nina_40enaga
2024-04-07 12:11:11
7650文字
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砂糖漬けの夜のララバイ


「アルバス、お菓子食べる?」
「何があるの?」
「これはどう? オランジェットだ」
 スコーピウスは実家から送られたお菓子を開封していた。いかにも高そうな缶に入ったお菓子のご相伴にあずかることはよくあることだった。紅茶を淹れてティータイムのお供にするようなお菓子をベッドの上で友達と食べていることに対してドラコ・マルフォイがどう思うのか考えると少しワクワクする。スコーピウスが見せてくれたのは輪切りのオレンジにチョコレートがかかったお菓子で、つやつやとしていていかにも高級そうだった。
「もらおうかな」
 そう答えるとスコーピウスは嬉しそうに笑って透明の袋を開封した。袋ごとくれればいいのに、スコーピウスはわざわざ指先でオレンジを摘み上げ、僕の口元に差し出した。
「はい、あーん」
「え? あ、あー」
 口を開くとスコーピウスはお菓子を口に入れてくれた。砂糖漬けのオレンジはほろ苦く、チョコレートの甘さと相まって大人の美味しさだった。もぐもぐ、と咀嚼する僕をスコーピウスは嬉しそうに見つめている。最近スコーピウスは僕に食べ物を与えることにどうやらハマっている。きっかけは、僕が体調を崩したときのことだった。あの時の彼は妙にうっとりした顔で僕の口にミルク粥の匙を突っ込んできた。それ以来、なにかと理由をつけてなるべく自然にその機会を得ようとしているようだったが、正直言ってわかりやすくてバレバレだった。最初は子供扱いされているようで不満だったが、どうやらスコーピウスは子供扱いがしたくて僕に食べ物を手ずから食べさせたいわけではないようなのだ。彼の挙動がときどき僕の理解を超えるのは今に始まったことではないが、うっとりした顔で僕にものを食べさせる彼の姿を見ていると、僕自身の感情さえ僕の制御を超えるような気がした。つまり僕も少しはそれに興奮を覚えているようなのだった。あまり大声で言うようなことではないけれど。
「こっちはレモンでできてる。レモンオランジェット、食べたことある?」
「ない。そんなものうちで出るわけない」
 そもそもお菓子は禁止なのだ。ホームパーティーは頻繁に行われるから甘いものを食べる機会が全くなかったわけではないが、スコーピウスがくれるお菓子は食べたことがない種類のものが多かった。
「そうなんだね。僕はこれ好き」
「へえ、じゃあそれも食べさせてよ」
 そうねだってみると、スコーピウスは嬉しそうに頷いた。わかりやすくて本当にかわいい。スコーピウスが摘み上げたチョコのかかったレモンにそっと唇を寄せる。ぱく、と噛みついて、いつもならそのまま受け取るのに、僕はふと思いついて、そのままスコーピウスの指を舐めた。
「あ、アルバス」
「ん……
 スコーピウスの頬に色が灯った。もしかしてとは思っていたけれど、やはりスコーピウスは僕に手ずから食べさせることで、なんらかの性的興奮を得ていたらしい。レモンオランジェットはオレンジよりも酸っぱくて苦味も強く、僕には食べつけないほど大人の味だった。でもそんなのどうだっていい。お菓子を飲み込むと、まだ動揺しているスコーピウスの手を取って、そっと口付けた。
「え、アルバス?」
「うん」
 スコーピウスの指先についた砂糖を舐める。彼がはっきり動揺しているのを確認しながら、わざと舌を見せつけるように、ゆっくりと舐めて奉仕する。まるで彼の性器を舐めるときのような舌使いだった。ぶるり、とスコーピウスの背中が震えたのが伝わってくる。じゅ、じゅっと音を立てて吸いつき、舌と上顎で優しく挟んで圧迫する。
