雨月 ひより
2024-03-03 23:01:24
4410文字
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助けられた奴の温もり

Twitter(X)のハッシュタグ『#ふぁぼした人の絵を勝手に小説にする 』で頂いた絵で書いたレオファル。
※キス描写を含みます。
血表現がありますのでご注意下さい。

スターフォックスの依頼もスマブラの乱闘もなく今日一日はずっと暇だった。

俺は朝から出かけていて、帰りが遅くなり今になっちまった。

今日一日暇になったが、いざ何をしようかと考えていた所に久しぶりに暴走族時代の仲間から連絡が入った。

かつての仲間達とは完全に縁を切ったと言いたい所だが一部の連中とはまだ関係が続いていた。

本当なら完全に縁を切らなきゃいけないが、それが出来ず今日までズルズルと引きずって来た。

昔だったら縛られるものは全くなかったから好き放題出来たが、今は違う。

スターフォックスにもスマブラにも迷惑はかけられない。

問題を起こせば全てリーダーのフォックスに責任がいくんだ。

俺の所為なのに、そんなことしたくない。

いい加減ケリをつける為に朝から、かつての仲間達の所に行って、そのシバいてやった。

人のことは言えた義理ではないが、俺もまだまだ喧嘩っ早く、かつての仲間達の挑発にすぐ乗ってコテンパンに叩きのめしてやった。

『もう二度と連絡はして来ない』

『街中で会っても声をかけたりしない』などの約束を取り付け、携帯の番号やアドレス、メッセージなんかもその場で全て削除させた。

本当は携帯をぶっ壊してやりたかったがそれはやめておいた。

かつての仲間達との色々やり取りで時間がかかり、帰るのが遅くなってしまい今に至る。

暫くはスターフォックスの依頼はないがスマブラでの乱闘が数日後に入っている為、明日にはこのコーネリアを出なければならない。

大して準備は必要ないから寝て過ごすだけだが、そろそろ部屋にいないと流石にマズい。

「ちっ

グレートフォックスを留めている空港への近道にと路地裏に入った。

メイン通りからなら確実に行けるが時間がかかることもあり、地元の連中は路地裏から行った方が早いことを知っている。

俺もコーネリア出身だから街中ならこの手の情報は知っている。

ただ、路地裏は近道にもなるが問題もあった。

……………………

路地裏はガラの悪い連中がウロついているんだ。

特にこんな夜遅くだと更に増える。

だからコーネリアに住む、或いは越して来た連中に『夜は此処を通るな』と最初に教えられる。

俺は昔から此処を通っていて、ガラの悪い奴の中に知り合いがいたりもする。

今夜はいないみてぇがな。

路地裏を通る時には絶対にそいつ等と目を合わせちゃいけない。

『今、ガンつけただろ』だの何だの言われるからな。

周りは見ず、声をかけられても決して振り返ったりしちゃいけない。

早足で通り過ぎるのが鉄則だ。

早足で路地裏を抜けていよいよ大通りの灯りが見えた時だった。

ガッ!!

「何ッ?!」

腕を掴まれ後ろへ引っ張られる。

ガンッ!

バランスを崩して壁に身体を打ち付けてしまった。

「いっ!」

周りは暗いのもあるが鳥目な所為で、ぼんやりとしか見えない。

俺の腕を掴み、後ろに引っ張ったのが誰なのか分からない。

「テメェへの恨み、晴らさせてもらうぜ」

声を聞いて分かった。

さっきまで一緒にいた、かつての仲間達の一人の声だ。

コイツが最初に連絡して来て俺を呼び出した張本人だ。

さっきシバいたことによる復讐か、いや、言葉からすると今までの俺への恨みか。

カチッ

無機質な音も聞こえた。

「これで終わりだな。あばよ、元、ヘッド

パンッ!

