雨月 ひより
2024-03-03 23:34:59
4817文字
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late summer night event

Twitter(X)のハッシュタグ『#ふぁぼした人の絵を勝手に小説にする 』でリクエスト頂きましたリヒシモ。
タイトルは『夏の終わりの夜の出来事』と言う意味です。
※Google翻訳にて。

今夜の依頼はとても疲れるものであった。

今夜引き受けた依頼は何時ものよりも肉体的、精神的にも疲れるものであったのだ。



「ではシモン。また朝方に

依頼が終わり疲れた身体で屋敷に戻り、廊下を進むと直ぐにリヒターの部屋の前まで着いた。

毎夜リヒターは部屋に入る前に此方を向き、少しの間、別れの挨拶を口にするのだ。

「あぁ、また朝方に

彼が扉を開け、中に入るのを見届けてから私は自室に戻る。

彼と行動を共にするようになってからの私の習慣だ。

リヒターの部屋の其の隣が私の部屋だ。

今夜も何時ものように彼に少しの間の別れを告げられて、見届けた後に自室に戻ろうとしたのだが

グラ

「っ

何時も明かりは点けずに自室まで向かう見慣れている光景が、今夜は歪んで見え身体がふらつく。

ガタッ!

その後、何かに掴まらなければ立っていられない程にまでなってしまった。

掴まる物は何もなく、壁に手を付こうとしたら身体ごとぶつかってしまったようだ。

こんな夜中に大きな音を立てたら他の者達を起こしてしまうのに

そう分かっていても何故だか身体が言う事を聞かなくなった。

何ががおかしい

ガチャッ

「シモン!」

先程、自室に入るのを見届けた筈のリヒターの声が近くで聞こえて来た。

私の名前を呼び、動けなくなってしまった私の身体を立たせようとしてくれた所までは覚えているのだが、其の後の事が分からない。

其処からの記憶が飛んでしまったのだ。

気が付いた時には何処かの部屋の天井が目の前に現れたからだ。



「此処はっ?!」

起き上がろうとしたが頭に痛みが走り、出来なかった。

「くっ

起き上がることを諦め代わりに眼球を動かし自分が今、何処に居るのかを確かめようと辺りを見渡す事にした。

此の状態で見える範囲で分かったのは何も置いていない殺風景な部屋だと言う事と、私が横たわっているのは何者かのベッドの上と言う事だ。

ベッドに敷かれているシーツと、私の身体に掛けられているタオルケットが僅かに視界に入った。

今の季節は夏で昼間よりかは夜は気温が下がるが、其れでも毛布を掛けて寝るには暑く感じる。

特に私のような身体つきの者には熱くなり過ぎてしまうのだ。

(もしかして先程のふらつきは暑さの所為か?)

