スズ
2024-03-24 21:14:01
9953文字
Public 人狼村関連
 

shamrock

マンション0606ソロールログ。 概ねコピペです。

名前:シャムロック・ブリオングロード
性別/身長:男/178cm
年齢:23
滞在歴:3年
職業:冒険者/付与術師
装備:背負い型剣帯/剣身に竜のような紋様が刻まれた幅広の剣/時計屋の懐中時計
勲章:有
好き:読書、オムレツ
嫌い:二日酔い、喧嘩、煙草
この国に来てどうですか?:
「どこに行こうが面倒は出てくるもんだぜ? ……まー、不便は減ったが。うう、頭痛え……
#理想の姿



・プロローグ
あの子が好きになったのはあいつ。
最初から勝負はついていた。

居た堪れなくなって地元を出て、馬車で乗り合わせた旅人から異国の話を聞いた。
理想の自分になれる国があるのだと。
今にして思えば信憑性にも正確性にも欠けた情報だ。
それに自分が変わったところで彼女の隣に居られるわけじゃない。

でもさ。
なれたらいいなって、思っちゃったんだよ。

背が高くて、逞しくて、力強く引かれた眉が男前で、よく笑う。
そんな男だったなら、何か変わったかい?


お似合いだなと思ったんだ。
聡明で優しくて気立てのいいあの子と、勇敢で働き者で人懐こくて面倒見が良くて誠実なあいつ。
きっと幸せになるだろうって。
いいことだなって、確かに思ったよ。

これで諦められると思ったんだ。
隣に立てるのは、俺じゃない。俺じゃないから。俺が見られることはもう無いと知っている。
知っているのに、鏡に映る自分は何を求めているのだろう。

降ってきたこの三つ葉のチャームに、何を望んでいるのだろう。


・1日目
あいつみたいな見た目で、あいつみたいに笑ってみた。
あいつみたいに剣を握って、あいつみたいに走り回ってみた。
真似てみてもあいつにはなれそうにない。

弱い理想と言われたらそれまで。
素の自分を捨てて冒険者をしてみても三流で、人の目はまっすぐ見られないし、両目を晒すことすら怖いし、見栄を張るのが精々だ。

3年経って、まだこんな事をしている。
あの子はもう子供にも恵まれただろうか。
あいつはより一層の美丈夫になっているに違いない。
自分だけが、過去に立ち尽くしたまま。

やがて星月が重なり、この国の一大行事に参加する資格を得た。
勝者は理想の姿を一生叶える星の欠片が与えられ、敗北者は本当の姿を国中に知らされる。

丁度いい。もうやめにしよう。
どうせ勝てないだろう、そう思った。
ここで負けて理想を引き剥がされれば、これ以上あの子の好きなあいつを貶めることもない。




けれどもし、もしも。
勝って、あいつのようになれたなら?

──意地汚い期待は、未だ胸の奥に巣食っている。


・2日目
遊戯の幕が開く。
結果的に負けるとしても、変な顰蹙は買いたくなかった。
どうやら自分には協力が許されているようだし、勝ち自体は目指しても良い──のだろうか。

遊戯が進む。
無邪気に、悪趣味に披露されるプエラリアという少女の正体が、この遊戯の本質を物語る。
これは。
他者を蹴落とし、真実を暴き、理想を奪い合う戦場だ。


☘︎


もしも勝って、俺がこの姿を得られたとして、今更なにが出来るだろう。

本物のあいつ────
ロック・ファーガスと偽物のロックSham-Rock
どんなに見た目が近くたって別の人間だ。

あいつが居なくなれば良いのかと言えばそう単純でもない。きっと、求められるのはあいつの面影だけ。
今の俺が彼女の前に現れたとして、良い方に転ぶようには思えなかった。

仮でもこんなことを考える思考も嫌だった。
あの子は既に生涯の伴侶を選んだ。
俺はあの子の都合をまるで考えていないのだ。自分がどうしたら良い思いができるか、そればかり。

選ばれなかったのも、理解出来てしまう。
こんなことばかりを頭で巡らせていると、本当にあの子が好きなのかもわからなくなる。
彼女に心を惹かれて、焦がれたのは確かだ。
誰にでも優しいあの子。
彼女が幸せだと俺も嬉しい。そのはずだった。

けれど、今は目に入れるのも苦しくて、近寄りたくない存在ですらある。
どうして祝福ができないのだろう。
どうして忘れられないのだろう。
さもしい人間性を省みるたび、胸が灼けるように苦しくなる。

今の俺が可愛がっているものは自分自身なのだろう。
どうにもできなかった過去の自分を、ずっと一人で慰め続けている。

有り得ない夢を見て、虚しい理想を追って、その先は?

