さちこ/Sharia
2024-03-07 00:19:44
1785文字
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リンクパール確保!

漆黒5.3終了後の話

「タタル!」

珍しいことに荒々しく扉を開き石の家に飛び込んできたアルフィノに、タタルは驚いて目を見開いた。
いつもの紺色の衣装を翻し、少年はツカツカと受付へと歩み寄り、ひどく焦燥した様子で机を鷲掴んだ。

「あ、アルフィノさん?どうしたんでっすか?」
「っはぁ、すまない、急いで飛んできたものだから」

白い肌からは透明な汗が流れ落ちており、走ってきたであろうことが窺える。
タタルが机の上に広げている書類に落ちないようにだろうか、アルフィノは少し離れてから顎まで垂れてきた汗を拭う。
そうして息を整え、深呼吸して、真剣な顔で彼は告げた。

「シャリアのリンクパールを確保したというのは、本当だろうか」
「あぁ、そのことでっすか! フフン、もちろんでっす!ご覧くだっさい!」

そうして懐から取り出したのは、一見普通のリンクパール。だが、その内部に籠るエーテルはこのリンクパールの持ち主であろう人物のように太陽のように暖かなものだ。

シャリア・ロダ。暁所属の冒険者の一人だ。
ヴィナ・ヴィエラにしては珍しい至極色の髪を持つ、燻金の双剣を佩いた、冒険を生きがいとする女性である。
クリスタルブレイブへ弟と共に入隊したのが暁入りのきっかけ。かつてはあのイルベルトの直属────ではあったが、未だ未熟だったアルフィノの面倒を見るかのように付き添い続け、守り切った凄腕の剣士でもある。
そんな彼女のリンクパールを確保しただけで、なぜこんなに騒いでいるかというと。

「本っ当に大変でっした……シャリアさんったら、なかなか渡そうとしてくれなかったんでっすから」

本人たっての希望で、直通のリンクパールが存在していなかったのだ。
「縛られるのはイヤ」と風来坊のようなことを言って、そのまま冒険を求めて石の家を出て行ってしまった。
それからは、まぁ。当然のように音信不通である。稀にふらっと帰ってくるが、アルフィノは未だ彼女に遭遇したことがない。

その理由は簡単。すぐそこまで来てもアルフィノのエーテルを感じ取ると逃げるように旅立ってしまうからだ。
エーテル操作が壊滅的に下手くそな彼女でも、ヴィエラらしくエーテルの流れを感じ取ることはできるらしい。外にアルフィノのエーテルを感じ取ると、たとえ話の途中でもテレポでどこかへ行ってしまう。
明確に、避けられている。アルフィノがそう感じざるを得ないほどには露骨だった。

アルフィノは、アラミゴ解放以降一度もあの至極色を見ていない。

……その、貸してもらっても……
「えっと、でっすね……アルフィノさんには貸すな、との言いつけでっす」

若き少年は思わず頭を抱えた。
会いたい。直接会いたいのだ。だって、渡すものがあるのだから。
かの英雄に運んでもらった、とある服。第一世界で見つけて、ふと彼女に似合いそうだと思った服が、ここに存在しているのだ。
また誰かに運んでもらうことも考えたが、それでは意味がない。他人からのプレゼントになってしまう。

……そう、か……また別の呼び出し方法を……探さないと……

明らかに落ち込んだアルフィノを見て、タタルはあわあわとし出す。しかしこのリンクパールを預かる交換条件なのだ。絶対にアルフィノには使わせるな、という言いつけ。
何がシャリアをそこまでさせるのか。タタルにはわからない。わからない、が。

「えっと……シャリアさん、アルフィノのこと……別に、嫌ってないと思う」

ひょこりと未明の間から顔を出した、タタルと恋仲であるララフェルの冒険者がおずおずとそう告げた。

「だって、倒れている間は毎日来てたから……あのひと、暗い中ずっとアルフィノのそばで詩ってたよ」

タタルに頼まれたらしい資料を机の上へ持ち上げ、よいしょと効果音がつきそうな動作で載せる。
「ありがとうございまっす!」とタタルの元気一杯のお礼に少し顔を赤くして、嬉しそうに少年は頷く。

一方。アルフィノはというと。

……少し……彼女を探してくるよ」

真っ赤になった顔と耳を隠すようにフードを被り、足早に石の家の出入り口へと歩き出す。
先ほどリンクパールから聞こえた大きな物音と、彼女の軽快な「いたっ」と言う声。

聞き間違いでなければ、すぐそこのセブンスヘブンからも同じ音が聞こえた気がしたから。