最近は暑く寝苦しい夜が続いていて、きちんと休息が出来ていなかったのかもしれない。

私自身はさ程、感じてはいなかったと思うが、身体には負担がかかっていたと言う事だろう。

とても暑い日には他の者達も使う部屋、集まる場所では『エアコン』と言う機械を使い涼しい風を入れている。

勿論、各部屋にも備え付けてあり私の自室にもエアコンがあるが、今日まで使った事が一度もなかった。

使い方が分からないと言うのもあるが、私はあの涼しいいや、冷た過ぎる風が苦手でどれ程暑くとも窓を開けて自然の風を取り入れるようにしていたのだ。

窓を開けても風が全く入って来ない夜でもエアコンを使おうとはして来なかったのだ。

どれ程、健康に気を付けて規則正しい生活を送っていても具合を悪くしてしまっては意味がない。

(最新の文明に頼るべきだったな

之で自分の体調管理がなっていなかった事が証明されてしまったのと同時に此の部屋の主に迷惑を掛けてしまった。

重たい身体の私を己の部屋に運びベッドまで占領させてしまったのだ。

(そうだ、此の部屋の主に謝らなくては

ガタ

「ん?」

隣で僅かに何かが動いた音が聞こえ、顔をそちらに向ける。

明かりは一切点けていない為に部屋は暗く、最初は隣で動いた何かが分からなかったが徐々に暗闇に目が慣れていくと、身体の輪郭が浮かび上がり其処で分かった。

「そうか、君だったのか

ベッドに横たわっている私の直ぐ隣には先程まで依頼を共にし、朝方までの別れを告げたリヒターだった。

此処は彼の部屋なのだ。

自室に戻る途中にふらついて壁にぶつかり、動けなくなってしまった私を自分の部屋に連れて来ると、直様ベッドへと私を横たわらせてくれたのだ。

そして、自分は隣でベッドに横たえた私を見ていてくれていた。

部屋を覆う暗闇に完全に慣れると、はっきりとリヒターの顔が見えた。

ベッドの端に椅子を持って来て座り、眠る私を見ていたようで何時の間にか眠ってしまった。

瞼を閉じ、椅子の背もたれにに寄り掛かり、腕を組んで眠っていた。

苦しそうな体勢なのは見ていて分かる。

瞼がしっかり閉じられているが、其の眉はとても険しそうなのだ。

眉間に皺が出来ていて、椅子では如何に寝心地が悪いのは見て分かる。

「済まないリヒター。君のベッドを占領してしまって

再び起き上がろうとすると、先程の頭の痛みは襲って来なかった。

隣の椅子に腰を掛け眠るリヒターを起こさないようにゆっくりと起き上がると、彼をそっと椅子から降ろし、自分が占領してしまった彼のベッドへと横たえる。

彼をベッドに横たえると私は自然と壁へと追いやられてしまった。

(しまった、之では動けないな

今更、彼の上を跨いで降りるのも申し訳ない。

其れに眠っている、或いは横たわっている者の上を跨ぐのも失礼にあたる事だ。

其の事もあるが、一番に思ったのは私の身体は大きく、動いた拍子に眠っているリヒターを起こしてしまうかもしれないのと、動いた途端に横たえた彼をベッドから落としてしまうかもしれなかった。

一人用の彼のベッドの上に二人で居るので、当然の事ながらとても狭い。

とても狭く、私は退いた方が良いとは思ったが、彼が重たい思いをしてまで私を自分のベッドに運んでくれたのも無碍には出来なかった。

其れはかえって彼にも申し訳ない。

色々考えた結果、無理に退く必要も無いだろうと行き着いた。

(今夜は此のままリヒターの隣で

今夜はリヒターの行為に甘え、彼の部屋で一つのベッドを共にしよう。

隣に横たえたリヒターの顔は先程、椅子に座って眠っていた時とは違っていた。

眉間に寄せていた皺は消えていて、強く瞑って見えた瞼も今は何だか緩く瞑っているように感じる。

大きな身体つきの男二人が一つのベッドに横になっているのはとても狭いが、何故だか窮屈だとは感じなかった。

其れは狭い場所でも好きな者と共に居る事が出来ているからなのだろうか

………………………

もう直ぐ夜明けが近い。

朝起きたら身支度を整えて此処から少し離れた所にある教会に行き、祈りを捧げなければならないのだ。

少しだけでも休息を取らなければ

隣で眠るリヒターの顔を眺めていると自分の瞼が自然と閉じようとしている。

身体が休めと言っているのだ。

抗う理由は何処にも無いのだから、私も眠る事にしよう。

「少しの間、君の場所をお借りする。リヒター

私には窮屈で無くとも、もしかしたら彼の身体には窮屈に感じるかもしれない。

其の事を含めた断りを、眠るリヒターに告げて彼の隣に横になった。



ドンドンドン!