この国にいると、忘れそうになるけれど。
思い出そうとする度に、酒で忘れてしまいたくなるけれど。

向き合わなくちゃいけないんだ。本当は。



・3日目:墓落ち時

今日、奪われて天秤に置かれたチャームは無いらしい。

「──────」

自分に最も票が向けられた。
【処刑】の際は自分でチャームを天秤に置きに行く。そういうルールになっているらしい。
進行役に促され、天秤の前へ進む。
震える腕を天秤の皿へ伸ばす。
三つ葉を象ったチャームが、皿に落ちた。



名前:コルム・オブライエン
性別/身長:男性/146cm
年齢:23
種族:人間
滞在歴:3年
職業:付与術師

理想の姿:片想い相手の配偶者である人間の男性、ロック・ファーガス
本来の姿:長い前髪に両の眼差しを遮られた、小柄で痩せぎすの青年。

#本来の姿



参加者の輪から逃げ出すように、階段を駆け下り野次馬の群れへ飛び込む。
今日は飲み食いする気も無いらしい。
いっときの好奇がすぐさま纏わりつく。


(早く遠くへ)
(【みんな】の方を、見ちゃいそうだから)


囲った野次馬の視線が突き刺さる。
今日の脱落者はこいつか。そんな一瞥をくれるのみのこともあれば、まじまじと目で追う者もいる。
中には馴染みの顔も居て、数人がわいのわいのと声を掛けた。

残念だったなあ、理想の男とはどういう関係なんだ、元気出せよ、本当のお前はあんななのか、話を聞かせてくれ。

陽気な男が、そう落ち込むなよ、高い酒でも奢ってやろう!と労って肩を組む。

…………

質問攻めに遭いながら連れられて、人混みの中を流される。
そのまま男はラレーピシュの宿を後にした。


・3日目
[17剣] 竜紋剣 シャムロックは、夕方頃に諦めて宿に戻る。それまではダーンライゼ通りの片隅で、ひっそりと時間が過ぎるのを待った。

自然はいい。人間模様なんて気にしなくて済む。
意味のわからない探り合いとか、そんなもの何も要らない。
街にはしばらく戻りたくなかった。



この姿になって驚いたことがある。
「意外と動ける」ということだ。
嘗ての自分は身体が弱く、剣術はおろか運動の類は軒並み駄目だったものだが、この身体は反応が早く、力があり、身軽で息も上がらない。

剣の経験なんか無に近かったのにしっくり来る構えや動きの感覚がわかるのだ。身体が識っている、とでも表現するのが相応だった。
あいつの力なのだか、俺の理想の形なのか。

補い切れない経験不足はあったが、拙くも素の自分より動けたことに感動したし、動けるとわかればできることを増やしてみようという気にもなった。
どうせこの身も永遠ではないのだ。
今くらいは元の自分と違う人生を過ごしたいと、欲が出て。

戦えるようになりたい、と漠然と思った。
今までまったく出来なかったことをやりたい。冒険者なんてどうだろう。

備えが必要だ。俺はこの国に来てから勤めていた加工屋で、客にサービスする代わりに、中古装備の融通や素材の調達をしてもらった。
店主にバレて「勝手なことをするな」と追い出されたがまあ仕方ない。以降あの店には目を付けられないよう生きることにした。
幸い、サービスのお陰で獲得できた固定客も居るし最低限の収入は得られる。トナハ通りでブイブイ言わせてるちょっと怖い客だが許容範囲だ。