当たり前のように良く聞いた音だ。

物自体は見えないが音を聞けば何だか分かる。

これは銃だ。

コーネリアは表向きは治安が良いと謳われるが、路地裏に入ればその逆だ。

クソが付く程、治安が悪い。

麻薬や銃の密売なんかも此処では日常茶飯事に行われている。

路地裏でガラの悪い連中と目を合わせちゃいけないのはその一つでもあるんだ。

取引現場を見ちゃいけねぇからだ。

元、ヘッドか

『ヘッド』

かつて俺が率いた暴走族の仲間達の一人にこれ程、恨まれていたとはな。

全ての関係を清算したくて強引に解散させたんだから恨まれるのも仕方ないだろう。

こんな俺でも更生出来たんだから、アイツ等にだって出来るハズだって思ってそうしたんだが、アイツ等はそう思わなかったんだな。

こんなにも恨まれていたのか

此処で死んでも俺の身勝手が招いた結果だ。

誰の所為にもしない。

それに、俺は元々この路地裏の出身だ。

暗い所の住人が明るい所に出てくること自体が間違っていたんだ。

明るい所に出て衣食住も手に入れられて、恋人も出来て幸せだった。

好き勝手にとは言えないが生きてきたんだ。

此処で死んでも悔いはない。

パンッ!と響いた銃の音の次に来る衝撃を覚悟したが、何故か来ることはなかった。

ピシッ

ギュッ

「えっ?」

壁の横に入った小さな亀裂音と共に誰かが俺を抱き締めてくれたんだ。

「ぐあぁぁ!」

それと同時に聞こえてきたのはかつての仲間達の一人の痛みを挙げる声だった。

奴に何が起きたのか分からない。

何で叫んでいるのか分からない。

そして俺も誰に抱き締められているのか分からない。

鳥目な所為でぼやけてしか見えないんだ。

「雑魚め。消え失せろ」

「ああぁぁぁ!」

傍で聞こえたのは聞き覚えのある声だった。

話し方で分かった。

この声は

「レオン?」

かつての仲間達の声は遠くに聞こえたあと、この場所は静かになった。

レオンが何故、此処にいるのか分からない。

レオンとは最近会っていないし、連絡もしていないのにだ。

「ファルコ、大丈夫か?」

レオンは耳元に優しく声をかけてくれる。

「お、おう

抱き締められているから当然なんだが、背中に腕を回されて、太腿辺りにはレオンの長い尻尾が巻き付いていた。

尻尾と腕で俺を離さないようにしっかりと固定されている。

だが、俺は離れたいとは思わなかった。

「ッ

今になって恐怖が襲って来た。

あのまま俺は銃を持ったかつての仲間達の一人に殺されそうになった。

覚悟は出来ていたハズだが違っていた。

恐がっていると言うことはそう言うことだ。

「もう、大丈夫だ。私が傍についている」

レオンの体温が感じられる。

奴は俺よりも体温が低く冷たいから暑い日は気持ち良いが、寒い日なんかは寒さが増すんだ。

今日は一日中涼しくて過ごしやすい気候だったから、夜になると更に気温が下がって寒さを感じる程だ。

抱き締めてくれているが、少し寒い。

それに先程の恐怖も重なって余計にだ。

ぼやけてしか見えないが自分の手が震えている。

寒さと恐怖が合わさることで震えてしまっているんだ。

そんな俺にレオンはまた優しく声をかけてくれる。

強く抱き締めてくれるだけでも十分なのに同時に『大丈夫だ、私が傍にいる』との言葉も俺を恐怖から救おうとしてくれている。

「レオン

俺は手を伸ばし、レオンの肩にそっと置いた。



そのあと路地裏を抜けコーネリアの空港まで送ってくれた。

路地裏を抜ける途中、俺が身体をぶつけられた壁にはかつての仲間達の一人が持っていた銃の弾が刺さっていた。

あの時のあれが壁に刺さったことによって僅かに聞こえた亀裂音の正体だった。

レオンのおかげであの弾が俺の身体を貫通することはなかった。

もし奴がいなかったら、今頃、此処には戻って来られなかった。

「ホントにありがとな。レオン

レオンが来たのは偶然だったが、今日ばかりは感謝しかない。

「お前を他の奴に殺されたくなかっただけだ。何故なら、お前を殺すのは私なのだから

そうかよ」

さっきまでの優しさは何処にいったのか。

レオンはスターフォックスの敵、スターウルフの一人だから仕方ない。

「もう一人で帰れるな?」

「ガキじゃねぇんだから平気だっつーの!」

「冗談だ

この空港にグレートフォックスを停めさせてもらっている。

グレートフォックスの真下まで送ってくれてあとは中に入るだけなのに冗談を仕掛けてくる。

そんなやり取りのあと、俺から離れるとレオンは暗闇の方へと足を向ける。

「あ、待て!」

帰られるその前にずっと気になっていたことがあった。

「どうした?」

帰ろうとするレオンに近付くと俺はレオンの左手を取る。

左手を取った僅かに見えたレオンの顔は少し歪んだ。

「やっぱりな

グローブを外すと少し血が流れていた。

レオンは隠していたつもりだったかもしれないが、帰る時に見えた左手は僅かに血がついていたのが見えたんだ。

俺の所に来る前に負った怪我かもしれないが、もしかしたら俺の所為で負ったかもしれない

それを聞くのはあとにしても手当位はしてやりたい。

と、言っても大したことは出来ない。

応急処置程度だがポケットからハンカチを出して血を流しているレオンの左手に巻いて結んだ。

「サルガッソーに戻ったら、ちゃんと手当しろよ」

特に何も言わず俺の応急処置を黙って見ていた。

「出来たぜ」

空港の外にあるライトで手元は明るかったがうまくは結べなかった。

応急処置だからそれ位はご愛嬌ってヤツだろ。

「ファルコ」

「ん?」

呼ばれた方を向くと額にキスを落とされる。

「は?」

「ハンカチ、駄目にしてしまったな。いつかきちんと礼をしよう」

俺から離れたレオンは再び暗闇の方へと足を向け、そのまま言ってしまった。

「ありがとう」

暗闇から声が聞こえたあと足音が遠ざかっていった。

「ハンカチの礼が、これ?」

その場で残された俺はキスを落とされた額に手をやる。

「アイツっ!」

今になって恥ずかしさが込み上げてきた。

良く考えたら真上のグレートフォックスには他の連中もいるし、空港にだってそこで働いている奴とかいるかもしれない状況だったんだ。

もしかしたらさっきのを誰かに見られたかもしれない。

「クソッ!」

そう思ったら尚更恥ずかしくなり、慌ててグレートフォックスの中に避難した。

そして、部屋に戻ろうとした所でフォックスに遭遇してしまい、あれこれ言われた。

いつものように黙って出てきてしまっことによる言わば説教だ。

今回ばかりは素直に受けようと思いついて行った。



結局、俺にとって今日は散々な一日となったが説教位ならどうってことない。

殺されるよりも大分マシだからな。

レオンが去り際に『ハンカチの礼をいつか返してくれる』らしい。

その時にあの怪我のことを言ってみるか。

とか色々フォックスの背中を見ながら考えた。