雨月 ひより
2024-03-03 23:18:23
5289文字
Public
 

天使との秘密の恋

Twitter(X)のハッシュタグ『#ふぁぼした人の絵を勝手に小説にする 』でリクエストされたお話。
ポケモントレーナー(男の子)とピットのお話です。
※話の中ではポケモントレーナー(男の子)は『レッド』にしています。

「悪ぃが、コレ、アイツの所に持って行ってくれ」

部屋に入ろうドアノブに手をかけたのと同時に黒い服を身に着け、服と同じ黒い翼を持つ天使くんから声をかけられる。

「それはいいんだけど、何処に届ければいいの?」

「ピットの所にだ」

黒い天使くんから詳しく聞くと、ピットくんが体調を崩してしまい、ピットくんの上司にあたるパルテナ様から彼の元に行ってほしいと頼まれたとのこと。

だけど、自分ではピットくんの所には行きたくないらしい。

この黒い天使くんの名前もピットくんって言ったっけ。

でも彼は黒い服、翼を持っているから自分で『ブラックピット』って名乗っていた。

僕も含めてみんなが彼のことを『プラピ』って呼んでいる。

彼はブラピと呼ばれることにちょっと不服らしいけど、ピットくんによく似ているからな

僕も最初に来た頃には間違えそうになっていたけど顔付き(特に目力)と話し方が違うことで区別出来るようになってきた。

「分かった」

部屋のドアノブから手を離し、パルテナ様から渡されたと言う物をブラピくんから受け取ると、彼は頷いただけで去って行ってしまった。

「必要なものだったらいけないし、早く届けてあげよう」



僕の部屋からだとピットくんの部屋は少しだけ遠い。

何部屋か先に行くと彼の部屋がある。

それにしても、ピットくんやブラピくんのような天使達でも僕ら生き物達のように体調を崩すこともあるんだ。

じゃあ、女神様であるパルテナ様もそうなのかな?

この世界には僕の知らないことがまだまだ沢山あるな。

ポケモン達のことだけを学んで来た僕にはこのスマブラがとても新鮮な場所だ。

色んな世界から来た人達が同じ場所に集まってバトルして、終わったらこの屋敷の中で一緒に生活をしている。

でも、全員が揃うことなんてほんの僅かだった。

僕も含めて、みんなそれぞれの世界でお仕事があるから、いつも誰かが欠けていて揃うことなんかない。

今日も朝から顔を見ていない人達がいる。

それぞれの世界でのお仕事があるのか、それともバトルが入っていないから部屋から一歩も出てこないかは分からない。

人のプライベートにあまり干渉するのは失礼だし、されても嫌だからしない。

ピットくんもその一人だ。

でも、彼は体調を崩していて(ブラピくんから聞いた)今日は朝から顔を見ていなかった。

少し行くとピットくんの部屋の前まで着いた。

コンコン

彼の部屋のドアをノックする。

「ピットくん、いる?」

体調を崩しているんだから部屋にいないことはないだろうけどドアをノックして一応、声をかける。

「どうぞ

向こう側からか細い声が聞こえてきて、ドアを開けた。

ガチャ

「体調悪い所、ごめんね」

部屋の中に入るとベッドの上が盛り上がっていた。

バサ

「どうしたの?」

布団を剥いだ音がしてピットくんが顔を出して聞いて来た。

「さっきブラピくんから頼まれて、これを持って来たんだ。彼もパルテナ様から頼まれたらしいんだけど、何でだが君に直接渡したくなかったみたい。机の上に置いておくね」

ブラピくんから頼まれた(彼はパルテナ様から頼まれたらしい)物を机の上に置いた。

「そうなんだ。わざわざありがとう

持って来てくれたことにお礼を言うと、ピットくんが机の上に置かれた物を見ようとベッドから起きて立とうとした。

だけど、体調が悪いのもあってふらついてしまった。

「あ、危ないっ!」

ガシッ!

咄嗟に彼を掴んだけど、僕も踏ん張ることが出来なくて一緒にベッドへ倒れ込んでしまった。

ドサッ!

