雨月 ひより
2024-03-03 23:27:46
6048文字
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A song played with a cute singing voice

Twitter(X)のハッシュタグ『#ふぁぼした人の絵を勝手に小説にする 』でリクエスト頂いたリンプリ。
※ちょっぴりキス描写を含みますのでご注意下さい。
タイトルは『可愛い歌声と奏でた歌』と言う意味です。
※Google翻訳にて。

オレは妙なモンスターに好かれたようだ。

此処に来る前からずっとモンスターと闘って慣れているから今に始まったことではない。

だけど、好かれるようなことは今までなかったから少し戸惑った。

おまけにこのモンスター、喋れるときたもんだ。

意思疎通が不可能な方がどれだけ良かっただろうか。

とは言ったが、あっちから特に何かをしてくる訳ではなかったから挨拶の一言、二言交わす程度に相手をしていた。



今日は乱闘が入っていた。

「リンクしゃん、頑張ってくだしゃ〜い!」

後ろから声援が送られる。

そのモンスターからだ。

丸い体で薄いピンク色の耳が生えたモンスター。

丸い目と額にある綿のような髪?が特徴でもある。

名前は『プリン』

このスマブラに来て初めて出されたお菓子と同じ名前だ。

美味しそうかつ、可愛い名前だがこの薄ピンクのモンスターは美味しそうには見えない。

(そもそも食べられるのかが分からないが

「プリンの声援が凄いな。期待に応えて頑張らないとなリンク!」

「はぁ

今日の対戦相手であるフォックスからも言われる。

いや、プリン、君も闘う側だろ

プリンの大きな目は今はオレを見ているが、その目は赤いハートのマークを浮かべていた。

(何だかハートの器みたいに見えて来た

今日はチーム戦だった。

オレとプリンは緑、対戦相手のフォックスともう一人(オレがいる所からでは姿が見えないので誰だか分からない)は青に分かれてのバトルだ。

ステージのモニターには今日の乱闘に参加していない人達がオレ達を応援している所が映し出される。

人数は少ない為、大半の顔は把握出来るのだが、何人かは見当たらなかった。

応援をする、しないも自由だ。

応援されるのは嬉しいが、それぞれが自分の好きなことをやれば良いとオレは思う。

モニターからと、共にチームを組んだプリンのそんな応援も虚しく今日の乱闘の結果は引き分けとなった。

引き分けなど対戦ルールにはなく、普段だったらサドンデスで決めなければならないのだが、今日は何故だかサドンデスにならなかったんだ。

ステージから屋敷に戻って来ると応援席にいた子供達の話し声がした。

「さっきのリンク達とフォックス達のチームバトルって何かマスターのミスらしいんだってー!だからこのバトルノーカンってことになったっぽいよ?」

「えー?!管理人なんだからちゃんとしなくちゃダメじゃん!」

「良く分かんないんだけど、マスターも試行錯誤中なんだって」

「え?何それ?」

「さぁ?」

盗み聞きしたくてした訳でなく子供達の大きな声でのお喋りで聞こえてきた内容は、今日の乱闘はマスターハンドのミスによっての出来事のようだ。

理由は不明だがサドンデスにする設定を忘れたらしい。

珍しいこともあるもんだ。

屋敷の管理者もあり、あちこち手が回らなくて気付かなかったんだろう。

右手なだけに、か?

(ふーん、ミスか

まぁ、たまにはこんなのもあっても良いんじゃないか?

