梶木鮪
2024-03-28 21:49:24
1373文字
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憧れ

Twitterに投稿していたやつ。豊久夢。



梅干しにわかめ、鮭にいくらにツナマヨ。
ふりかけを混ぜてもいいし、ごま塩や刻みたくあんなんてのもアリだ。
同じ弁当箱に詰めるものは、どっちがどっちか分かるように海苔を巻くべきか。
時間があったら炊き込みご飯も作ったんだけどなぁ、と少し残念がりながら、いいやこれでも美味しいと思い直してご飯にふりかけを振る。
食いしん坊な彼らのことだから、きっと何でも美味しく食べてくれるはず。
お花見に行くと言った面子を思い出しながら炊き立てのご飯を混ぜていると、ふと隣でおにぎりを握っていた彼が呟いた。

「むう、難しか」
「あー……豊久さん、大きいですもんね、おてて」

むっと口を尖らせた彼の手の中には、まんまるの塊が一つ。
皿の上に置かれた彼が握った他のおにぎりたちも、皆まるまると肥えている。
私よりもおててが大きいですから、握ったのが大きくなっちゃうのは仕方がないですよ。
自分が握ったものより一回り大きなおにぎりをまじまじと見つめて、そう彼に声をかけた。
コンビニなどで見かける三角形のものとは違う、お米がぎゅうぎゅうに詰まった食べ応え抜群の豊久さん手製のおにぎり。
本当は三角形に握りたいのだと話していた彼には悪いが、この大きなおにぎりは男性陣に好評だったりする。

「食べてもすぐに無くならないし、中の具がごろっとしてるのでお得感があっていいそうですよ。与一くんと直くんが言ってました」
「よう食う若者ばっかいじゃな」

苦笑する豊久さんに、美味しいって言ってもらえるならいいじゃないですかと言って笑う。
私はおにぎりを三角形に握れるけれど、彼が握ったもののように熱狂的なファンがいるというわけじゃない。
三角形か丸型かは所詮形だけの話でしかなく、一番大事なのは味だ。
「私も豊久さんみたいに、美味しいおにぎりが握れたらよかったのにな」と羨ましげに息を吐くと、彼は私が握った三角形のおにぎりを見てこう言った。

「そう容易う、かつ手早よ正確に握りつつ言われてん、説得力が無かぞ」

それに、狙ろてそうしたのと、でけんじそなったのでは別じゃろ。
お皿の上にピシッと並んだ三角形を見て、そう少々不貞腐れる彼に対し、お互い無い物ねだりですねと言ってへらりと笑った。
彼が三角形のおにぎりに憧れるように、私も彼のまんまるのおにぎりが好きだ。
それに、彼の丸いおにぎりでしかできないこともあるのも事実だし。
ふりかけを混ぜたご飯を全部使い切ったことを確認して、彼に一言断ってから用意しておいたものを彼の握ったおにぎりにペタペタと貼り付けた。

「ほら、こういうのは豊久さんのおにぎりでしかできませんよ」

そう言って彼に見せたのは、まんまるのそれに五角形に切った海苔を貼って、サッカーボールに見立てたおにぎりだ。
小さい頃に友達がこういうおにぎり持ってきていたのを見て、すごく羨ましかったんです。
よく子供っぽいって言われるんですが、いつか絶対作ってやろうと思ってて、とはにかみながら伝えると、豊久さんはようやく満足そうに笑った。

「お前が喜んでくるっのなら、こん丸かおにぎりも悪る無かもしれんな」
「ふふ、そうですね」

他の子たちも、絶対喜んでくれますよ。
三角形と丸型のおにぎりを弁当箱に詰め込みながら、彼と一緒にくすくすと笑った。