破壊
2024-03-04 17:15:54
1584文字
Public 伏せ
 

灰よか:探索者のメモ


愛宕シージャ 18歳/174cm/65kg 高校3年生
日本人の父親とスウェーデン人の母親のダブル


週に4回、放課後先輩の経営しているクラブで朝方始発の時間までアルバイトをしている。本人の素行が悪いという事はないが、友人と呼ばれるものの一部に少しヤンチャな人間達がいる。
とはいえ彼等も小さな犯罪以外は特に大きく道を逸れた事も無くクラブも普段はライブハウスとして使われており、シージャの事も家に帰りたくないのであればとの気遣いでアルバイトとして雇用した為、見た目は派手だが気の良い人達だとシージャも感謝をしている。

両親共に忙しなく仕事だと各国を飛び回り、その罪悪感からか娘の誕生日にさえ連絡のひとつと振り込まれる多額の小遣いだけで家に寄り付かない。冷え切った家庭だが辛うじて離婚はしておらず、定期的にやってくる必要最低限の連絡だけが愛宕家を繋いでいる。
また同じくシージャ自身もこの家庭にある歪な状況から目を背け、対話をせず問題から逃げるようにして生活を続けてきた。



問題を直視したくない性質を持ち、争いや揉め事に関わるものを故意に回避する。事勿れ主義であり、八方美人とも言う。その為事件の渦中に巻き込まれないよう誰に対しても平等に接する事を努め、大人しい子から派手な子まで友人も多種多様となっている。
教師などといった大人からの評判も悪くなく、目立つ容姿とアルバイトや友人関係も相まって学区内外問わず顔と名前が知られているが、内容は大体ポジティブなものばかり。自身の家庭の話も聞かれれば普段通り軽く答える程度で、シージャの対応から周囲もそこまで重く受け止めてはいない。

何か悲しい事やつらい事が起こるたび、自分は恵まれていると言い聞かせている。テレビで流れる事件に比べたら、どこそこの国の子に比べたら、戦場で銃を担いでいる兵士達に比べたら。食べるものも飲むものも、安心して眠れる家も無い人達に比べたら、自分はとても恵まれている。そう思い込んで、シージャ曰く身勝手で傲慢な不満を飲み込んできた。
自律神経の乱れから生理不順で数ヶ月来ない時もあるが、来なければ来ないで楽だし子を作る気もないし、自分が黙っていれば誰も気に留めないような事だと放っている。

本質的にはネガティブで不安症。愛情不足故に自分の感情より他人の事を優先しがち、石橋を叩くのも恐れるタイプ。神経質な面があり、ひとつ手順を間違えたら最初からやり直して同じ行動を繰り返すようなところがある。
愛に飢えており愛を欲するが、他人に深入りする事も恐れている為誰かの特別になったり誰かを特別にする事を直接的ではないにしろ忌避している。


もし自分が消えてしまったら両親は心配するだろうか。仕事を放り出して日本に帰って来て、一心不乱に自分を探したりするのだろうか。自分の事を思って毎晩泣いて過ごしたり、父と母が肩を寄せ合って慰め合って無事を祈ったりするのだろうか。もしかしたら互いに相手を責めて喧嘩して、遂に離婚なんてするのかもしれない。
学校の子も、先生も、先輩達も、私がいなくなったら探してくれるだろうか。それとも、いない日々が当たり前になって、「愛宕さん?そういえば最近見ないね」なんて、いつしか忘れてしまうのだろうか。
そういう事を、偶にふと考える。


名前の由来は愛染明王であるカーマデーヴァから。別名であるマナシジャの意味は心に生じる者。また、カーマデーヴァはシヴァの第三の目によって灰になり身体無き者の異名を与えられる。灰になってよかったらしいので取り敢えず名前から灰になってみた。
カーマは元来『愛』のみではなく厳密には『欲望』『欲求』というものを指す。性欲や情熱、憧れ、愛といった人間が持ち得る煩悩を今回の探索者のテーマとする。つまりそういう事なのかもしれない。