わらびもち
2024-03-23 19:40:47
1222文字
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焦りは禁物

VOID自探索者(HO1)の過去回想



強くならないと。早く、早く。



「今日はここまでにしとくか。」
「え……。」

そう言って木刀を片付け始めたトオヤさんに間抜けな声が零れる。

「何で?まだできるよ、それにいつもより早い。」
「けどな、お前体力も限界だろ。」
「っ!」

見抜かれた。言葉に詰まった拍子に頬を流れた汗が顎を伝い地面に落ちる。手も足も重く、汗を吸ったシャツが張り付いて気持ち悪い。
片付けを続けるトオヤさんに目を向ければ汗ひとつかいておらず、その実力差に悔しさだけでなく、蓋をしていた不安が溢れてくる。

「強くならないと……また、守れない。」

視界の端で母が血を流して倒れている。夢で見た光景だ、目の前の現実ではない。けれどきっとかつてあった現実だ。
一瞬、その血溜まりに倒れる黒と赤が見えるがそれが何かの形になる前に額に衝撃が走る。

パチリと瞬けば目の前には手の側部があり、その向こうに呆れた顔のトオヤさんが見える。痛くはないが額に手を当て、ようやく軽くチョップされたと理解する。

「あのな、焦りすぎだ。」
「でも!」
「確かに時間ってのは有限だ。待ってくれやしない。焦ってものんびり構えてても同じだけ時間は過ぎてく。」
「だったら、」
「だからこそ今の時間を大事にした方がいいんじゃねえの?」
…………今、?」

私の頭に手を置いたままのトオヤさんの顔を見れば少し複雑な顔をしていた。けれどその目は温かなもので、焦燥感がジワジワと薄れていくのを感じる。

「そ。今お前の隣には黒田さんも俺もいる。けど人間は老いていくからさ、どう頑張ってもいつか終わりはくる。」
「っ!」
「頑張るなとは言わねえが、時間が待ってくれないなら今を目いっぱい楽しんだ方がいい。」
「今を、楽しむ。」
「そ。でないと振り返った時苦しいだけだぞー?」
…………。」
「大丈夫。遥はちゃんと強くなってるよ。俺が保証する。」
…………ほんとに?」
「ああ。ていうかな、どれだけ焦っても休息は疎かにしたら駄目だぞ。倒れたら元も子もねえだろ。」
……そうだね。」

焦燥感も不安も、消えてなくなった訳では無い。それでも今は頭を撫でる手に安心感の方が勝り、目を閉じる。

「よしよし、今は寝とけ。夜眠れてないんだろ?」

ああ、それもバレてたのか──。

そこまで考え、意識は途切れた。




ーーーーーー

こないだたかとと卓した時に降ってきた幻覚。

時系列的には遥が高校生。赤星はワンチャン感情芽生えたて。

赤星お前これ……どんな気持ちで……お前……


以下SSの元になった玄とのやり取り抜粋


「玄は、心配なんです。一茶殿と居れる時間がどんどん……はやく過ぎていっているようで

「時間は確かに待ってくれませんが、それは焦ってもゆっくり構えてても同じです。なら……今の時間をめいっぱい楽しんだ方がいいですよ。」
「なんて……受け売りですけど。」