「あ、アルバス……
 見上げると、スコーピウスの白い頬はすっかりピンク色だった。僕はぬるりと彼の指を口から離すと、にやりと笑った。
「誘ってるんだけど、伝わらなかった?」
「でもまだ夕飯前だよ?」
「そうだね。夕飯前にお菓子を食べるなんて、悪いことだよな?」
 そう言いながらスコーピウスの膝の上に乗り上げる。彼の中心が硬くなり始めているのに気がついて、ますます上機嫌になる。
「確かに、そうかも」
 スコーピウスの目がとろんと蕩ける。彼が誘いに乗ってくれたことが嬉しくて、僕はぎゅうっと抱きついた。スコーピウスの身体はぽっぽっと熱くなっていて、彼の興奮が伝わった。うっとりしながら身体を擦り付けていると、優しく肩を押される。抵抗することなく押し倒されると、スコーピウスが嬉しそうに見下ろしてきた。
「アルバス、大好きだよ」
 甘い言葉が耳に流し込まれる。いつもそうやってスコーピウスは言葉でも表情でも仕草でも、たっぷりと愛情表現をしてくれる。
「もっと言ってよ」
 それなのに欲張りな僕はついそんなことをねだってしまうのだ。だってねだればねだっただけスコーピウスは与えてくれると知っているから。彼は僕の言葉に心底嬉しそうに笑った。
「大好きだよ。アルバス、出会った時からずっと僕は君のことが」
 スコーピウスは歌うように上機嫌な様子で口説き文句を口にしながら僕のシャツのボタンを一つずつ外していき、ときどきちゅっちゅっと頬や鼻先や唇にキスをしてくれた。ボタンが全て外れて肌が露わになると、愛おしそうに撫でてくれる。
「かわいい……
 慈しむような彼の表情は僕のことが好きでたまらないと言っていた。今日もこれからたっぷり宝物のように大事に抱いてもらえるのだ。それが嬉しくてたまらない気持ちと裏腹に、ほんの少しだけ物足りない気持ちが確かに存在していた。ねだればねだっただけ与えてくれる彼に、さらにわがままを言いたくなってしまった。
「ねえスコーピウス」
 スコーピウスの薄青色の瞳を覗き込む。しっかりと目を合わせて離さないようにする。
「したいことがあるんだけど」
「何?」
 首を傾げながら切り出す。セックスするときの彼は殊更やさしい。今のスコーピウスならどんなわがままでも聞いてくれそうだと思う。
「君が興奮すること、沢山知りたい」
「え?」
「お願い」
「ど、どうして?」
「どうしても。僕のことは好きにしていいから」
 スコーピウスは戸惑っているようだった。それでも優しい彼には僕の頼みを無碍にできなくて、困っているのがよくわかった。
「君がいつも頭の中でしてるみたいにして」
「え、ええっ?」
 鎌をかけただけなのに、スコーピウスは動揺していた。一体何を考えているのだろう。知りたい気持ちでいっぱいになる。
「お願い」
 スコーピウスがお願いに弱いことはよく知っていた。じっとして待っていると、真っ赤な顔をしてこくりと頷く。思ったとおりだ。
「僕がいやなことしたら、絶対に止めてね」
「うん。絶対にそうする」
 そう答えながら彼が一体何をしてくれるのかわくわくしていると、彼は深呼吸をしたあと、そうっと指先を僕の胸元に置いた。くるくると刺激される。いつもの優しい刺激に安心しながら、確かに快感を得る。
「ん……あっ♡」
「気持ちいい?」
 いつもと違うことをされたわけではないのに、期待のあまり過敏になっているようだった。それが恥ずかしいと思うのに、もっと見てほしいと思った。
「み……みてて」
「うん、見てるよ」