「大丈夫?あとで見ればいいのに

怪我をしていないか確かめる為にピットくんに声をかける。

当たり前だけど、目の前には彼がいた。

僕達は二人で一人分の広さしかないベッドの上にいた。

そうだ、さっき立ち上がろうとしたピットくんがふらついたから手を伸ばして掴んでそのまま倒れ込んだんだ。

「平気だよ。ごめんね、突然よろけたりして助けてくれてありがとう

目の前の彼はまたお礼を言った。

『あっ

僕と彼の声が重なった。

突然のハプニングとは言え、これだと僕が彼を押し倒しているように見える。

僕がベッドに倒れているピットくんの上に跨っているんだ。

おまけに僕は彼の両手首を掴んでいた。

「わっ!えっ、とごめん!今、どくからっ!」

「ううん!僕が退くよ!」

「えっ、ちょっと待って?!」

「あ、あれっ?!」

やっとどんな状況か飲み込めた僕らは、どちらもどこうとしてしまって慌てた。

僕がどこうとすると、彼も一緒に動いてしまって離れられなかった。

「い、一度、冷静になろう!僕が動くからピットくんはそのまま動かないでいて!」

「分かったっ!」

どちらか片方が動き、もう片方が動かなければどくことが出来るのに二人でパニックになってしまって冷静さを失っていた。

一声かけたことで何とか落ち着き、僕は彼からどこうとする。

「っ

今までピットくんの顔をこんなに間近で見たことはなかった。

ソロバトルでもチームバトルでも一度も彼と組んだことはなかったのかもしれない。

このスマブラには沢山の人達が来ていて、バトルになるといつも相手やチームメンバーが誰なのかは当日にならないと分からないことがあるんだ。

人数が多すぎるのもあってか、ほとんどの人達とは初めて来た時の自己紹介程度とすれ違った時に軽く挨拶をしただけの関係性だ。

今日だって、ブラピくんから頼まれなければ彼の部屋に訪れることはなかっただろう。

南国の海のような澄んだ青色の目が僕を見上げている。

少し怪訝な表情をしているのが何だか妙な気持ちにさせる。

どかなければいけないのに、彼の可愛らしい姿に見惚れてしまった。

フワ

片方の手首を離し、そのままピットくんの髪を撫でる。

彼の茶色の髪はフワフワしていて柔らかい。

髪の状態がとてもいいと前髪に出来る『天使の輪』が見える。

彼は本物の天使だ。

だけど、一般的な天使とは大分イメージは違う。

頭の上には天使の輪はないし、真っ白な翼があってもいつも飛べる訳ではない。

パルテナ様から貰える『奇跡』と言うものがなければ彼は飛ぶことが出来ないんだ。

飛べない天使

今の彼は天使であって天使ではないのかもしれない。

撫でていた彼の柔らかい髪から手を離して頬に伸ばす。

「レッド、くん?」

彼の口から僕の名前が出てきた。

自分に跨ったまま何をしているのかと聞きたいんだろう。

僕だって最初はすぐにどくつもりでいた。

でも、ピットくんがあまりにも可愛らしく感じてしまったんだ。

僕を見上げる彼の頬は薄赤色に染まっている。

肌もとても綺麗で今は体調が悪いのか少し白いけど、普段の彼はとても健康的な肌の色をしている。

頬に触れると髪とは違う柔らかさを感じた。

音を付けるなら『もちもちのぷにぷに』だ。

擽ったいのだろうか綺麗な青色の目を瞑ってしまった。

「ッ

自分の頬に汗が伝うのが分かった。

今日は過ごしやすい日だったのにも関わらず何だか暑く感じる。

違う、これは気温のせいじゃない。

可愛い天使くんが自分の真下にいることによって僕の体温が上がっているんだ。

上着を脱いでシャツのまま来て正解だった。

最初は少し肌寒いなと感じていたけど、今は暑いくらいなんだ。

出来ることならこのシャツも脱ぎたい所だ。

ピットくんの今の格好も、いつも身に着けている白い服の下に着ているインナーの姿でいる。

彼のそんな姿を見て僕の中の何かが沸き上がってくるのを感じた。

ゴクッ

喉を鳴らし唾を飲み込む。

「レッド、くん

呼ばれた方へと見下ろすと、ピットくんの瞑った目尻に薄く涙が溜まっていた。

そこで僕は我に返った。

僕は彼に邪な気持ちを抱いてしまった。

危うく彼を穢してしまうところだった。

『無垢』の言葉が似合う彼の全てを奪うところだったんだ。

「本当にごめん。どいたら出て行くから

こんなことをされて嫌がるのは当たり前のことだ。

