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koto
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さめしし☔🦁
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お披楽喜
しょくさい2でリクエストいただいたさめししSSになります!去年のしょくさいで展示した
「The eve of the big day」
のその後のお話です
「っとに、テメーはよぉっ!!」
後ろ手でドアを閉めるなり、今の今まで堪えていたらしい獅子神が堰を切って声を上げる。
明らかに取り乱している獅子神に対し、村雨はといえば特に動じることなくタキシードの首元を寛げ始めた。終宴後の控え室としてはおおよそ似つかわしくない雰囲気にも思えるものの、一部の人間からすればそれは見慣れた光景でもあった。事実、声を荒げた獅子神が顔を赤くしてるのは怒りとは別の原因で、もちろん村雨もそれは承知の上だった。
前夜、日付が変わっていたので正確に言えば当日のこと。ケンカとも呼べないコミュニケーション不足からの擦れ違いは、友人の力を多少借りつつもお互いの考えを言葉にして対話することで解消された。少なくとも、獅子神はそう思っていた。
披露パーティーの準備期間に小さく積もっていったわだかまりや無自覚の寂しさからくる苛立ちは獅子神からきれいさっぱりと清算されている。村雨もまた、明け方より少しだけ前には無事帰路に着き、午前いっぱい泥のように眠ったお陰かここ最近の寝不足と疲労から回復しパーティー本番に臨むことに成功していた。
獅子神が念入りに準備を重ねたパーティーは、獅子神の心配を吹き飛ばすように参加者の笑顔に溢れたものとなっていた。少し離れたテーブルから「美味しい!」と上がった感嘆の声が耳に届いた時は正直、してやったり、という気持ちになったし、そしてそんな自分に隣の男が多少呆れているのも獅子神は分かっていた。
本来であれば宴の間に運ばれてきた食事は手をつける暇が無いので、後ほど控え室に同内容のメニューが運ばれてくるサービスとなっているのだが村雨の皿に視線をやれば八割程の確率でそれらは空っぽになっていた。その様子に今度は獅子神も呆れたが、この場を楽しんでいるのなら、まあいいのかと思い直す。そうして、ふと、先程自分に呆れていた村雨も同じような気持ちだったのかと思い至り、なんだか可笑しかった。
「どうした?」
「いや、今初めてオマエと似たとこあんのかなって思って、ちょっとおもしろくなった」
「なるほど。共に過ごす時間が増えると似てくる現象は事実あるからな。これからますます似てくる可能性もある」
そんな言葉に自分のような言動を取る村雨を想像し、獅子神は思わず吹き出してしまう。
「あー、なんか2人ともいちゃついてる」
「今日は衆人環視でいちゃつくほど喜ばれる日だからな」
聞き覚えがあり過ぎる声に意識を向ければ、知っている顔がいつもとは少し違う他所行きの格好をして目の前に立っている。今更常識云々を求めてもいないが、なかなかに個性的な出で立ちは、それでも二人の並よりだいぶ上の容姿に合っていた。
もう1人はどうしたかと獅子神が割り当てたテーブルに視線を向けると、ワイン片手に機嫌良く独自の教えを説いている真っ最中で、その傍らには捕まったらしい長髪の担当行員がいた。おそらく、この二人がヒートアップした神に身代わりを捧げ置いていったのだろうと獅子神は推察する。迷える者を導くという意味では相手がコイツらよりは担当の方がよっぽど適任か、などとも思えてきた。
会場を見渡せば、それぞれが少しだけ浮ついた雰囲気の中で会話や食事にと口を動かしている。その会話は自分たちには関係のない内容がほとんどだったりするだろうが、それでもこうして集まった縁ある人々が楽しそうに過ごす光景を眺められるのが獅子神には嬉しかった。
パーティーは恙なく終宴を迎えようとしていた。歓談中のゲストへおひらきの案内が司会者から告げられる頃合いだった。高砂席に担当スタッフが近づいてくるのが見え、そろそろだなと獅子神が居住まいを正した瞬間。不意に会場の照明が落とされ、司会者にスポットライトが当てられた。こんな演出は聞いていない。獅子神は打ち合わせの内容を思い返すも、特にここで余興が入る予定もなかった。
一身に光を浴びた司会者に会場の視線は集中する。立ち歩いていたゲストも何かが起こる前兆を感じ取り、足早に自席へと戻っていく。ほとんどのゲストが席に収まったのを確認した上で、司会者は口を開いた。
「それではここで、村雨礼二さんより獅子神敬一さんへお手紙があります」
「はぁっ⁈」
薄暗い中、隣に座る男へ思いっきり顔を向ければ、何食わぬ顔で立ち上がる。もちろん、獅子神は何も知らない。