 スコーピウスは穏やかに微笑んだ。その表情を見て、ぞくぞく、と背中を興奮が走る。性器が痛いほど張り詰めているのを自覚した。スコーピウスにもそれはわかりきったことであるはずなのにそこには手を触れてくれなくて、胸元だけを刺激され続ける。
「あ……あっ♡」
「かわいいね」
 うっとり微笑んだスコーピウスは乳首を両手できゅっと摘み上げた。びくん、と大袈裟なほど腰が揺れる。それから、いつもより強く刺激される。爪を擦り付けるように押しつぶされ、痛いほどだった。
「いた……あ♡」
「やめる?」
 ここで頷いたら、普段通り宝物みたいに大事に抱いてもらえることは自明だった。しかし考える前に僕は首を横に振っていた。初めて抱かれたとき、スコーピウスはぼろぼろ泣きながら優しくできないことを詫びていた。あの顔を見た時から、いつか彼のしたいことを全部叶えたいと思っていた。あの瞬間に全て叶えてあげたかったのに、あの時の僕は体調が悪くて、意識も朦朧としていた。体調が戻ってから、何度も本心を聞き出そうと試みたが、いつもうまくいかなかった。しかし今日はなんだかうまくいきそうだ。僕が首を振るのを見たスコーピウスは息を吐いた。
「うん、わかった。僕はね、君のおねだりに弱い」
 知ってる、と答える前に乳首を捻りあげられた。痛くて悲鳴を上げそうになるが、すんでのところで堪える。僕の堪えている顔を見下ろしたスコーピウスは、うっとりと微笑む。彼が興奮しているのだとわかってぞくぞくする。
「かわいい。きもちいい?」
「う、うん……
 こくりと頷いてみると、なんだか本当にそんな気分になってくる。ゆらゆらと誘うように腰が揺れてしまうのを自覚する。スコーピウスにももちろんその姿がよく見えているに違いない。恥ずかしくてたまらないのに見てほしくて仕方ない。相反する感情に戸惑いながら、勝手に潤んだ瞳でスコーピウスを見上げた。薄青色の瞳と確かに目が合った。
「アルバス、僕のものになって」
 とっくに君のものだ、と返すつもりで開いた口に口付けられる。舌がぬるりと侵入してきた。深いキスをされながら乳首を攻められるのは初めてだった。二つの快感を処理しきれずに、頭の中が快感だけでいっぱいになる。口の中の性感帯を刺激されながら、ふっくらと丸く勃ちあがって存在を主張する乳首をかりかり引っ掻かれ、親指と人差し指で摘み上げられ、くいっと捻られる。びくん、と身体が跳ねた。次の瞬間、全身から力が抜けた。
「い、いっちゃった……
 思ったより弱々しい声が出てしまう。身体の力が抜けた僕をスコーピウスはじっと見下ろしていた。彼の視線が恥ずかしくてたまらない。そう思うといつも彼の熱を受け止めている身体の奥が甘く疼き、ぶるりと腰が揺れた。スコーピウスは形容しがたい表情を浮かべている。何かを堪えているような、葛藤しているような表情だった。彼の考えていることが知りたくて、そっと手を伸ばす。
「スコーピウス」
「う、うん」
 伸ばした手は優しくシーツに押し付けられて、逆にスコーピウスの手が伸びてくる。優しく頬を撫でられながら、淡い青色の瞳を至近距離でじっと見つめた。
「もしかして君すごく興奮してる?」
「え?」
「見たことない顔してるから」
 そう指摘して微笑む。スコーピウスのことなら世界で一番理解している自信が僕にはあった。多分彼自身よりも。彼が心にしまって僕には決して見せてくれない部分があることはなんとなく勘づいているけれど、それを差し引いたってこんなに彼を理解している人物は僕をおいて他にいるわけがないのだ。
「してる。あのね、どうしよう。僕興奮しすぎてるみたい」
 彼は困惑していた。優しく抱きしめて、大丈夫だと言いたかった。そうするべきだとわかっていた。それなのに、僕の身体は彼の言葉で興奮しすぎてしまって、甘く痺れて動けなかった。やがてスコーピウスは深く息を吐いて、それから微笑んだ。