オレはバトルの勝敗には興味はないし、此処に来たのもある日、マスターハンドから此処への招待状を送られたからなだけである。

此処に着くと既にオレ以外の人達がいて、全員揃った所で突然、此処にいる奴全員と闘い、共同生活をするって言われたんだ。

今までずっと一人暮らしが長かったから、突然、他人と(一人だけじゃなくて何人も)一つ屋根の下で暮らすことになるのかと不安に思ったが、意外とすぐに慣れた。

屋敷中に響き渡る子供達の声と大人達の声、どちらも賑やかいや賑やかを通り越して騒がしいがそれでも自分以外の声がすることは良いもんだ。

だが、たまには一人になりたいと思うことがある。

賑やかな騒がしいのも良いことだが、時々はそんな日常から離れたいと思うことがあったりもする

そんな時は夜に屋敷を出て歩くことにしているんだ。

今夜も他のみんなの賑やかな騒がしい声がする屋敷をそっと出て行った。



オレ達が共同生活をしているこの屋敷は丘の上にあり、買い物などの用事がある時は麓の街まで降りていくが、今夜は麓の街とは反対方向に歩き出した。

少し歩くと草原が見えて来るがそこは通過点でしかならない。

この草原もとても綺麗な場所だが目的地は此処じゃないから更に前へ進んでいく。

辿り着いたのは崖の上だ。

晴れた日なんかは青い空と海が目の前に広がる。

朝日、夕日が海に映ると水面がキラキラ輝いていてとても綺麗なんだ。

残念ながら今は夜で、更に星も月も出ていない真っ暗な空と海だ。

波の音と吹いてきた風で海の匂いが分かるだけ、遠くに何かがうっすらとしか見えない。

空も海も真っ暗だが、それは仕方ない。

騒がしい声が響く屋敷を離れたオレは時々この崖の上で、海に背を向けてオカリナを吹くのが好きなんだ。

前まではオカリナが吹ければ何処でも構わなかったが、今はこの場所でないと気分が乗らなくなった。

ポケットからオカリナを出す。

このオカリナは『時のオカリナ』と言って、吹口にハイラル王家の紋章が施されている青白いオカリナだ。

代々ハイラル王家にあるものだが、ある理由によりゼルダ姫からオレに託された大切なオカリナだ。

このオカリナを見るだけでもオレが来たハイラルの世界を思い出す。

そして、オカリナを吹くことによって更に思い出が蘇ってくるんだ。

時のオカリナを構え、吸口を咥え穴を押さえたら、息を吹きかけて音を出すんだ。

目を閉じて吹いたのは『水のセレナーデ』だ。

ちょうど海を背にしているし、ピッタリだと思う。

『♪〜♪〜♪♪〜』

時のオカリナで吹いた曲には不思議な力が宿る。

曲を吹くとハイラルの世界の限られた場所にワープすることが出来るんだ。

此処はハイラルではないからワープすることは出来ないが、それでも時々、この崖の上に来て吹く。

別にハイラルに帰りたい訳ではなく、ただ曲を吹いて懐かしみたいだけだ。

(此処で吹いてもワープ出来ないから帰れる訳がないけどな

オレが吹ける全ての曲は石に刻まれていたり、人から教えてもらったものばかりだ。

立派なオカリナを託されているんだから、自分で作れたらもっと良いが、この世界でも忙しくて作る時間もないし、そもそもオレにはそんな才能はない

パチパチパチパチ

「ん?」

拍手が聞こえてきて目を開け、オカリナから口を離すとプリンの姿があった。

「リンクしゃん、楽器の演奏できるんでしゅね!凄いでしゅ!」

小さな手を前に出して叩いて拍手を送ってくれていた。

「いつの間に此処に?」

目を閉じてオカリナを吹いていたからプリンが目の前にいたことが分からなかった。

「リンクしゃんがお屋敷から出て行くの見たんで、こっそりあとをつけて来たんでしゅ!」

「そ、そうなんだ?」

オレが屋敷から出て行くのを見つけたらしく、そのままあとをつけて来たらしい。

歩きながら考えていたのもあるのか、つけられていたことに全く気が付かなかった。

考え事をしてながらとは言え、こんな小さな足から出る音を拾えるはずがないか。

流石に耳が長い人種であるオレでもそれは無理だ。

「リンクしゃん、さっき演奏していた素敵な曲、何ていう曲なんでしゅか?」

「あれか?水のセレナーデって曲だ」

さっき吹いた水のセレナーデもハイラルの世界でとある人から教えてもらった曲の一つだ。

セレナーデとは各国によって呼び名は変わるが、どれも同じ意味だ。

簡単に言えば恋の曲らしい。

とあるその人が水のセレナーデを教えてくれる時に『幼き頃の恋心を調べに乗せた曲』だと言っていた。

誰の幼き頃の恋心なのかは未だに分からない。

去り際に聞いたら『君は風情のないヤツだな』と笑われてしまって結局、教えてはくれなかったな

この曲を吹くとそんなこともあったなと、いつも思い出した。

「その素敵な曲、プリンも歌ってみたいでしゅ!」

「え?」

「リンクしゃんが持ってる、その楽器に合わせれば歌うことが出来るでしゅ!」

「うん、まぁ、良いけど

「やった、でしゅっ!」

オレが吹いていた曲を聴いていたプリンに褒められたのと共に、一緒に歌いたいと言われたが、特に嫌とも感じなくて応じることにした。

その時のプリンの嬉しそうな顔が可愛かった。

拙いオレの吹いた曲なんかでこんなに喜んでくれるのかと。

幾つになっても褒められればやっぱり嬉しいもんだな。

そう言えば褒められたのっていつ以来だろう

それよりも、オレはプリンが歌っている所は乱闘の時しか見たことがない。

だがプリンの歌声は技の一つな為、近くで聴くと誰でも眠ってしまうんだ。

眠っている間にプリンに攻撃された衝撃で目を覚ますから、今まで最後まで聴いたことがなかった。

眠ってしまう前にほんの僅かに聴ける歌声はとても可愛いものであることは分かっているけども

もしかしたら、乱闘以外でプリンの歌声が聴けるかもしれないんじゃないのかと興味も出てきた。

(どうなんだろう?乱闘じゃないから、最後まで歌声聴けるのか?)

「じゃあ、曲、お願いしましゅ!」

「あ、あぁ

プリンに催促され再びオカリナの吸口を咥え目を閉じる。

吹いたのは勿論、先程まで吹いていた『水のセレナーデ』だ。

オレが吹き始めると、プリンはそのあとに合わせて歌い出す。

『プ〜♪プリン〜♪』

オカリナの音色とプリンの歌声が見事に重なり合う。

(あれ?眠くらない?)