村雨が席を離れ歩き始めるとともに、もう一つのスポットライトが村雨を照らし、それはいつの間にか用意されたマイクスタンドのもとへと誘導するように動いていく。会場内の期待に満ちた視線は村雨に釘付けで、近くを通り過ぎたテーブルに光が当たり、着席している面々が思い思いの表情を浮かべているのが分かる。
ほぼ全てのゲストが村雨を注視しているというのに、いつもの身内のテーブルを通り過ぎた時には、そこに座っていた男共がニヤニヤと自分を見ているのが分かった。特に真経津に至っては「ねえ、いまどんな気分?」という声が聞こえてきそうな表情をしている。
オマエらにとったら、さぞかし愉快なエンターテインメントだろうよ、と恨みがましく睨みつけてやるものの、そんなものは連中を喜ばせることにしかならないのは獅子神も分かっていた。
村雨がマイクスタンドの位置に到着すると司会者に当たっていたライトが消え、その矛先が獅子神へと向けられる。一身に浴びるライトは熱を帯びているのか顔が熱い。逃れられない状況に獅子神は傍らに片膝を着きアテンドをするスタッフに促されるまま椅子から立ち上がる。テーブルを挟んで村雨と対峙している状態だ。果たして村雨の口から何が飛び出してくるのか。全く予想がつかないまま、どれだけポーカーフェイスが保てるものかを危惧しつつそっと身構えた。
今思い返しても顔が熱くなり、獅子神は控え室に置かれていた水差しからグラスに水をなみなみ注ぐと、それを一気に飲み干す。村雨がゲストの前で読み上げた手紙は、ごくごく普通の伴侶に対する感謝やどれだけ好意を抱いているか、どんな未来を望んでいるかという内容が綴られていた。
物凄く突飛な内容ではないものの、そこから独占欲の強さがチラチラと滲む度に拍手や囃し立てる声が上がった。そんじょそこらの男ではなく、あの村雨礼二が、という点ではゲストも貴重なものを見ている印象が強かったのだろう。終演後にゲストを見送る段では、向けられる視線や掛けられる声に獅子神の居たたまれなさもひとしおだった。
「なにをそんなに怒っている?」
「怒ってるわけじゃねぇけどよ!! あんな、あんな急にオマエ!」
「サプライズを事前に知らせてどうする」
「そりゃそうだけど
……
! 忙しかったのにオマエあんなのいつ計画したんだよ」
食事以外はさして準備に身が入っていなかったように見えた恋人が、まさかこんなサプライズを用意していたなんて思いもよらず獅子神はしてやられた感がどうしても拭えない。
「今日だな」
「はぁっ!? 今日?」
「帰宅前、叶から昨夜の釈明のメッセージが入っていた。万が一、今日のパーティーで門前払いでもされたら堪らんとでも思ったのだろう」
村雨の口から出てきた名前に昨夜のやりとりが獅子神の脳裏を過ぎる。自分から電話したものの、叶も災難だったなとは思う。
「
……
で?」
「詫びとしてなのかどうかは知らんが、いくつかサプライズ案を提示してきた。いずれもあまり気乗りはしなかったが、サプライズという案自体は悪くないと思ったわけだ」
「それで、アレってことかよ
…
」
「私の目的にもあなたの目的にも適うだろう?」
村雨の言葉に昨夜のやり取りを思い返す。ゲストに楽しんで欲しいと奔走していた獅子神に対して、村雨の目的は自分たちの仲を周囲の人間に見せつける、というもので、それが準備期間の擦れ違いに至ったわけだが。
「オマエの目的はまあそうだけど、俺の目的って」
「料理もスタッフの質も良かったが今日のパーティーで大半のゲストが一番楽しんでいた催しはあれだったと思うが?」
「
……
あ~~~」
獅子神は村雨が言わんとしていることを理解し声を上げる。その理論で行けば、自覚した上で見世物になっていたというわけだ。
「ほんっっと、オマエはさー」
「なんだ? 言いたいことがあるならはっきり言うといい」
きちんと考えを口にして擦り合わせていくことは、今後一緒に過ごしていく上で必要なことだと確かに昨夜話したばかりだ。
「っとに
……
オメー、俺のこと好き過ぎじゃねぇか?」
パーティー後の高揚感に背を押され、獅子神は感じたままを口にする。少し自惚れが入っているかなという気持ちが頭をもたげなくもなかったが今は無視した。
「
……
フッ、フフッ、今ようやく分かったのかマヌケめ」
何がツボに入ったのか可笑しそうに笑う村雨を眺め、間違ってなかったらしいことは理解できた。
村雨につられて笑いながら、ここから先もこんな予期せぬサプライズに塗れるんだろうなと思い馳せる。多種多様なサプライズやアクシデントを乗り越えつつ、なんだかんだ好いて好かれてを思い知らされる日々が続く予感がしていた。
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マシュマロ
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