はとこ
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気持ちいいこと、しよう?

お付き合いしてる翔藍。あいちゃんが「お誘い」する話。#翔藍春待ちチャレンジ

……ただいま」
 寝室のドアをそっと開けて、オレは小声でそう告げた。
 すみれ色の寝具に身を包んだダブルベッドの左端で、藍が静かに横たわっていた。その首筋からは白い電源コードが出ていて、ベッド下のコンセントに刺さっている。
 背負っていたリュックを床に置いて、オレがベッドに腰掛けると、藍がこっちに顔を向ける形で寝返りを打った。
 オレと恋人同士になってから、博士は藍にいろいろな機能をつけている。スリープ時限定発動の擬似寝返り機能もそのひとつだ。オレが近づいたり寝返りを打ったりすると発動する――まあ、ぶっちゃけあまり必要ない機能なんだが、藍がより人間らしく、何より可愛く見えるからオレは気に入っている。
 にしても、珍しいな。藍がこんなに早い時間からスリープしてるなんて。リビングに置いてあった書き置きには「寝室にいる」くらいしか書いてなかったから理由は分からねえけど……今日のスケジュールがキツかったとか? 確かに藍は売れっ子だけど、早々にスリープに入らなきゃいけねえほど無茶なスケジュールは組まないだろうし……急に不具合があったなら、オレに早めに連絡するだろうし、そもそもここじゃなくて博士のラボに行くだろうしな。
 じゃあ、大したことじゃないのか。まあ、それならいいけどさ。
 あどけない寝顔を晒す藍をじっと見つめる。
 オレが寝るときに一緒にスリープするか、オレより後にスリープすることの多い藍の寝顔は貴重だ。特にこうして仕事から帰ってきた後に見ると、すげえ癒される。やっぱ恋人の可愛い顔は万能薬だよなあ、なんて自然に口元が緩むくらい。
 けど、どうせなら少し話をするくらいはしたかったな。今朝は藍が先に出ちまったせいであんまり話せなかったし、キスもできずじまいだったし。
 そんな寂しさから藍の頭に触れた、次の瞬間、ぱち、と白い瞼が開かれた。
「っわ!」
……おかえり、ショウ。時間通りだね」
「お、おお、ただいま……も、もしかしてオレ、スリープ解除しちまったか?」
「ううん。君の帰宅予定時間までに充電を完了するよう設定されていただけだよ」
 そう言って藍が上半身を起こして、首筋のコードを取り外す。
「こんなに早く充電なんて珍しいな。残量そんなにギリギリだったのか?」
「そうでもないよ。ただ、君が帰る前にフル充電にしておきたかっただけ。不調とか、そう言うのじゃないから安心して」
「そ、そっか。それならいいけど…………藍?」
 オレの方を向いて、ベッドの上に正座した藍にじっと見つめられる。その意図が分からず呼びかけたら、ふい、と視線を逸らされた。
「ど、どうした? なんかあったのか?」
……ううん」
「いや、ううんって感じじゃ……
 ないだろ、と言いかけたオレの唇を、藍が突然奪った。
 触れただけですぐに離れたけど、ぎこちなくこっちを見つめる藍のミントグリーンの目は少し潤んでいて、オレは思わず喉を鳴らした。
……ショウ、ボクと一緒に気持ちいいこと、しよう?」
……へ?」
「っ、一緒に、気持ちいいこと、しよう……よ」
 最後は消え入りそうな声で言った藍が俯く。
……それって、え、えっち……の、ことか?」
 告げられた「お誘い」の衝撃のせいでぎこちなく尋ねたオレに、藍がパッと顔を上げて潤んだ目でこっちを睨んだ。
「し、ショウはいつもそうやって誘う、でしょ……シてる時も、一緒がいい、一緒に気持ちよくなろうって、言う、じゃない……
「そ、そう、かもな……?」
「そうかも、じゃなくて、そうなんだよ。そう言われると、ボクは嬉しいから……だから……
「言ってくれた、のか?」
「っ、そうだよ……そのために充電をフルにしたし、明日の朝をオフにできるようにスケジュール調整もしたし……
 口調も表情もむくれてるけど、恥ずかしさの方が大きいんだろうな、眉がどんどん弱々しく下がってる。
 そんな藍を見て、オレはじわじわと込み上げてくるのを感じて、思わずふは、と笑っちまった。
「っ、ちょっと、笑わないでよ」
「ごめん。でも、すっげえ嬉しくて……それってさ、お前がオレのこと欲しくてしょうがなくて言ってくれてるって、自惚れていい?」
……うん」
 相変わらずむくれてるけど、素直に頷く藍、可愛すぎる。
 このまま押し倒しちまいてえけど、そこは藍をぎゅっと一回抱きしめることで何とか堪えた。
「分かった。じゃあ、すぐシャワー浴びてくるから」
「いいよ、そのままで」
「へっ?」
 予想外の返答に思わず藍の顔を覗き込むと、むくれた表情はどこに行ったのか、悪戯っぽく笑っていた。
「どうせもう一度浴びることになるでしょ。非効率だし、何より時間がもったいないからこのままでいいよ」
「え、け、けどさ」
「ダメ。シャワーを浴びないで。ボクが冷静になる前に、早く……シて」
 吐息が触れ合うほどに顔を近づけて、とろりとミントグリーンの目を蕩けさせる恋人に、オレの余裕はあっという間に削られちまった。
 藍に許可されてもシャワーなんて浴びてられるかと、ゼロ距離になった唇を味わいながらベッドへもつれ込んだ。