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雨月 ひより
2024-03-03 23:53:21
5720文字
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写る思い出に乾杯
Twitter(X)のハッシュタグ『#ふぁぼした人の絵を勝手に小説にする 』でリクエスト頂いたライオコンボイさんとライオジュニアのお話。
リクエスト内容は『お酒と息子ジュニアが大好きなパパなライオ様なので、親子のほのぼの、ちょっと笑えるお話』とのこでしたので、何とか添えるように書きました!
「う
…
」
本日の任務の命令は全て息子のライオジュニアに任せ休暇を取った私は、まずは自室の清掃をすることにした。
ここの所はずっと任務に追われ、自室は寝る為だけのものとなっていた。
久々の休暇でいざ清掃しようと決めたが、自室のあまりの惨状に言葉が詰まってしまった。
いつの間にこんなことになったのだろう
…
?
「まるで泥棒が入ったあとのようだな
…
」
とは言ったが金目の物は一切置いていないので、周りにはミーティングで使う資料の紙、本ばかりだ
…
。
紙類は机の上にも散乱していたり、くしゃくしゃに丸めたものがあちらこちらに、本も、棚にしまってあるが配置はバラバラで、ページが開かれ逆さに放置されていたり、何冊も積み重ねたものが床に置かれていたり
…
。
「何故、こんな物まで
…
」
机の上には飲みかけの酒瓶と升が、床には空になった酒瓶が幾つも転がっていた。
「私がこんなに飲んだのか
…
?」
机の上にあった栓がしっかりと締められている酒瓶を手に持つ。
『コンボイ殺し』と言う、とても美味しい酒だ。
その名に相応しく飲んだ者を殺す(酔わせる意味を込めて付けられたと思う)程に美味しく、飲み過ぎて記憶が飛ぶことも暫しある。
とても美味しいが非常に危険な酒でもある為、飲むなら升に並々一杯だけ注いでいたのだが、いつの間にか中身が半分以上なくなっているし、床には空瓶が幾つも転がっている。
空瓶の数で私がどれ程飲んできたのかが想像出来た。
「自分のこととは言え、恐ろしいな
…
」
ともかく自室のこんな惨状では人を呼ぶことも出来ないし、主である私もいつかは空瓶や本などを踏んでしまいそうだ。
(そもそも、私のこんな状態の部屋では誰も来たがらないだろうな
…
)
最近は寝ている為だけ
…
と言い訳していたが、いい加減に片付けよう。
「とりあえず先に酒瓶を
…
」
飲みかけの酒瓶は再び机の上に置き、まずは床から清掃を始めた。
床に幾つも転がっている空の酒瓶を袋に詰め、散乱している紙類を拾い集める。
くしゃくしゃに丸めてあるものも一度は開いて内容を再度、確認しておこう。
必要な資料なのかそうではないかを見なければいけないからな。
(もし、これらが必要な資料だったのなら私は丸めて捨ててしまったことになるぞ
…
?)
酔うと何をしたのか全く分からなくなる所が酒の恐ろしい所だ。
だからと言って全く飲まないと言う選択肢はしたくない。
一日の終わりに、升一杯だけでも良いから晩酌を嗜みたいのだ。
しかし、升一杯で終わらないからこの自室の惨状になっているのだが
…
。
「はぁ
…
」
酔って記憶を飛ばした自分がやったことに溜息が出た。
くしゃくしゃに丸めて床に転がしたもの全ては幸いにも不要なものであったのが確認して分かった。
不要なものだと確認出来たので再度、丸めて袋に詰めていく。
そのあとは何冊も積んだままにしていた本も本棚へと戻していく。
本棚に行くと何冊もバラバラに配置されていたので、一度全て出し、同じ大きさにまとめて再度しまっていく。
「よし、何とか片付いたかな
…
」
先程よりかはマシになった方ではあると自分では思う。
足の踏み場もない状態だったが今は床の色もきちんと見える。
入ってきた視界の中で一番目立っていた酒の空瓶も片付けた。
これならば自室に来た者達も何も言わないし、思われないだろう。
清掃のおかげか私も少しだけ何かが軽くなったような気になった。
「さて、次は
…
」
清掃も終わってしまって次は何をしようか
…
。
先程、片付けた本棚の方へ再度足を運んだ。
気分転換に基地の外へ出ても良いとは思うが、外で作業をしている他の者達に気を遣わせてしまうかもしれないし、デストロンの者達にも遭遇するかもしれない。
そう考えると本日は自室に籠もって過ごすことにしよう。
惑星ガイアは本日も晴天だ。
窓の外には青空が広がっていて太陽の光が眩しい。
「外は今日も暑いんだろうな
…
」
こんなに良い天気なら外に出たいが先程の理由と、とても暑そうなのでやはり止めておこう。