そうして入手した優良素材──魔力の伝導率に優れた鋼で剣を打ってもらった。
俺の学んだ知識では魔法を安定させる道具として杖や魔導書が推奨されていたが、俺はあまり外に向けた魔法を使わない。
悲しいかな、一般的な攻撃や回復の魔法がそれほど得意ではないのだ。体内の魔力含有量とか、適性とか、色々理由はある。
そこに強い理想がある訳でもなかったからか、この姿でも変わらない。

俺が使えるのは対象の魔力を弄くり回し、性質を変化させる付与術と呼ばれる魔法だ。主に武具の強化や属性変化に使われる。
使う武器に魔導との親和性があると制御も効きやすく、調整しやすく都合がいい。
という訳で、付与術を活かしながらあいつ由来の剣技を振るうことにした。
理想に近づくくらいは出来るんじゃないか。この国なら。

ちなみに生き物に行使するのは苦手だ。
苦手というか、なんか……変なことになったら怖い。戻せなくなって慰謝料の請求とかされたら嫌過ぎる。


しかし俺の付与術というのは、調整作業に近いものだった。
本来は長期で調整するし、魔法を掛けるにもじっくり取り組みたいところだが、武器を抜くような場面でそんな暇はない。そこは工夫だ。

剣に魔力制御の刻印を入れて出力の安定と高速化をさせたし、予め強化付与の魔力パターンを剣に覚え込ませ、短縮できるようになんとか調整した。
持続力や爆発力には欠けるが、発動速度と安定性は悪くない。
素材の優秀さのお陰で、強化を重ねたり切り替えても崩壊せずに済んでいる。

剣としては凡庸で、魔杖としては出力が心許無い。
俺の魔法に特化した魔法剣。
俺だけの武器だ。

完成までに地味に時間と材料費が掛かったが、これなら俺でもまあまあ冒険者業ができるのでは。
そう思うと充実感のようなものは確かにあった。

結果的に、大袈裟な依頼者から剣の刻印を竜紋とか呼ばれ、名声も無いのに謎に箔がついたりもする。
なんだ竜紋剣って。強そうだな。クソザコ剣士なんだが?

そんな風にも思ったけれど少しだけ、誇らしかった。
いつかその肩書きが似合う男になれたらと自惚れるくらいには。

でも───

儚い理想だったな。
掲示された紙を見て、そんなことを思い知った。





・【あの子】のはなし(抜粋)
……誰にでも優しくて。気が利いて、まっすぐな子だった」
「身体が弱くて浮いてた俺にも分け隔て無く接してくれた」
「みんなが好きになって当然のような子だった」
…………俺も、好きだった」
「高嶺の花だった」
「良い男と、順調に結ばれて行ったよ」



「俺は昔から身体が弱くて、人と同じようなことが満足にできないから地元でも浮きがちだった」
「あの子は、優しくて気が利いて、俺にも誰にも分け隔てなく接してくれる良い子で。みんなが好きになって当然みたいな人だった」
「だから、良い男とも順調に結ばれた」
「相手の男は逞しくて、働き者で、面倒見が良くて。頭も回るしよく笑って……勝てるものなんてなかった」
……お似合いだったよ。すごく」


・相棒になってよ
逃げてばかりの人生だった。
人との衝突から逃げて、恋敵との競走からも逃げて、その先の現実を見ることからも逃げてきた。

人と目を合わせることだって苦手。
自分の弱い所を探られるような気がして。
隠したものを暴かれるような気がして。
傷付くことから逃げてきた。

全部、全部、自分からも逃げて。
未練がましい想いも汚い自分も、この国でみんな棄ててしまいたかった。

でもさ。
お前にだったら、また拾って、全部見せても良いなって思えちゃったんだよ。


お前のことだって、沢山知りたいから。





・エピローグ:決着
「──────」

ゲームセット。
勝敗は決し、最後の同胞は猫の如く外へ身軽に消える。

待ち望んでいたはずの《敗北》だ。
ほら、俺にはやっぱり無理だったよって言いたかった。これで今度こそ諦められるじゃないか。
……だのにどうしたことだろう、こんなに飲み込み難いのは。
自分はともかく【みんな】のことは勝たせてやりたかった? それも本心には違いない。けれど勝利し理想を叶えた人々をめでたくも思う。