「ねぇー!リヒ兄いるー?!」

突然、何者かの高い声と共に部屋の扉を叩く音が耳に入ってきた。

「えっ?!あっ!ああ?!」

扉の外からの声に反応した隣りにいるリヒターの大きな声も聞こえて、私も目が覚めた。

しかし、瞼を開けても彼の姿がぼんやりと見えるだけだった。

まだ周りの景色等がはっきりと見えてこないが、彼がベッドから降りたのは分かった。

「いつも朝早いのに今朝はいなかったからさ!どうしたのかなーと思って来てみたんだよー!具合悪い?!大丈夫?!」

「いや、まだ寝ていただけだっ!」

「それなら良いけどさ!これから教会行ってくるんでしょ?!」

「あ"っ!!」

彼の野太い驚き声が部屋に響き渡り、之で私も完全に意識が覚醒した。

扉の外で何者かと話しているリヒターの顔は朝から青ざめているのがはっきりと見えた。 

「シモンッ!」

直様私の方を見ると更に驚いた顔を向けたが、また直ぐに扉の方を向いてしまった。

「ッ!?」

彼の反応におかしく思い、辺りを見ると其の理由が分かった。

私達の周りには己が着ていたであろう服がベッドの上、床に散乱していたのだ。

此の有様に互いに言葉を失ってしまった。

私はまだ寝惚けているのだろうかと思う程の散らかりようだ。

何故、此のような事になっているのか分からない。

互いに暑くなり寝ている間に脱いでしまったのだろうか。

其れとも私達は

……………………………

私とリヒターとの間には妙な空気が漂い、周りの空気も暑く感じる。

(あ、暑い?)

リヒターの部屋にもエアコンは備え付けてあるが、使っている様子は見られない。

おまけに窓も閉めている。

私達が此のような姿になっている理由は此れだ。

昨夜も暑かった。

一人用のベッドで身体の大きい男が二人で寝ていれば更に熱気が上がる。

其れで暑くなり何時の間にか服を脱いでしまったのだ。

其れ以外に理由はない。

「リヒター

つまり、其の互いに行為をしていた訳ではないのだ。

其の事を彼に告げようとした。

「あ!そう言えばシモンママもいないんだけど何処にいるか分かる?!」

扉の向こう側で高い声でリヒターと話していた者がむらびとだと漸く分かった。

むらびとはリヒターの事を『リヒ兄』と呼んでいる事を今、思い出した。

最初に気付けなかったのは私の意識がまだ覚醒していなかったからだった。

むらびとは何時もは朝が早い私達が今朝に限って来ない事を心配して来てくれたのだ。

きっと私の部屋にも行ったのかもしれないが、私が部屋に居なかった為に彼の部屋まで来てくれたのだろう。

そうならば、むらびとには申し訳ない事をしたと思うが、私達の今の此の状態を彼に晒す訳にはいかない。

此の部屋の主であるリヒターが扉を開けてしまうと私達の有様を見られてしまう。

バタバタ!

リヒターは床に散らばっていた服を掴むと慌てて着始める。

「シモン!俺が先に出て行くので、あとから出てくれっ!」

「あ、あぁ

素早く身支度を整え最後に白い鉢巻を額に捲くと、私の方を見る事もなく部屋を出て行ってしまった。

ガチャッ
バタンッ

素早く扉を開けて閉めると、廊下にいるむらびとと何か話す声が聞こえた。

しかし、直ぐに二人の声は遠くなり、とうとう聞こえなくなった。

あの行動もリヒターなりの配慮だったのだろう。

本当に彼は優しい子だ。

…………………

しかし、此の誤解をどう解けば

もしかしたら彼も勘違いしてしまっているかもしれない。

「其れよりもだ

其の事も大事だが、今は早く私も此処を出て先に行ったリヒターの後を追わなければ。

呼びに来てくれたむらびとを自分の部屋から遠ざける為に彼は素早く身支度を済ませて出て行ったのだ。

彼はその足で先に教会に向かっただろう。

私も直ぐに彼の後を追い掛け、朝の祈りを捧げに教会に行かなければ。

リヒターのベッドから降り、床に落ちている自分の服を拾い着始める。

装飾品ももう一度、身に付けた。

着替え終えると、最後に彼のベッドの上で、くしゃくしゃになっていたタオルケットを畳んでもう一度置いた。

そして、忘れ物が無いか良く確かめる。

急いではいるが、忘れた物が無いか最後に確かめるのも大事な事だ。

「良し

全て確かめ終えてリヒターの部屋の扉を開け、彼が一足先に行った教会へと向かった。