本棚は外の光が当たらないようにしているので自室と言えど若干暗い。
本の大敵は虫と光だ。
どちらも本を劣化させる原因となっている。
この本棚にしまっているのはどれも貴重且つ大変役に立つ資料ばかりだ。
とても大事なものだから丁寧に扱わなければいけなかったのだが
…
。
(私は今まで乱雑に片付けていたな
…
)
大事なものだと言うのに、配置はバラバラ、何冊かまとめて床に放置していたり、あるページを開いたまま逆さまにしていたりと、やっていることは矛盾している。
反省しないとだな
…
。
そんなことを思いながら、ある本を手に取ろうとした。
ヒラ
…
「ん
…
?」
本の隙間から一枚の紙が床に落ち、拾い見てみた。
「写真か」
拾い見たのは紙、ではなくて一枚の写真だった。
「と、言うことは
…
」
もう一度、先程手に取ろうとした本を見てみた。
「やはり、そうか」
私が取ろうとしたのは本ではなくアルバムだったのだ。
アルバムは何枚もの写真を一冊にまとめることが出来る大きなもので、手に取ろうとすると案外重かった。
「っと
…
」
本棚から一冊の大きなアルバムを手にして椅子に腰をかけ、そのアルバムを開こうとしたのと同時だった。
「ライオコンボイ、おられますか?」
扉の外から声をかけられた。
「開いている。どうぞ」
声を発した者へ自室に入るように促すと『失礼します』と聞こえ、扉が開いた。
シュン
…
この基地の扉は全て自動のものである。
扉の前に立てばセンサーが感知し開くようになっている。
「ライオコンボイ。本日、仰せつかった任務は全て終了しました!」
自室の扉が開き中に入って来たのはこの基地のサイバトロン戦士の一人でもあり、私の息子のライオジュニアだった。
本日、私が命令した任務の全てが終了したこととの報告に来たのだ。
その場で報告終了ののち、私の方を向き敬礼する。
椅子から立ち上がり、アルバムを椅子の上へ置くと私もライオジュニアの方を向く。
「本日は私の代役、ご苦労様」
私達は親子ではあるが任務がまだ終わっていない今は上官と部下と言う間柄だ。
そして現在、私は休暇中であり本来ならその報告は必要ないのだが、彼なりのけじめなのだろう。
非常に律儀な子だ。
彼には何れこのサイバトロン小隊を率いてもらわなければならない。
それにはこれからも沢山の経験を積んで貰わなければならない。
これは私と同じくエネルゴンマトリクスを持つ者の宿命なのだ。
親子だからと甘くすることは出来ないのだ。
だから時には厳しくすることもあった。
最初は反発することもあったが、今は大分良くなってきている。
少しずつ任務を任せ出来ることを増やしていっている。
彼が一人前になるその時までに私が出来ることを精一杯教えていく所存だ。
自室に報告しに来たライオジュニアに私も敬礼を返した。
「父さん、何を見ていたんですか?」
互いに敬礼を解けば、もう上官と部下の間柄ではなくなり再び親子に戻る。
そうするとライオジュニアは私のことを父と呼ぶようになる。
任務終了後でも建前上、他の者達の前では私の名前を呼ぶようにと言っているが、二人だけの時は好きなように呼ばせているので『父さん』と呼んでくれる。
「部屋の片付けが終わって、本を読もうと思ったらそれがアルバムでね
…
」
私は椅子に置いたアルバムを手に持ち彼に向けて見せた。
「そうなんだ」
扉の前にいたライオジュニアが此方へと歩いて来る。
「君も見るかい?」
「はい!」
どんな写真があるのか興味があるようだ。
元気良く返事をしてくれる。
「じゃあ、一緒に
…
」
椅子ではなく、二人で床に座り、少し重たいアルバムを開いた。
パラ
…
一ページに何枚もの写真が貼られていた。
「あ、これ!」
写真と言うのは不思議なものだ。
その一枚を見ると、あの時、あんなことがあったな
…
等と思い出すのだ。
そのあとに、こんなことがあったな
…
と蘇ってくる。
写真一枚、一枚に思い出が詰まっているのだ。
「これ、父さんと一緒だ!」
ライオジュニアが反応を見せたのはある一枚の写真だ。
彼が自室に訪れる前の先程、このアルバムを手に取ろうとした時に落ちたものだった。
ビーストモードの私とライオジュニアが写っている一枚だ。
確かこれは、たまたま居合わせたタスマニアキッドが撮ってくれたものだったな
…
と思い出す。
私とライオジュニアの二人、とても良く写っている。
タスマニアキッドの写真の撮り方もとても上手だ。
少し視線を変えると、隣で一緒に写真を見ている息子の目は輝いているように見えた。
「ふふ
…
」
そんな息子を眺めていると何とも微笑ましい気になる。
だが、そんな気分もこのあと一気に青ざめることになるのだった。
