スサ
2024-03-07 18:47:31
1278文字
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【ゲ/鬼水】満足させられてるかどうかの話

そのまんまです

「僕はあなたをちゃんと満足させられていますか」
 体の大きさや顔の幼さ、声の高さなど物ともせず、ごまかしを許さない眼差しで鬼太郎は水木を見ていた。
 あなた、と呼びかけられるようになったのはいつだったっけ、なんて思ったのは現実逃避でしかなくて、そして、鬼太郎はこちらの戸惑いや照れくささなど全て見抜いた顔でこちらを見つめている。
 いや、もしかしたら少し違うのかもしれない。水木が無理をしていないか、ちゃんと幸せか、そういうことを見逃さないようにしているのかもしれない。
 そう思ったら急に肩の力が抜けて、けれども目の前のこの子が愛おしくてならなくて、
「み、ずき!」
 気がついたら、ギュッとその体を抱きしめていた。ほんのりと温かいのは、水木のための体温を保っていてくれているから。
「うん」
 伝わるかな、と思いながら目を閉じる。きっと今心臓は早鐘を打っているのだけれど。何しろこちとら昭和も戦前の生まれだ。甘い言葉など、仕事とでも思わなければとても口にできない。恥ずかしくて。
俺は幸せだよ」
 水木は何とか苦労してその言葉を口にした。口の中が緊張で乾いてしまう。声が震えるまではいかなかったが、少し上ずったものにはなってしまったかもしれない。
「ま、まんぞく、とかは、その、見たらわかるだろ?」
 言っている間からもう後悔している。あらためて口にするのは本当に恥ずかしい。だけれども、この子がこんなに自分のことを考えてくれているのだから、とグッとこらえた。それでも最後はふんわりしてしまったのは許してもらたい。
 ぴたりと、小さな、そしてふっくらとして整った綺麗な手が水木の頬に添えられた。
 あ、と思う。たぶんこのあとは顔が寄せられて、それで、体が先に思い起こして、自然と応えるように目を伏せていた。鼻先に呼吸を感じる暇もあらばこそ、流れるように唇は重なっていた。
 こんな子どものなりから出てくる手練手管じゃねぇんだよ、と言ってやりたい気持ちも少しあるけれど、そうすると何か良くない水木の首をしめるような反論がありそうで、まだ口に出したことはない。
 ぬるりと絡まる舌。こればかりは種族の違いというやつで、鬼太郎の方が長い。水木の舌は小さくて可愛い、と囁かれて悔しい思いをしたのは、まだ体を重ねる前の話だ。思い出してしまったせいで一瞬口づけがぎこちなくなる。鬼太郎はそれを見逃さない。
いや?」
 しっかりと目を合わせ、水木にだけ聞こえるような囁き声で続けていいかと尋ねられる。ぶわ、と水木の顔が真っ赤になった。首や耳、胸元まで赤い。
………
 首を振ることも頷くこともできず、ただ潤んだ目で見上げてくるかつての養い親に鬼太郎は目を細める。そっと額の髪を払う指は少年のものらしくやわらかいというのに、仕草には隠しようのない色があった。
「安心しました」
……?」
 少し話が見えない。眉をかすかにひそめた水木の耳元に、鬼太郎は体ごと顔を近づけ意味を告げる。
「僕はちゃんと、あなたを良くできているんですね」