休日の昼間、ソファを背もたれにして床座りの状態でぼんやりと映画を眺めていると、投げ出した足の間に缶ビールを片手に持ったチルチャックが座り込む。
同棲を始めてから椅子などの家具はほとんど俺に合わせて新調したため、どれも大きすぎていまいち落ち着く場所がない、と最近では俺が座椅子代わりにされるのが定番だ。チルチャック用の物も揃えようと言ったのに、でかけりゃ俺も使えるが小さいとお前は使えないだろ、全部お前に合わせた方が経済的で効率的、と押し切られてしまった。
「随分懐かしいもんやってんな」
カシュ、と缶ビールを開ける音が響く。ごくごく、と喉を鳴らす音が聞こえる。
「っはあ〜!」
晩酌の時間や仕事の終わりの後だと生き返る〜!とつけそうなくらい充実した息の吐き方だ。自分も飲んだ後はよくやるが、チルチャックのはなんだか実感の篭り方が違う。こういうところ、年齢相応なものを感じる。
胸元に寄りかかった頭を眺めていると、白髪を数本見つけた。
「あ、白髪」
「げ」
「抜く?」
「何本?」
「3本」
んー、と唸りながら少し悩むチル。
「抜いてくれ」
逡巡の後の声には苦渋が滲んでいる気がする。白髪を一本ずつ摘んで手早く抜いていく。
「はい」
「白っ」
取れたものを見せると少し観察した後近くのゴミ箱に捨てる。最後に見てしまうのは別れを告げているんだろうか。
「チル」
「んー?」
「俺もない?」
「どれ」
顔の横に頭を差し出すと、近すぎて見えねえよ、と言ってチルチャックは立ち上がり、後ろのソファに座って俺の頭を観察し出す。
「5本」
「え」
「固まって5本」
「え〜……」
「抜いとくぞ」
「いてっ」
まとめてぶちっと髪の毛が抜かれる感触がする。少し痛くて髪が抜けた場所を手でさする。
「5本はなんかショックだ……」
「対して歳変わらねえんだからお前もそれくらい生えるさ」
背後のチルチャックの声は妙に楽しそうだ。
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