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皆瀬茶太(シキゴウ全)
2024-03-25 04:44:21
3493文字
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小説
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【ザバ】大人未満は影を縫い付ける【アルブル】
25日:致命的に差し込み場所間違えてたから数行入れ替えてます。
さわマル合わせの小話。
冒頭の「セックスだ」にザバ坊ちゃんの坊ちゃんたるおこちゃまさを感じて欲しい。
もっと甘くてラブラブな坊ちゃん誘い受けの可愛い小話にするはずだったのに執事が酷い。
どうしてこうなった。でも嫌いじゃないから書き手は性癖への業が深い。
アルフレッドと寝た。セックスだ。
初めての時から数えて、片手程度には続いている。
そこで一つ気づいたことがある。
「お前、いつ寝てるんだ」
「あなたが言いますか、ブルース。マスター・ウェイン」
最後の言葉がやけに刺々しい。聞くタイミングを間違えた。
ここで、『俺は今から寝る』というのは正しい返答ではないんだろう。
寝る前に食べろと呼び止められた朝。普通は寝る前は食べるなと言いそうだがと思いつつ、素直に座った。
メニューはスムージーと果物の盛り合わせだったので、食べられるものだけを口にする。
俺がゆっくりと胃に食べ物を入れている間も、アルフレッドはつたない足で働く。
リュックに入れた魔法瓶の回収は、最初にしているのを知っている。
俺が夜に歩くのを止められないと悟った次の日から勝手に入っている物。彼特製のスープだ。
何を思って用意しては、空になった底を見ているのかは分からない。
「
……
このスムージー、何が入ってるんだ
……
」
「レシピを変えてみましたが、駄目ですか?」
「口当たりが
……
」
味の感想などどう伝えれば良いか分からない。違和感のままグラスを覗き込む。
今の一言だけでアルフレッドは合点がいったらしい。
「苦味が出てしまったなら葉物の入れすぎです。次は調整しますのでそれは飲んでください」
そりゃ栄養はあるだろうがなと、また覗き込む。
「そうです、栄養はあります」
「
……
」
心の声に返すな。
放置したって睨まれるだけだ。きっと、今までも聞こえていた溜息一つ。
だが席を外しては戻るたびに俺とグラスを見るのを止めろと言えなかった。
諦めて飲み干すと、満足気に頷く姿に不本意と念を込めておいた。
俺とアルフレッドは、主と執事だ。雇用主は俺の父で、今は俺になる。相続と共に付いてきたが、子供だった俺は、彼が傍にいないという考えが無かった。
執事の仕事に主と同衾が入っているかは契約次第だろう。俺は他の家を知らないが、『そんな契約はない』が大半だと思う。
実際、そんな契約をアルフレッドは結んでいない。
……
筈だ。では、何故、俺とアルフレッドはそうなったのか。
そして、セックスをしても俺たちの間には何も変化が無かった。
いや、全く無い訳じゃない。
知らない事をたくさん知った。
「ブルース、顔を」
「かお?」
不意に声をかけられ、顔を上げる。
先とは違う固い声に、どしたのかと思ったら視界がさえぎられた。すぐにアルフレッドの手だと気づく。
形程度の目隠しでも、俺と視線を合わせない目的は叶っている。
「ブルース、『まだ』それですか」
「まだ?」
「その顔を誰にも晒していませんよね」
「
……
マスクをしている」
「覆面ではないでしょう」
「それは
……
無理だ」
動く際の機能性はもちろん、デザインも嫌だ。あれで理にかなっているのだ。
それなりに正直に答えると、目元の手があっさり解かれる。
指越しに見えたアルフレッドは、俺を真っすぐと見下ろしていた。
どうして、
「どうして
……
そんな苦しそうなんだ」
知らない男の顔だった。
まだ知らない事があったのだ。
無意識に伸びる手を、アルフレッドはかわすようにして離れた。
「おやすみなさいませ、ブルース様」
わざと距離を取った決まり文句も、今までの俺であれば、アルフレッドを遠ざけた負い目もあって素直に引き下がる。
だが、目の前に知らないことがあると知ってしまった。
「アルフレッド」
男の逃げた先は、床を付く杖の音の回数ですぐにわかる。
お互いこのタワーからは出ないのだから急ぐ必要はない。場所は壁一面が本で埋め尽くされている書斎だ。
入ると、アルフレッドはウェイン産業に関する書類を広げていた。
……
わざとだな。
「ご興味が?」
「お前の事だけ