これまで何枚も貼られている写真を一ページずつ見て来たが、ライオジュニアが次のページを開いた時にそれは起きる。
「あ、このページは父さんばっかりのだ」
「ライオジュニア、それはっ
…
!」
そのページにある写真はどれも私だけのもので、写っている私は全て酒を飲んでいるか、酒を大事そうに持っているものだったのだ。
器で酒を飲んでいるもの、酒瓶と升を持ち上機嫌で写る私の姿。
極めつけはビーストモードで何ともおかしな格好をしながらビールジョッキを持つ私と『酒』と書かれた大きな徳利を持っている普段の姿の私である。
おまけにこのページの周りには酒瓶と小さな徳利とお猪口のセットの絵が丁寧に装飾されていた。
因みに私が抱えていたり、傍に置いてある酒瓶に貼られているラベルはどれも私の大好きで今、自室にもある『コンボイ殺し』だ。
こんな形で酔った父の醜態が晒されてしまった。
父の面目が丸潰れである。
「父さん、お酒好きだもんね」
「ゔっ
…
!」
その一言だけ言うと、ライオジュニアがアルバムの次のページを開いた。
幸いにも酔って暴れたものは撮られていなくて醜態を晒したのはあのページに貼ってあった写真だけだった。
そのあとは何気ない日常のものばかりで安心した。
パタン
全てのページを見終わり、大きく重たいアルバムを閉じた。
「あ、もうこんな時間だ!」
私がアルバムを閉じると、ライオジュニアが声を挙げる。
その声に顔を上げ、自室も見た。
自室は薄暗くなっており、窓に目を向けると、空はオレンジ色に染まっていた。
日も傾き始めていて、そろそろ夜が訪れようとしているのだ。
最近、時間が過ぎるのがとても早く感じる
…
。
本日は自室の清掃と、そのあとに自室に来た息子と一緒にアルバムを眺めただけで、もう一日が終わろとしていた。
床から立ち上がるとアルバムを出してきた本棚へと向かう。
「じゃあ父さん、僕はこれで
…
」
ライオジュニアも床から立ち上がると扉の方へと向かった。
「あぁ、本日はお疲れ様。また明日も頼むよ」
「はい。失礼します」
今度は敬礼ではなく手を軽く挙げると彼は出て行った。
「はぁ
…
」
激しく動いた訳でもないのに何故だかとても疲れた。
これは別のことで気力が削がれたからなのだろうか
…
。
また溜息を吐いてしまった。
溜息を吐くと幸せが逃げる
…
とは言うが、吐きたくて吐いている訳ではない。
「ふぅ
…
」
それに最近は息子と過ごす時間も減ってきたような気がする
…
。
任務終了後には、いつも彼が自室を訪ねて来てくれて一緒に過ごすのだが、最近は彼も他の者達(しかし、この小隊の者達ではない)と通信したりするのが楽しいようで、此処を出るとあとはずっと翌日まで自室に籠もってしまうのだ。
他の者達との通信したりする遊びは最近、若者達の間で流行っているそうだ。
息子が他の者達、特に同世代の者達と仲良くしてくれるのは父としては嬉しくもあるが、少し寂しくもある。
「子離れしないとだな
…
」
そうは思うが、やはり寂しいものだ
…
。
これまでの私には身内等誰もいなかったのに、この惑星ガイアに来て突然、息子が出来たのだ。
最初は突然、現れた者に『自分の息子だ』と言われても驚くだけで、すぐには認めることが出来なかったが、ライオジュニアと過ごしていって少しずつ彼のことを理解し信用出来るまでになり、私の息子として、このサイバトロン小隊を率いる次の後継者と認めた。
今までは分からなかったが、子を持つとこんな感情が湧いてくるのだな。
うまく説明は出来ないが、我が子には他者を愛するのとは違う別の愛が存在するのだ。
それはとても愛おしいものだ。
「さてと
…
」
すっかり暗くなり夜にはなったが私の休暇はまだ終わっていない。
再度、本棚に戻り、アルバムをしまおうと思ったがやめた。
アルバムを持ったまま本棚を離れ机に向かう前に、酒を飲む時に使う升を探した。
前に嗜んだ時にしまった筈だが、見当たらなく諦めて傍にあったお猪口を持ち机の上に置いた。
ドサッ
カチッ
アルバムを机の上に乗せ、手元に設置してある照明器具のスイッチを入れると、椅子を引いて腰をかける。
ポンッ
机の上に置いたままの飲みかけの酒瓶の栓を開け、お猪口に注ぐ。
パラ
…
先程、息子と一緒に見たアルバムをもう一度、開いた。
誰かと見るのと一人で見るのとはまた違うように感じるのだな。
今夜はこのアルバムを見ながら好きな酒を嗜むことにしよう。
酒の肴がアルバムの写真とは中々、趣があると思う。
思い出に浸りながら飲む酒も悪くはないだろう。
「乾杯
…
」
開いたページにあった一枚の写真に向けて酒を注いだお猪口を掲げた。
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