僕はそれだけのことをしてしまったんだ。

謝った所で、彼を傷付けたことには変わらない

ピットくんの手首から手を離して立ち上がりベッドから降りた。

「じゃあ、お大事に

彼の部屋から出て行こうとドアノブに手をかけた時だった。

ギュッ

後ろから抱きしめられた。

「ピットくん?」

お腹の辺りに彼の腕がまわされて身動きが取れなかった。

「違うんだ。突然だったからビックリしただけで、本当は

僕を離さないように腕に力を込められてしまったら、どうにも出来ない。

背中からか細い声で話が始まった。

「僕達、天使は人間と仲良くなるのは良いけど、好きになっちゃいけないって掟があるんだ。その掟を破ったら僕は身体を燃やされて消えてしまうだからずっと、人間のことを好きにならないようにして来たんだ。でも

か細い声は次第に嗚咽が混じったものとなっていく。

「此処に来て初めて、キミを見た時、キミのこと『良いな』って思ったんだ。そしたら、どんどん好きになっちゃった。でも、今まで一人の闘いでも、チームでの闘いでも、キミと会うことなんて、なかったのに。何でだろう?こんなこと、初めてなんだ

背中が濡れていくのが分かった。

今は動くことが出来ないから想像でしかないけど、恐らくピットくんは僕の背中に額を押し付けて話している。

彼が涙を流しながら、想いを伝えてくれているんだ。

その想いが強ければ強いほど僕のシャツが彼の涙で濡れていく。

……………

僕は彼の苦しみを何も分かっていなかった。

体調の悪さにより艶っぽく感じた彼の姿に誘惑されたと感じ、自分の欲に負けて彼を傷付けようとしていた。

彼は僕のことを好きになってくれたけど、その掟を破れば自分の身体が燃えてやがて消えてしまう

ずっと我慢してきたんだ。

そのことを知り、自分がピットくんにしたことは浅はかだったと気付かされた。

「でも、もう、ウソはつけないよっキミのこと、好きになっちゃんだからっレッドくん

自分のお腹にまわされているピットくんの手に自分の手を重ねると少し強く握った。

ギュッ

「ピットくん

そして、自分のお腹にまわされているピットくんの手を握り、解くと今度は僕が彼を抱きしめた。

「レッド、くん?」

自分の胸に彼をしまうように抱きしめた。

僕とピットくんの身長はさほど変わらないと思うけど、今の彼は小さく見える。

離れないように強く抱くと困ったような声で僕を呼んだ。

「僕はちっぽけな人間だから、君のような力は全くないけど、絶対に君の身体を燃やさせるようなことはさせない。何があっても、どんなことをしてでも必ず守るからっだから

自分の胸の中にいるピットくんを見る。

僕の影で少し暗く映る彼と目が合った。

「僕を好きになってくれてありがとう。僕もピットくんのことが好きだよ」

体調が悪いことによってピットくんが魅力的に見えたからの答えでもないし、彼の方から『好きだ』と言われてからの答えな訳でもない。

確かに順番が逆になって(好きを言う前に、僕は彼にしようとして)しまったけど、はっきりと分かったんだ。

好きになったからには僕はこれから彼を守っていかなきゃならない。

この関係は誰にも悟られないようにしなきゃいけない。

それは僕の手持ちのポケモン達にでもだ。

言葉にしなくても長く共に旅をして来たから僕の考えていることは分かるんだ。

勿論、このスマブラのみんなにも。

そして、特に注意すべきはピットくんの上司であるパルテナ様だ。

女神様だから何でもお見通しかもしれないし、慎重しなければいけない。

見つかれば関係が終わるのとともに、ピットくんの身が危なくなるんだ。

問題は沢山あるし、これからのことを真剣に考えていかなきゃならないけど、両想いになったからには、まず先にしておかなくちゃならないことがある。

「これからよろしく、ピットくん

「こちらこそ、よろしくね、レッドくん

それはお互いへの挨拶だ。

最初にしておくべきことだ。

僕達はまだお互いのことをよく知らないまま恋を始めることになるんだから、最初が肝心なんだ。

挨拶を交わして僕は胸にしまっているピットくんを、彼は僕の胸の中から手を伸ばして抱き合った。



今、此処から僕達の秘密の恋が始まるんだ。

誰にも知られてはいけない、秘密の恋だ。

人間の僕と天使の彼との秘密の恋がこれから始まる。