「おめでとう」

小さく、誰へともなくそれだけ呟いた。

嗚呼。
昔もこんなこと、あったかも。

人間変わらないな、なかなか。
直ぐ荷物を纏める気にもならない。3年分の理想を辿り、何処ぞをぶらつこうか。
今日ばかりは野次馬も、誰彼の正体より決着へ興味を移してくれるんじゃないか。



・エピローグ:嘗て竜だった友人へ
宿を出てすぐに、聞き覚えのある声が辺りに響き渡った。
人から竜となり、竜から人を取り戻した少年の声。
無かったことにしないと言う力強い宣言。
彼はやっぱり、いつか語って聞かせた英雄譚の英雄に似ている。

……優しいよなあ」

彼の手が星に届いたことを喜ばしく、そして誇らしく思っている。
その心は、嘘じゃない。
見上げた先──剣を掲げた少年は、本物の勇者のようだった。


・エピローグ:本気の殺し合いの前に
生き物にエンチャントを行使するのは苦手だ。

苦手というか、なんか……変なことになったら怖い。戻せなくなって慰謝料の請求とかされたら嫌過ぎる。

────自分に? とんでもない!
そんなの誰が責任取ってくれるのさ。


・エピローグ:飴

祭りの過ぎたある時。
オヌグルンド通りで菓子売りの行商が店を出していて、 なんとはなしに、その屋台を見た。

(飴かあ)

色とりどりの粒が瓶に詰められている他、スベスベマンジュウガニ[[animal]]やメデューサ[[monster]]型の飴細工が棒に刺さっていた。どうやって作るんだろう、これ。
魔術でもこれだけ精巧に形作るのは至難の技なのではないだろうか。
地元にいた頃は甘酒[[candy]]味の飴なんかを好んで食べていたなと思い出す。
よく婆ちゃんがくれたんだよな。


・エピローグ:変化
[17剣] 竜紋剣 シャムロックは、貸本屋で書籍を借りた。『図解でわかる!マッスルポメラニアン式肉体鍛錬法』『モアクホベ魔法研究所料理部監修・体と魔法を調和させる栄養学』

姿の変わらないこの国ではあまり需要の無い体作りの本を手に取る。

筋力トレーニングも食事改善も、この国では必要無い。
けれどこの国で無意味でも、習慣づけておけば外に出てから続けやすくなる気がして。


・エピローグ:金貸しのオジキさん
「金貸しの兄さん、納品に来ました!
 軽量型呪怨式炸裂サムライソードDXパラライズカスタム!
「時間は掛かったけど間に合って良かった……

その日は借金の返済を兼ねて強化付与武器の納品をしに行った。
俺はトナハ通りをホームにしている金貸しに借金をしている。
前に加工屋を追い出され、付近の営業も干され、職無しになった時に拾ってくれたのがこの人だ。
個人的に欲しい素材を融通してもらう為に店先でサービスしたことが幸いし(この行為がクビになった原因でもあるが)、顔を覚えてもらっていたのである。
以降、金銭面の支援を受ける代わりに彼の武器や魔道具の調整を請け負っている。
ちょっと怖いし時々手が出て怖いし時々返り血を浴びてたりなにか焦げたような匂いを漂わせていて怖いけど、約束は守ってくれる良い人だ。

「凄い刀剣だった。これだけの術の負荷に耐えられるし、年代物っぽい割に状態も良くて。オジキさんの秘蔵品だったりするのかい?」
「今回もお代は返済に当てて──……え?」
「今回で取引打ち切り……!?
 そ、そんな。残りの返済、どう金を作ったら……
……? へ。全額、不要!? え? え? な、なんで」
……手切れ金?」
「いやっ、確かにここ最近で俺、目立っちゃった、かもだけど……

俺は彼にまあまあ多額の債務があった。
しかし突然、彼はその貸借契約を白紙にして俺と手を切りたいと告げてきた。
取引先から自身の所在や行動が明るみに出ることが嫌なのだと。
聞きたいことは山ほどある。
だけど、彼が大きな音を立てて机に脚を乗せたから怯んでしまって、何も訊けなくなってしまった。
だって徐ろにナイフとか磨き始めたし。
そのナイフに引けを取らない鋭い眼光で「去ね」と言う。

