皆瀬茶太(シキゴウ全)
2024-03-24 23:53:23
3976文字
Public 小説
 

答え合わせ【キャス/ディン】

最終シーズン最終回ちょいバレ?バレかな???
さわマル合わせのキャス/ディン小話。
最終シーズンをオチにするのが最近のマイブーム。幸せエンド強制参加
誤字ってたらすみません。見つけたら都度直してはいます。出てくるけど

 キャスと寝た。現在進行形だから、寝ているが正しい。どっちでもいい。
 相手が天使っていうのと体が男ってこと以外は特に問題はない。
 この二点こそが大問題でもある。
 まず相手が天使なのは、ハンターを稼業にしている俺の中で重要度は下だ。天使も相当厄介だが悪魔じゃないので下の中でも、もっと下だ。
 外側が男である方が問題度は上だ。ヘテロの俺にとってはそりゃ上になる。
 とはいえ、ヤった以上はその順位も意味はない。
 成り行きだろうと、その場の流れだろうと、例え1回きりでも同意があるから意味はなくなった。
 キャスと寝た。その事実で最上級に問題なのは、1回きりじゃないことだ。
 そのせいでここ数か月、俺は世界を作り変えたい気分でいる。
 チャックめ、俺の貢献度を思えば神様特権をこういう時にちょっと俺に分けたって良いだろ。
「はあ」
 舌打ちもしたいところだが、生憎とこの賢者の家にはジャックがいる。
 『無作法が過ぎる』と、サムどころか元凶のキャスまで俺に小言をぶつけるから面倒くさい。
 それにしても面倒くさい。
 この面倒を思えば、寝た後悔に体が男だなんて些末な事に思えた。
「一番は俺がボトムなのが納得いかねぇ」
 まずい、声に出た。
 咄嗟に口に手を当てて辺りを見渡す。
 ここは俺の部屋。今はベッドのシーツを取り替えている。
 急に部屋から移動もしていない、変わらずにここは賢者の家の中だ。
 誰かの、とりわけキャスの気配も感じない。
 ホッとして手を離した。
 「子供の情操教育てこんな気を遣うもんなのか? そもそもジャックはいくつで扱えば正しいんだ?」
 ぶつぶつと愚痴を零しながら取り替えた真新しいシーツの皺を伸ばす。
 どうせすぐに寝転がるが気分の問題だ。
「そうだよ、そもそもキャスが俺と寝たのを隠さねえのは情操教育としてどうなんだ」
 古いシーツは選択するから、八つ当たりがてら適当に丸めて床にポイ。
 お前ほんと何なんだと。何度目かで言うのを諦めた。問題は、諦めた後の方がもっと面倒くさくなったこと。
 だから俺は、こうして今日二度目のシーツ交換をしている。
「あー、思い出してもムカツク。サムの野郎何が『ディーンもついに落ち着く気になったんだね』だ。落ち着くとしてもアイツじゃねえっ」
 記憶は忘れていても、1本の糸を引けばスルスルと思い出せる。
「クラウリーに関しちゃ予想の範囲内だが、笑顔が腹立ったな」

ーようディーン。天使の粘り勝ちか。浮気するならいつでもっていうのは嫌だが地獄に来て良いぞ。

「ロウィーナもまあ、あんなもん」

ーいい加減腹くくったら?事実婚なんてせず男の責任取りなさいよ。ただでさえあんた達兄弟は周りに迷惑かけてきてるんだし

「事実婚自体ねぇし、サムの責任まで俺は関係ないが魔女が一番しつこくなかったな。やっぱり天使が一番最悪だな」

ーお前がディーン・ウィンチェスターか。

「何度も何度も違う天使が同じセリフで来やがる。その度に俺のツラを見に来たなら入場料取ると言っておけっつったのに、あれは絶対言ってないな」
 シーツの後は枕カバーも変えて、形をほどよく整える。ポンと投げた気の抜けた音と、あるモーテルの記憶がつながる。
……でも1週間滞在する羽目になったモーテルの受付のばあちゃんの目は別な意味でしんどかった」

ーああ、あなたが。

「何度勘違いだって言っても無駄だった。アレボケた振りしてるだけだな」
 なんて理不尽なんだと、怒りのままベッドに寝転がる。
「一番ムカツクのは、アイツが吹聴するツラを晒してる場に俺がいないことと、否定して周る俺をはぐらかす態度だ」

ー君と恋仲になれたらと思うのは当然だ。君が私とセックスをする度に、そこを強く否定するのを聞いていない訳ではない。
 ディーン、私は選択の多くを間違えてきたが、最初から確信していることが一つある。

「『いつか君に教える時が来るのが楽しみだ』っつったけど、あいつ絶対言う氣ねぇな」
 なにせ結局答えずに、ついさっきもここから消えた。
「全く、アフターケアもなっちゃいねえ奴なんざ気まぐれ以外に無いだろうに、どいつもこいつも」
 部屋に居ても仕方がない。眠気は無いので俺は床に捨てたシーツと枕カバーを拾ってランドリーに向かった。
 どうかこれを洗濯している時にジャックに出くわしませんように。