プリンの歌で眠くなるのは乱闘の時だけなのか。

今、オカリナを吹いていても特に眠気を感じていないが、それはプリンが水のセレナーデを歌っているからなのだろうか。

じゃあ、プリンが乱闘の時に歌っている歌を今、此処で歌ったらどうなるんだろう

「なぁ、プリン

「何でしゅか?」

水のセレナーデの合奏が終わり、プリンを呼んだ。

「今度は乱闘でいつも君が歌っている歌を吹きたいんだけど

「それは良いでしゅけど

プリンも乱闘以外では歌っていないのか、どうなるのか予想が出来ないのか『良い』と言った言葉は何だかはっきりしていない。

「眠くなったら、乱闘みたいに叩いてくれれば良いからさ。やってみようよ?」

今度はオレの方からプリンにお願いしてみた。

「分かったでしゅ!」

すると今度はプリンから先に歌い始めて、それを見てオレは吸口を咥えたオカリナを吹いた。

『プ〜♪プリン〜♪プ〜♪プリ〜♪プ〜♪プリ〜ン〜♪』

これがプリンが乱闘の時に歌っている歌だ。

二人で同じ歌を奏でているからなのか、今の所はまだ眠くならない。

乱闘だったらもうこの辺りで眠ってしまうが、まだ大丈夫だ。

『♪〜♪〜♪〜』

更に歌は続くがそれでもまだ眠くはならない。

そして、最後まで歌ったが全く眠くならなかった。

これでプリンの歌声を聴くと眠くなってしまうのは、乱闘の時だけだと言うことが分かった。

「プリンの歌、やっぱり上手だな」

一度位は最後まで全く眠らずに聴いてみたかったのが、やっと聴くことが出来た。

最初の方であんなに上手なんだから、最後まで保っていられるのは当たり前だな。

「プリンの歌、最後まで聴けたし、オレもプリンの歌吹けて良かったよ。ワガママ聞いてくれてありがとう」

「プリンもリンクしゃんが演奏していた曲歌えてよかったでしゅ。ありがとうでしゅ!」

オレはプリンに、プリンはオレに、お互いがそれぞれお礼を言った。



「そろそろ屋敷に戻るか」

どうも今夜は月も星も出ない夜になりそうだ。

海の水面に浮かぶ月や星を見たかったが、空は未だに真っ暗でこのまま待っていても期待出来そうにない。

もう帰った方が良いだろう。

「そうするでしゅ」

オレ達は崖の上をあとにした。



帰り道、プリンは小さな足でオレに追いつこうと走るようにして歩いていた。

見ていてちょっと可愛いが、それだと疲れてしまうだろうからオレは隣でプリンの歩く速さに合わせて歩くことにした。

(そう言えば、オレの足に良くついて来たな

崖の上に着くまで色んなことを考えながら歩いていたとは言え、プリンにはオレの歩く速さを追いかけるのは大変だったんじゃないだろうか。

だとしたら既に疲れているかもしれない。

「なぁ、プリン」

隣で歩いているプリンを呼んで立ち止まる。

「何でしゅ?」

プリンがこっちを見て立ち止まったのと同時にオレはプリンを抱えると右肩の上に乗せた。

「いいんでしゅか?」

耳元でプリンが『良いのか』聞いてきた。

すぐ傍にいるから当たり前だが耳元でプリンの可愛い声が聞いてきたんだ。

「良いよ」

それ以外は特に理由は言わなかった。

ただ、オレがこうしたかっただけだ。

「ありがとうでしゅ。リンクしゃん、大好きでしゅ」

ちゅっと音がしたと思ったら柔らかい何かが頬に触った。

そして周りには何故か小さなハートが幾つも飛んで来るのが見えた。

視界に赤く小さなハートが幾つも飛び込んできたんだ。

大きさは違えど、昼間の乱闘の時にプリンがオレに向けて飛ばしたものと似ていた。

本当にオレのことを好きなんだな

さっき頬に当たったのはプリンの唇だ。

プリンなりのお礼だったんだろう。

それも嫌な気分にはならなかった。

「落ちないように気を付けてな」

「はいでしゅ」

首元にプリンの小さな手が回される。

その小さな手は温かい。

オレはプリンの背中に手を添えて落ちないように歩き出した。



屋敷までの帰り道に色々なことをプリンと話しながら歩いた。

とは、言ってもオレはプリンの話を聞いていた位だけど。

プリンが話してくれるそれまでオレは、スマブラには大して興味はなかったが、今夜、プリンが他のみんなのことも教えてくれたことにより少しは興味を持つことが出来た。

スマブラのことは勿論だけど、オレは今、自分の肩の上で話しかけてくれるこの可愛いモンスターいや、可愛い『プリン』と言う存在にもっと興味を持った。

こんなにもオレを好きになってくれているのは何故なのか凄く気になる。

でも今は傍でプリンの可愛い声を聞きながら歩くことにし専念しよう。

そのことはあとで聞けば良い。

スマブラに来てまだ数ヶ月、まだまだ知らないことは探せば分かるんだからな。



オレは右肩の上に可愛いモンスター、プリンを乗せて屋敷まで歩いて行った。