「お、お世話になりました……

逃げ帰るように彼の事務所を急ぎ出た。
低く重く突き刺すような声が耳に残る。
もう、関わることは無いのだと思う。悪いことではないのだが。
これで最後になるのなら、もっとちゃんとした挨拶をしたかった。怖くたって手が出たって、俺に取ってはやっぱり恩のある人だ。

金貸しの兄さん────オジキさんには、ある噂がある。
彼は一度あのゲームに参加して、既に本来の姿を暴かれているのだとか。
彼はどこかの解散したマフィアの残党で、理想の姿は全盛期の自分らしいとか。

本当なのか、詳しいことはきちんと知らない。 詮索しようものなら何度でも殺されそうで。
他に俺が知ることと言えば。
彼は俺の素性が割れた後でも何ら変わりなく債権回収していたことや、追加の借金を求めた時に拳一発入れた以外は穏便に応じたこと。
それらに、理不尽な条件や催促は一切無かったことだけだ。


・エピローグ:変化2
指文字の本を見付けた。
触手話の一つとして会話に用いられることもあるらしい。

「ほう」

声の会話はできるけれど、覚えておいて損は無さそうだ。自分だっていつ耳が使えなくなるかはわからない。
そう言えば、音の魔術にはどんなものがあるだろう?
研究所を訪ねてみようか。
やりたいことが沢山あるな。


・エピローグ:変化3
久方ぶりに、住居として借りてた元の部屋に戻る。
今日の目的は付与術に使う魔導書を取りに来ただけだったのだが。

……屋内に空いた酒瓶が転がっている。
大して酒が入らない癖に随分とたらふく飲んだものだ。
チャームがこの手に降りてくる前は、将来の不安やら自己嫌悪やらが拭い切れずに仕事が入らない限りは飲んで有耶無耶にしていた。
瓶も最初は片付けていたのだが、次第にこれは自分の罪の数だとか生きてる証だとかよくわからないことを思い始めて木箱単位で酒瓶を増やし、終いには収納すらやめて放置する有り様である。
なんともまあ、今にして思えば情けない。

「よっ……

瓶を木箱に拾い集め、回収先に持って行く。
もう、こいつらとはさよならだ。


・エピローグ:むかし
──よく、こんなの相手にできるね。

──まあな! ついでだ、ついで。ちぃーっとばかし危なかったが案外なんとかなるもんだ。ほら、持ってきな。必要なんだろ? これの鱗だか、牙だか。

──どうも。……死ぬかもとか、考えないの。

──考えてなきゃ死んでるだろうなあ。だから死なねえように考える。これでもビビることあんだぜ?

──……俺には無理そう。

──俺だって初めは難しかったよ。けど、今こうして俺がコルムの代わりに俺のできることをして、そいつが役に立ってんなら嬉しいね。

──……そう。




・エピローグ:ねえ、ロック
人間、なかなか変わらないかもしれない。
競って負けて、魅力的なものを逃したら悔しいとか惜しいって気持ちは出てしまうようだ。
でも。少しは無様にくよくよしたけれど、悔やむよりもやりたいことが今はある。

昔は何もかもやる気がしなかったな。
自分はこれだけの人間なのだと早計な結論を立てて、試練に挑む勇気や忍耐から逃げた。
みんなみんな可能性を捨てては諦めて。理想の国境を潜り、都合のいい夢に浸って、それすら踏み潰されることを願った。

都合のいい夢は失われた。
けれど、全部を諦めなくても良いと知った。
どうやったら理想に近づけるのかを考えるようになった。障害を克服するために一歩進める道を探した。もう一度、新たに夢を思い描いた。
どれだけ苦しくて困難でも、他の人より回り道をすることになっても。
自分で叶えてみたくなったんだ。