「なんて事があったんだが、お前はやっぱり教えなかったよな。ヤリ逃げ天使」
 情操教育の件は俺じゃなくキャスに言うべきだと、死後ン十年建っても主張したい。
 当のキャスは、熱が引くのを惜しむ顔で俺を見下ろしつつ首を傾げた
 ああ、そうだよセックスしたよ。死んでも尚、俺はキャスとこんな事をしている。
「突然だなディーン。あと逃げてはいない。今も君を労わっている」
 俺の髪を優しく撫でるのは、まだ慣れない。
 くすぐったさに甘えるには喉の骨が引っ掛かったままだ。
「お前にとっちゃ突然でもお前が元凶だし、俺に取っちゃずっと腹に抱えてる理不尽だ。お前とはそんな関係じゃないて言ってる俺にお前は何て言ってきた?」
 もう死んだ身だ。どこも惜しくはない。
 死んだ先でも俺は、男の体のままの天使とセックスをし、俺の好きなように世界を移動する。
 あの答えへの執着も薄らいだが、気にはなるさ。
「ほら、教えろよ。お前にしちゃすげぇドヤ顔だったじゃねぇか」
 コツンと額を当てる。汗で張り付く髪が絡まる。
 キャスの躊躇いはわずか。
 全てが片付いた今、とうに隠す気は無くなっているのだろう。
 至近距離で見るこいつは、とても楽しそうだ。
 一つ俺の瞼にキスを落としてから、天使は一度も目をそらさず答えた。
「ディーン。君のナカに入るのは気持ちが良い」
「聞かなきゃダメかそれ」
「ああ、大事なことだ。愛している者とのセックスが格別気持ちがいいのもあるが、私は君の魂を掴んでいる。ガッチリと」
 そういえばキャスが掴んだ跡は無くなっている。キャスは、その足跡をなぞる様に二の腕を撫でてきた。
「っ、変な触り方をするな」
「その気になったら続きをすれば良い。セックスは私と君の2人でするが、君の魂の気持ちよさは私だけが知っていることだ。繋がる時、その場所に肉体のまま近づける気がして愛おしい」
 だから私は確信していた、と勿体ぶる。
 鼻をすり合わせ、唇にキスを落とす。抵抗らしい形を見せない俺の胸、心臓のあった場所に手のひらを当てた。
「何度伝えても君は自身の魂の美しさを理解しないまま生を終えた。だが、今の君なら少しは分かるはずだ。君の魂の美しさを。だから私は、君とセックスしてから以降、その瞬間を思い出しては確信していた」
 スルリと胸を撫でるので、変な気にならないようにペシッと叩いてやる。
 緩やかにその気にさせるのがうまくなりやがって。
「自分の魂なんか分かるかよ。俺らは死んだって人間だぞ、でなきゃお前とヤるのにガワはいらねえだろ」
「そうとも言える。ディーン、私は君の魂に魅入られた。君の美しさと正しさを尊び、守りたくて選択を間違えてきた。君が言葉を真摯に選んで与えてくれた許しは、この先何億と顧みても色褪せない。君の魂の根幹が揺るぎない証拠だ」
 そういえばこいつは天使だったなと、満ち足り労わりという言葉が似合う眼差しで実感する。
「君の輝きを目の当たりにしたのだ。私の請いはいつか届くと、私の恋はどんな形であれ報われる物だと、教えてくれたのは君だ。間違っていなかっただろう?」
 言えずにいなくなった事があるやつが、そんな幸福そうに秘密を零すなよ。
「愛しているディーン。いつかが今で、私は幸せだ」
「それは……続きのおねだりか?」
「そうだ」
「否定していたのは俺だけで、俺以外の奴ら全員に仕組まれた気分だってのに同意すると思ってんのか。腹黒天使め」
 決して、居たたまれない恥ずかしさを誤魔化しているわけじゃない。
 そしてヤリ逃げの次は腹黒と言われても、こいつはめげない。知ってる。
「仕組んだつもりはない。実際、君と寝たと直接的な表現もしていない。君が誰とでも良い時に、人間ではない上にヘテロの君がジミー・ノバックの体である私を選んでくれた時の喜びが漏れていただけだ」
「尚悪いから、やっぱり生きてた頃の俺かわいそう」
 くそ、ご機嫌取りのキスを頬にするな。
「君が答えろと言ったのに」
「言ったらヤるなんて言ってない」
 肌を撫でる手が気持ちいいと思ってしまうのは、条件反射じゃないぞ。
……いつか君が、私しか求めないで居てくれるのが、今の私の願いだ」
 あ、こいつ肝心な所抜けていやがった。
 「……まさか今のも確信犯か?」
 首傾げやかがった、天然か。
 これだ、俺が結局最初の一度きりにならずにズルズルと関係だけは続けていたところ。
 とうに俺の肉体は朽ち、もはやあの時を知る奴は地上にはいない。思い出事全部、土に還っているだろう。まあ、骨ぐらいはまだあるか。
 しがらみも執着も置いて、魂だけここに居る。
 俺も人外みたいな物だが、散々褒めちぎって尚こいつはどこか抜けているあたり、どこまでも天使とは境界線があるらしい。
 仕方ない、さっきの俺を見た顔に免じてやる。
「キャス」
 指でちょいちょいと手招く。
 素直に近づく野郎の頬をがっちり掴んで、どうか誰にも聞こえませんようにと額を合わせた。
「今の願い、もう叶ってる」
 キャスが口を開く前に塞いでやった。振り回されてばかりだった昔の俺が、今頃土の下で笑って骨を鳴らしてるかもな

                  了