3月15日 『神隠し』


怖いことがあったので話を聞いてほしい。

ルビコンでは年に1回精霊祭という祭りが行われる。
先祖を供養する為の祭で
村中に張り巡らされたロープに結ばれた花を、新しいものに付け替える祭りだ。

祭りの時期は町によってまちまちなのだが、今月は近郊の町で1件、精霊祭が行われる予定だった。
『だった』のだ。
今日が精霊祭に使う花の納品日だったので、私はレースのリボンを目一杯に用意して町に向かった。

だが、町は無かった。
町自体が瓦礫となっていた。

建物は尽く壊されていた。
でも不思議なことに死体は一つも無い。
町中を歩いて、歩いて、歩き尽くしたが生存者も死体も、それどころか血の跡すら無い。
あまりにも恐ろしすぎて、供養することも忘れて家に帰って来てしまった。

あれは企業の襲撃なのだろうか
しかしあの町には企業が狙うような大規模なコーラル資源は無いはずだ。

何を目的に彼らはあの町を狙ったのだろうか?
いつか我々も……

私はこれから、町長にこの事を報告しに行く。

悠長に花を編む時期は終わったのかもしれない。

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