「脱がせてあげるね。力抜いてて?」
 スコーピウスに言われたまま力を抜いて待っていると、ベルトのバックルを外され、スラックスと下着を脱がされた。僕が身につけているものはボタンが全部外れたシャツ一枚だ。先程達してしまったばかりなのに、期待のあまりまた勃ちあがりかけている性器も丸見えだった。スコーピウスはいつも潤滑油として使っているクリームを取り出すと、指先にたっぷりと塗した。それから優しく穴に指先を近づける。
「いれるね?」
「うん」
 指が挿入される異物感に耐えながら、彼の顔をじっと見つめる。彼の指の長さと僕の指の長さはそう変わらないはずなのに、彼の指が挿入されたときにだけ僕ははっきり後孔で快感を得ることができた。とんとん、と人差し指でノックされ、思わず身を捩る。
「あ♡ あっ♡」
「僕の頭の中の君はね、」
 どうして今しゃべるんだ、と思う。でも彼が滅多に見せてくれない心の内側を見せてくれようとしている。快感に流されすぎないように気をつけながら、彼の口の動きを追う。
「君は、大抵痛そうな顔をしてる。君の苦しそうな顔を見ると興奮するなんて僕は多分最低なんだけど」
「う、あ♡」
 指の数が増やされる。まるでセックスをしているときのように指でピストンされ、気持ちいいところを刺激されると彼とまともに会話をするなんて不可能だった。考えるのは、全部終わった後の自分に任せよう、と半分思考を放棄する。
「できれば泣かないでほしい。でも、泣くなら僕に痛いことされて泣かされてほしい」
「んん♡」
「アルバスの、我慢してる顔、かわいくて大好き。想像してると勃っちゃうから、ひとりでするときは君にいっぱい我慢させてる。本物の君にさせるわけにいかないから」
「あっ♡」
「だって大好きだから、嫌われたくない……
 スコーピウスはそう言って、ちゅっちゅっと僕の両頬に唇を落とした。何を言われているのかあんまりわからないけれど、ふわふわの唇が気持ち良くて、ふにゃふにゃと笑い返す。
「スコーピウス、僕もだいすき♡」
 多分口説き文句を言われていたはずだ、と思ってそう口にすると、スコーピウスは一瞬動揺したようだったが、今度は唇にキスしてくれたから多分僕の言葉は間違っていなかったのだと思う。ぺろ、と唇を舐められ、口を開いて彼の舌を招き入れるとちゅ、ちゅぷ、と音を立てて舌を吸われる。同時に後孔に受け入れた指も激しくピストンするように抜き差しされ、ばらばらに動かされて拡張される。彼に触れられているところ全てが気持ち良くてたまらない。
「すこー、ぴうす」
 キスの合間に彼の名前を呼ぶと、優しく視線を向けてくれた。
「いれて?」
「もちろん」
 ねだるとスコーピウスは頷いて、僕の後孔から指を引き抜いた。早く熱いもので埋めてほしくて、くぱくぱと収縮してしまう。
「アルバスのここ、動いてるね。かわいい……
「んんっ」
「興奮してるの?」
 羞恥で目元が熱くなる。いったん止めようと力を入れると、ますますくぱくぱと動いてしまう。自分の身体なのにまったく思い通りにならない。潤滑油として使ったクリームなのかさっき僕が出した精液なのか、白いものが穴の周りに垂れているし、スコーピウスとセックスするようになってから穴が妙にふっくらするようになった。真っ赤に熟れてスコーピウスのことを誘っているみたいに見える。それをじっくりと見つめられ、僕の性器はわかりやすく張り詰めた。
「アルバスって、もしかしてちょっとだけマゾヒストなのかな?」
「そうだったら、もう抱きたくない?」
「そんなことないよ。君がマゾヒストだったら、って妄想して抜いたこともあるし」
