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梶木鮪
2024-03-28 01:35:13
1368文字
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忠犬、もしくは子供
Twitterに画像であげていたやつ。キッド夢、現パロ。
ホラー映画は怖くて見られないし、そういった類のものが出てくる話を読むのも苦手だ。
とうに成人しているくせに何をと笑われるかもしれないが、しかし得意でないものの一つや二つくらい人間としてあって当然だろう。
コーヒーの飲めない大人だっているし、高い場所が苦手な大人だっている。
それに、私に関しては幼少期に見た映画にトラウマが
……
と考えたところで、ひたりと頬に触れられた。
その、ひんやりとした感触にピャッと飛び上がって、そのままずるずると床にへたり込んだ。
電気の点いていない夜の廊下、トイレに行こうと起きたその帰りに、大男に頬を撫でられる女性。
ここまで書けばまるでホラー映画のワンシーンのようだが、その大男は実は私の恋人だ。
「あの、キッドさん、驚かさないでくれますか
……
?」
「ん
……
? んー
……
」
バクバクと早鐘を打つ心臓を抑えながら、相手にそう震える声で頼む。
すると、相手は不明瞭な返事をいくつか返した後、しゃがんで私の肩に頭を預けてきた。
そのまま、にゃむにゃむと分からない言語で何かを言い始めたので、気分でも悪いのかと思い相手の背中をさすった。
髭を生やしているため大人びた印象の彼だが、少々理解し難い行動をする時がある。
彼の相棒だったら何か分かるのかなと考えていると、聞き取れるギリギリの声量で彼が何か言っているのが聞こえた。
ちくちくと肌に刺さる髭の感触が何ともこそばゆいが、とりあえず耳を傾けてみる。
「急に、いなくなんなよ
……
心配、する、だろ
……
」
「はい? えーと、トイレに起きただけですが
……
」
「バッカじゃねーの
……
あんたがいねーと不安で
……
俺
……
寝れな
……
」
段々と間伸びしていく相手の声と、どんどん重たくなっていく相手の体。
どうやら本当に眠いようだと察して、慌てて相手を起こして寝室まで手を引いて誘導した。
彼に廊下で寝られては、彼より小さい私では到底運べない。
もし、仮にあそこで寝られてしまったら、最悪布団を廊下に敷いて夜を明かす羽目になってしまう。
私はともかく、体の大きな彼では大変だろうと考え、彼の体をベッドの上に押し倒した。
ごろん、と素直に転がった体に安堵しながら、その体に毛布をかけてあげた。
「まったく、何も廊下で待ってなくたっていいのに」
ハチ公じゃないんですから、と呆れ混じりに言うと、彼は半分微睡んだ青色の瞳でこちらを見た。
私の発言の意味を問うような、もしくは非難するようなジトッとした視線に、思わず笑ってしまう。
どうやら私の恋人は、見かけによらず存外子供っぽいところのある人らしい。
意外な一面を知れたことによる喜びでぽかぽかと温かくなった心臓を自覚しながら、彼の横に私も寝転がった。
すぐに背中に回された腕にまた笑いながら、相手に優しく言い聞かせるように声を発する。
「そんなに不安がらなくても、どこにも行きませんよ。ちゃんと、キッドさんの側にいますから」
「おー
……
」
相手の体をぎゅっと抱きしめながら言うと、相手は安心したように目を閉じた。
そのまま、よしよしと彼の頭を撫でていると穏やかな寝息が聞こえ始め、背中に回されていた腕から力が抜けた。
おやすみなさい、また明日。
今度こそ安心して眠れた様子の彼に微笑んで、私もまた瞼を閉じた。
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