高校時代、曲で恋文を書いた。
ラブレターソングというやつである。
ぼんやりと最初にルーズリーフに書き綴った歌詞のプロトタイプとなるもの、そして相手の名前から連想したタイトルを付けた。
作詞作曲、俺の、君をずっと想っているソング。
それにしては、というか、なんかずいぶん暗い歌詞で明るい曲調の変な歌になってしまったな、というのが完成させてからあらためて聞いた所感だった。
タイトルがタイトルだったから、聞く人が聞けば分かる、というか本人に聞かれたら一発で分かる曲で俺は、どこで披露するでもなく、たんにデータを保存しておいた。
それから数年経って、俺は大学でバンドを組み、大学を卒業する前に、つまりいったん解散するという段になったときに、その曲を、なんとなく、引っ張り出してきた。
聞き直して、あらためて、人には聞かせられないなと、仕舞った。
そして、仕舞うさいに、俺は高校時代と比べものにならないレベルで音楽的に技術力を得ていたので、その曲をさらに仕上げてしまった。
偶然に、その曲を披露する機会が来てしまう。
就職して何年か、高校時代の友人の結婚披露宴の二次会で地元に帰り、旧友たちにまだ音楽をやっているのかというような問いに俺は、どう答えるか迷い、考えたすえ
「低空飛行だな。飛んでいるとも、飛んでないとも言えないくらいに。でも飛んではいるんじゃないか」
と返した。
旧友たちは、こいつ昔と変わらずよくわからないままだな、みたいな顔をした。
音楽関係の知り合いがフェスやるメンツが欲しい、らしくて俺は日程的にも断る理由が見つからなくて、日当も出ると言うから、請け負った。
準備期間が短く、俺はその例の曲を、また引っ張り出した。
あの日々から十年近く過ぎて、気持ち的にようやくまともに聞けたと思った。客観的に。
何を言っているかよくわからない変な歌だなと思った。
だから、人前で歌ってもいいかと、よりブラッシュアップして、さらにあの日々の思い出ソングを、短いのを作ってしまい、俺はフェスに単独で入って、二曲歌った。
数日後に、一人、奇抜で異色だったからか、そのフェスの俺が歌っているところの動画がかなり大量に再生されてしまっていることを知って、俺は怯えた。
バレる、と。
本人に聞かれたら、と思った。
彼に聞かれりゃ、一発だと俺は恐れて、仕事も手につかない、ということもなかった。
どれだけ再生されたって、届かない。そんな気がした。彼の現在もよく知らない。最後にやりとりしたのは去年の、年始にメッセージアプリで二言だけだ。
他校の彼。駅前でときどき会ったクールな彼。
容赦ない目つきの彼。
親しくなった後に、俺の言動に、困ったように微笑んで、それから本気で訊き返す彼。
休みにのんびりしていたら、メッセージアプリの通知に、久しぶりという言葉もなく
『てめえ、あれ? おいコラ』
と送られてきたのを見て俺は、慈悲が欲しいなと思った。既読状態にしてしまって、すぐに通話がかかってきた画面を眺めて、無理か
……と思った。
彼の名前の季節と、四季から考えた歌詞とタイトルで言い逃れできないなと通話に出る。
「生きてきて、初めて、朝焼けが綺麗だって、あの夜明けに思ったから、ああいうことになったんだよ」
と言うと
「
……変わってねえな」
彼は呟いた。
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