 スコーピウスは優しく微笑んで、ひくつく穴を見下ろしながら自分の性器を擦って勃たせた。大きさは僕のとそう変わらないはずなのに、なんだか大きく見えて堪らない。
「じゃあそれ、君のお気に入りの妄想の一つ?」
「そうだね。かなり気に入ってる。でも、今の君の方が興奮する」
 硬い性器を、解されたばかりの柔らかい穴に押し当てられる。期待のあまり全身が震えた。
「アルバス、大好きだよ。入れるね?」
 うなずくと、求めていた熱が身体の中に入ってくる。いつもなら馴染ませるように抱きしめたまましばらく動いてくれないのに、奥まで押し込んだスコーピウスは余裕なさそうな表情を浮かべ、僕の腰を押さえつけてピストンし始めた。遠慮のないピストンは痛いはずなのに突かれたところから蕩けていくようだった。スコーピウスの首の後ろに手を回して抱きつくようにしなければ振り落とされてしまいそうだ。
「あ♡ あっ♡ んん♡」
「好き♡ アルバス♡ かわいい♡」
 抱きついたせいで耳元に声が直接流れてくるようだった。興奮したスコーピウスの熱い吐息がかかって、きゅうっと後孔を締め付けてしまう。
「あ♡ んんっ♡」
「気持ちいい……
 スコーピウスが僕の身体に夢中になってくれるのが嬉しくて、絶対に離したくなくて、スコーピウスをどうやったらもっと喜ばせられるのか考えたいのに、頭はすっかり熱を持ってしまって全然だめだった。しがみついていたはずの両腕もいつのまにかシーツに投げ出されて、気持ちいいことしか考えられなくなる。
「スコーピウスがしたいこと、ぜんぶしていいよ♡」
 今の僕の頭ではそれが限界だった。思考を放棄した発言だったのに、スコーピウスは嬉しそうに笑って、僕の膝裏を持ち上げた。同時に、僕の肩口に唇を寄せる。ちゅ、ちゅ、とキスされてくすぐったいなと思った次の瞬間、ぢゅっと吸い付かれる。痕を残されたのだ、とわかった瞬間達してしまった。彼が見せる独占欲が愛おしくて堪らなかった。精液を飛ばしながらスコーピウスに揺さぶられている僕を、彼はうっとりと見下ろしていた。



 翌朝僕の隣にいたのは布の塊と化したスコーピウスだった。布団の端からかろうじてきらきらのプラチナブロンドが数本見えていた。
「スコーピウス? 起きてるの?」
「寝てる。永遠に寝ることにした。起こさないでほしい」
「ウーン、その気持ちはわかるけど」
 叶うならずっと布団の中で過ごしたい、という気持ちには同意だった。しかしスコーピウスの声は妙に固かった。
「わからない。君にはわかることはない。僕は、落ち込んでる」
 やっぱりそうか、とため息を吐く。視認できる範囲だけで僕の身体には鬱血痕がゆうに十箇所はあった。なかには噛み跡も混ざっている。どこからが痛くてどこまでが気持ちいいのか、正直途中から判らなくなっていた。
「僕はいい気分だけどな」
「いい気分だって?!」
 威勢のいい声が布に阻まれてややくぐもって聞こえた。元気なのかそうでないのか、顔が見えないままだと判断に困る。
「ねえ、風邪引いて弱ってる僕の顔に思いっきりかけた時と、どっちが気持ちよかった?」
「そんなこと聞かないでよ……
 とたんにしおしおと萎れた声が聞こえてくる。どうやらスコーピウスは本当に落ち込んでいるようだったからこれ以上追い込むようなことを言うのはやめよう、と思ってベッドから起き上がる。結局僕と共に昨日の夕飯の機会を逃してしまった彼のために、パンでももらってきてあげようと思った。ベッドから出る少し前に、小さい声が聞こえてきた。
「どっちも……
 本当にしょうがない恋人だ。そう思って僕の口角は上がる。彼の相手ができるのはこの世に僕をおいて他には絶対にいないと確信して、僕は機嫌良く微笑んだ。