる彼にボクは口元を緩ませる。
「お疲れさま。予想通り、会えたね」
「お疲れ! 時間ぴったりに終わって良かったぜ。あっ、嶺二先輩もお疲れさまです!」
 ボクの隣にいたレイジに気づくと、ショウは表情を引き締めて勢いよくお辞儀する。
「お疲れちゃん。そっかそっか〜、翔たんに会えるって分かってたからいつもより歩くのが速かったんだねえ、アイアイ」
「別に、いつも通りだよ。速度を上げなくてもここでの撮影を終えたショウと会えるって分かっていたし。撮影、上手くいった?」
「おう、バッチリ! すげえいい写真を撮ってもらったんだ。早く見てもらいてえ」
「そう。毎晩鏡の前でポーズや表情の練習をしていた甲斐があったね」
「まあな! ……って、さり気なく嶺二先輩にバラすなよ」
「あはは、翔たんらしいね。アイアイは翔たんの努力の一面も見ているから、その写真、それプラスですっごくかっこよく見えるんじゃない?」
 レイジがからかうように笑うけど、ボクは軽く肩をすくめて、
「仕事に関して私情は挟まないことにしてるから、どうかな。ショウの評価は高くても、ボクの目から見たらそうじゃないこともあるからね」
「そうなんですよ、こいつ、仕事に関しては相変わらずすっげえ厳しいんで。……あ、藍。ちょっとかがんで」
 ふとショウが真面目な顔でそう指示してきたから、ボクは素直に従った。ショウの手がボクの左耳朶――水色の宝石の嵌るリング型のイヤリングに触れる。でもそれは一瞬のことで、すぐにショウが表情を緩めて手を離した。
「よし。オッケー」
「ありがとう。ズレてた?」
「少しな。じゃあ、オレ、そろそろ行くから」
「うん。また夜ね」
 明るく頷いたショウは再びレイジに深々とお辞儀をすると、出口へ駆け出していった。自動ドアを抜けて、その小さな背中が見えなくなるまで見送っていると、レイジがふっと笑い声を立てた。
「もっとあからさまにいちゃついても良かったのに〜。ぼくは二人のこと、よく知ってるんだしさあ」
「するわけないでしょ。今は移動中だけど仕事中と同意だよ」
「翔たんのピアスとお揃いのエンゲージイヤリングしてるのに?」
……これは単なるファッションの一部。事情を知らない人間から見れば、そう捉えられるレベルのものだから」
 ショウの手で直してもらったイヤリングにそっと触れつつ、ボクはツンとした表情を意識的に作る。それがボクらの事情をよく知るレイジには無意味な態度だと分かってる。でも、そうしないとせっかく抑えているショウに対するいろんな感情が勝手に出てきてしまいそうになるから。
「アイアイ、ポーカーフェイスがどんどん下手になってくよねえ。翔たんにプロポーズされた時あたりから、特にさ」
「その一件で君の前で完璧に装うのは無駄だから、敢えてそうしないようにしているだけだよ」
「ンフフ、じゃあそう言うことにしてあげよっかな〜」
「その顔ウザいからやめて。ほら、ボクたちもさっさと行くよ」
 努めて冷たく告げると、ボクは一足先に歩き出した。