……
」
部屋に供えつけているソファに座った。丁度アルフレッドの背後になるから、最初に踏み込むにはこれぐらいが良い。
夜通し街を見張り、情報を集め、数人と闘った体が休息を訴えている。
しかも昨夜は、出かける前にこの男に抱かれていた。
「お疲れのようですよ」
「
……
お前が出す謎は、いつも難しい
……
」
互いに言いたい事だけを言う。
出来れば早く教えて欲しい。
「昨日しつこかったのも理由があるんだな
……
」
アルフレッドの肩が揺れた。
「青二才が私に房中術を仕掛けますか」
今度は俺が動揺してしまう。
「
……
使えるものは使えと言った」
「それでこのザマです。あなたは夜に居場所を見つけてしまった」
予想より返しが早かった。
夜の意味がバットマンの事なのは明白だが、それだけじゃないから男は逃げたのだ。
「アルフレッド。俺はお前に
……
身を守る術を教わった、謎解きは、その始まりだった」
やはりこの場所に座ってよかった。今度は俺が居たたまれない。
この男と寝たのも、アルフレッドにとっては指南の一つに過ぎないと分かっている。俺が主で、彼は執事で、それは生涯変わらない事実だ。
だが、俺はそれだけじゃ駄目だった。
「アルフレッド
……
俺はお前が」
「『ブルース様』」
「っ、」
とうに知られている焦がれた心を、声にして意味を持って言わない代わりにこの関係の同意を得た。
「なら
……
言わない代わりに貰った物をくれ」
片手程度の関係でも、初めて抱かれた時より綻びが出た今を逃さない。
「お前の総てを」
「とうに全てあなたの物です」
「
……
だから貰う。今お前が零した物だ」
俺は、自分の思うまま恋であると伝えれば良いと思っていた。それが失敗であり、始まりでもあった。
パズルのピースを隠してしまった男の欠片を、こうして綻びが出るたびに集めるしかなくなった。
だから、貰うのだ。
今日はアルフレッドの負けだ。
「あなたは本当に、未知への渇望に関しては情熱的だ。ブルース」
ご自分でその謎を解かずに答えを求めるのはズルですよ、と、こちらを向いた。
「答え合わせだろう
……
これは」
「そうですね」
杖がコツンと鳴り、俺に近づく。
彼がいない世界は無いのだとこの音から知り、やがて俺が夜に飛ぶのを止められない音にもなった。
いつしか、ここが俺の帰る場所だと囁くリズムとして重なった。
ソファの空いている隣に座りはしない。ベッドも終われば出て良き、俺の体を綺麗に整えたら出ていく。
そんな男がだ。
「
……
アルフレッド。お前は、俺を夜に行かせたくないくせに
……
優しく抱こうとする」
「私に皮肉を言うとは『大人』になりましたね」
そう言って片笑みを浮かべると、俺の頬を指でついた。子供の頃に嘘をついたりイタズラをした時にされたやつ。
「あなたがマスターでなければクソガキと罵っていたのに」
「言ったも同然だぞ
……
」
「私の総ての一部です。嬉しいでしょう」
そして、立っている利点を活かして額にキスをくれた。これも、子供の頃のもの。
意味が変わったぐらいは気づく。
「ブルースが子供のままであったらこうはならなかった。そういう意味ではあなたに分があります。そして子供ではないから、私が若かった時のような手段や、それ補う手段を用いたプレイをしようと、あなたが行ってしまうと知った。昨日のアレはちょっとした意趣返しです」
セーブをしただろうと付け加えたが、果たして本当だろうか。
「また、その顔です。駄目ですよブルース」
俺の頬を付いた指が、スルリと頬と顎を撫で、クイと上を向かせた。
「欲しがりの顔だ。あなたが子供のような探求心の時はまだ良いでしょう。欲を混ぜるなら本当にどこにも出せなくなる」
「
……
酷いな、アルフレッド」
それじゃあ俺は、まだお前に好きだと伝えられない。
「そうですとも。良い子ですね」
男は褒美だと良い、俺に口づける。
「確かにスムージーの青菜が多すぎました」
「ここでそれを
……
蒸し返すのか
……
」
子供扱いをするなと言いはしない。アルフレッドはクソガキに手は出しても子供を抱きはしない。
良い子に一つあげようと、寝物語のように囁く。
これが今日の最後のページらしい。
「おやすみなさい。あなたの穏やかな寝息が私への子守歌で安らぎです」
昼に似つかわしくない夜の帳を降ろす声に、実際疲労困憊の俺は抗わなかった。
いつか、欠片が揃った時の絵をお前に見せつけたい。
そうしてようやく、とうに俺もお前と同じ底に堕ちていると気づくだろう。
了
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