梶間
2024-03-28 14:13:09
2287文字
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何故彼は味を知りたがったのか

ライオスはどうして魔物の味が知りたいと思ったのかを聞くカブルー。会話文。過去捏造山盛り。個人的メモ

「実際のところ、どうしてライオスはそんなに魔物が好きなんですか?」
……かっこいいから?」
「なにか最初に好きになるきっかけみたいなものあるでしょう」
「そう言われるとなんだったかな
「何歳ぐらいの頃から好きでした?」
「そうだな七、八いや、九、十の頃だったっけ?」
「なるほど、結構幼い頃から好きだったと」
「確かそれくらいの頃に教会で本を見せてもらって竜の挿絵がある昔話だったんだ。それから竜が好きになって竜に関する本を片っ端から読んでたな」
「竜の財宝を狙う昔話?」
「そうそう、確かそんな話。どこにでもあるのな、あの話」
「エルフの都にもありました、そういう昔話の本」
「へー、いつかそっちのも読んでみたいな」
「今度送ってもらえないか聞いてみます。人気があったんで子どもたちの間でいつも回し読みされてましたよ」
「いいなあ。あの時は共有するような友達も村には居なくてファリンと二人で読んでたよ」
「同い年の子どもは他にいなかったんですか?」
「俺がもっと小さい頃に流行病と不作が続いた年があって、俺以外の同年代の子どもが殆ど亡くなってしまったそうなんだ。僅かに生き残った他の子も、口減らしを兼ねて近隣の村へ養子や奉公に出されたりして、同い年の子どもは誰も居なくなった。うちは一応村長だったから、貯えがあったおかげでなんとか生き延びたらしい。父も手を尽くしたらしいが、結果としては村長の家の子どもだけ親元に残った訳だからな。多少の禍根は残ったんだろう、小さい頃は村の大人が余所余所しくて怖かった」
(性格の問題じゃなかったか)
「小さい頃はとにかく遊ぶ相手がいなくてなあ。家の犬たちだけが遊び相手だったよ。自分より大きい子は家の手伝いで忙しいし、小さい子とは遊びが合わなくなってたし」
(それはあんたの気質のせいでは)
「ファリンが一緒に遊べるようになってからは楽しかったなあ、一緒に教会で本を読んだり、野山を駆け回って虫を探したりして。トカゲを捕まえては竜に似てるところを探そうとしたり。虫を見つけるのは何故かファリンの方がうまくていつも先を越されてた」
「あんた大声で近づきそうだから逃げられたのでは」
そうかもしれない。遊び相手はファリンと犬と、野山の昆虫とか魚だったから。俺には人間より親しんだのが人間以外だったから魔物が好きなのかも」
(唯一の人間の遊び相手が身内ならこうもなるか)
「そのうちに教会の本も読み尽くしてしまって。蔵書は竜の昔話と、あとは関係ない本に少しだけ魔物に関することが書いてあるくらいだったから新しい本が欲しくて。誕生日に親に新しい本をねだったんだ」
「それが迷宮グルメガイド?」
「そうそう。始めてあの本を読んだ衝撃は今でも覚えてる。名前と簡潔な姿形の文章だけ記載されていた本と違って、魔物の姿が生き生きと挿絵で描かれているんだから。どんなところに住んでいて、何を食べて、どう生きているのか。初めて詳しく生態を知れて嬉しかったなあ。そうだ、空想上の生物じゃなくて、彼らは本当に生きているんだ、と知れたのが嬉しかったんだ」
「思い出深い一冊ってことですか」
「そうなんだよ。味についても一緒に書いてあったから気になって気になって。野山のキノコやトカゲを観察して試しに焼いて食べてみたり。牛や山羊のミルクを飲んだときはミノタウロスの乳も同じ味なのか考えたり。動物の肉を食べた時は本当に魔物もこんなに美味しいのか、と考えたり。でもさすがに犬は家族みたいなものだから食べたいとは思わなかったな」
「その辺の理性が残っててなによりです」
「一応哺乳類の屠殺は重大だって分かってるから。牛も馬もそうそうつぶせないだろ。つぶさないといけないときに立ち会ったことはあるけど一緒に遊んでくれた牛や馬がいなくなる瞬間は悲しかったな
(牛や馬が友達なのかそして友達がいなくなってその感覚か)
「それで魔物の味が知りたいというかグルメガイドに書いてあることは本当かどうか知りたい、という気持ちが最初にあったのかもしれない。村を出て、兵隊になった時にこの本の話を同期にしたら散々笑われて子どもっぽいとバカにされて迷宮グルメガイドを一度ボロボロにされたんだ。変な本だって。あの時は悲しかったな当時は魔物の味が知りたいことがどれだけおかしいことか知らなかったんだ。とても信じてもらえないだろうけど」
あなたらしいなって、思いますよ」
「君がその時隣にいてくれたら心強かったと思うよ」
「最初は俺も殴るかもしれませんよ?」
「それは悲しいからできれば友好的でいてほしい」
「じゃあその時会えたらちゃんと俺のこと一度で覚えてくださいね。その環境でも味が知りたいという気持ちは変わらなかったんですね」
「そうだな、その時はただただ悲しかった気がするんだけど、大切な本だったから修復と写本をして、意地になったのかもしれない。子ども騙しを信じてる常識知らずと言われても、真実を知らないのはそっちだろうって。この場に魔物を食べたやつはいるか、いないだろうって。本当に食べたこともないのに馬鹿にする資格はないんじゃないかって。軍隊の規律も肌に合わないから抜け出したんだ」
「脱走兵になるくらいならそれをその時に言えばよかったのに」
「今思えば本当にそうだな。今なら脱走する前にもっとやれることもあったな、とは思うよ。当時はとにかくそこから抜け出して本に書いてあることが本当だったって、証明してやらないとって思ってたんだ」