よくお似合いのあの子とあいつ。あいつならあの子を幸せにできるだろうと疑い無く思った。
悔しかった。けれど何もしなかった。
だって俺は弱虫、泣き虫、怖がりコルム!
勝てっこないのに我儘なんて。何も出来やしないって背を向けた。
それでいて、妬み嫉み僻みを止めない自分の身勝手さと言ったら、ない。
自分の何もかもが見苦しく嫌だった。
式を挙げた二人に正面から「おめでとう」を言えなかったのも。
あいつの親切を素直に受け取れないのも。
あの子にさえ意地の悪い態度を見せたことも。
コルム優しい人という、不相応な名前も。

──我儘を言いたい。魅力がほしい。置いて行かれたくない。忘れられたくない。誇れる自分になりたい。

自他を攻撃するよりも、裏にあった願望にこそしてやれることがあったろうに。

ねえ、ロック。俺、お前になりたかったんだ。
ねえ、ロック。俺、お前みたいになりたかったんだ。
ねえ、ロック。俺、お前にはなれなかったよ。
お前のフリをしようとしても、俺は俺だった。

でも、ねえ、ロック。俺、お前のおかげでちょっと自分を好きになれそうだ。

この国で下手なお前の真似しかできなかった。
でも、お前になれない俺でも良いことあったんだ。
お前になれなくても、俺自身が手にできたものがあったんだ。
願った“なりたい自分”のすべてが不可能じゃなかったんだ。

怖い目も痛い目も見たけれど。相変わらずの臆病者だけれど。まだまだ足りないものはいっぱいあって、伸びしろだらけだけれど。
でも、やられっぱなしじゃなくなったよ。

こんな俺でも、一緒に歩いてくれる相棒ができた。
独り善がりでも幸福を祈りたくなるような仲間ができた。
運命を奪い合った末に祝福したい相手ができた。
心を許せる友達ができた。困った時に親切にしてもらった。また会う約束を交わした。思い出を作れた。励まして応援してもらえた。信じて頼ってもらえた。たくさん気にかけて心配してもらった。
恋心が叶わなかったのも、お前のような魅力的な肉体が得られないのも、無念でなかったわけじゃない。
だけど恋に敗れて此処まで来てなければ、この全部が無い話だった。

これで負け犬だなんて言わないよ。
それにもう、夢と消える偽物のお前じゃない。夢を追う俺自身になれたんだ。
人間、すこしは変われたみたいだ。
これだけでも勝ち馬に乗れたと思わないかい?

俺が村を出る時、あの二人は見送ってくれったけな。稼ぎの良い土地へ出て行く人間なんて珍しくないのに。
あの時まで俺の態度は最低だった。
戻る気だって無かったよ。なんなら非業の結末まで想定してさ。
なのに無事を祈ってくれたっけな。
御守りだからと、三つ葉の牧草シャムロックを押し花にした栞なんか持たせてくれて。
故郷に伝わる愛情と祈りと希望のしるし。
捨てようとして、捨てられなくて。今も手元の本に挟んでる。
すっかり色褪せたこれを見る度に、故郷で風に揺れる翡翠色の絨毯を思い出す。

二人はどうしているだろう。今も健在であればいい。
素直に願うだけのゆとりはできていた。
……一度くらい、正面から「おめでとう」って言ってみようか?
何周年の記念になるかわからないけれど、お祝いに良い時計があるんだ。

ねえ、ロック。俺、冒険者やるんだ。
お前よりずっと鈍臭くて貧弱で、力やチャンスも足りないかもしれないけれど。
英雄になりたいとか、武勲を立てたいとかじゃなくて。
怖くても進み続ける“強ぇー”奴。知恵と勇気で誰かの代わりに道を拓くカッコいい奴。
そう、お前みたいな。
そういうカッコよくて強ぇー冒険者になって、努力と工夫で困難を乗り越えたいんだ。
面白い話だろう? お前は驚いても笑いはしないんだろう。きっと。
付与術師も続けながら旅をするんだ。欲張りかい?
一人じゃできなくても、相棒と一緒ならできるって信じているんだ。

ねえ、ロック。
俺にもできること、あったみたいだ。


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Sham-Rock Briongloid夢幻の中のニセモノ
    ▶Shamrock & Briongloid夢路に愛と祈りと希望を添えて

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