7ヒスムル書こうとして出来上がった何か。こむげムルソーと手合わせして首が飛んだ7ヒスが7ムルに慰められる(?)話。ナチュラルに同棲してるし仲良し(当社比)だしセブン協会要素はほとんどないけど7ヒスムルと言い張る
この時空の囚人ヒスムルはまだ出来てない
軽度の断首、性的表現がありますご注意ください
音もなく首を狙うその軌道を勘で避け、鼻先を掠めた刃の切先しか視認出来なかったヒースクリフが次の最適解を探る隙も与えないままに、剣鬼の殺気だった一撃が胴体目掛けて振り抜かれ、咄嗟に防御に使った自身の得物が甲高い音を立てて軋んだ。重い。掌がびりびりと痺れ肺から息の塊が思わず吐き出たほどの衝撃で一瞬ぶれた意識を意地で引き戻し、ヒースクリフを剣ごと断ち切ろうとしている男の身体を渾身の力で押し返す。そのまま追撃を潰すためだけに振り抜いた一撃は当然のように躱され、一度距離をとった男の羽織が嫌味なほど優雅に翻る。男はそのままその場で立ち止まり、隙だらけのヒースクリフが詰めていた息を吐き出して、肩を揺らし余韻に震える腕で剣を構え直してもだらりと両手を身体の横に置いたまま微動だにしない。噴き上がった苛立ちに唇を噛み締めた。舐めやがって、悪態は喉の奥に封じ込める。青く底光する眼差しはヒースクリフが何を叫ぼうと相対した刃しか見ていない。深く息を吸い込んだ。肌を刺す染み入るような殺意と鼻をずっと擽っている染み付いた血の匂いにうつろいたがる意識を握り直し、欠けた月を背に立つ鬼を睨みつける。
しばらくの間ヒースクリフの呼吸の音だけが両者の間に落ち、極度の緊張状態に置かれたヒースクリフの構えた剣が僅かに揺れた、その瞬間に鬼は地面を蹴り上げ瞬きの間に眼前まで迫る。
斜め下から迫ってくる銀色の軌跡が視認出来た。それを構えた刃で弾き返し、弾き返せてしまった事実に抱いた一拍の空白を伴った疑問は、反射的に追撃をしようと前に出たヒースクリフの剣ごと、肩から脇腹までを裂いて返した刃で首を断ち切らんと迫る斬撃で嫌でも理解させられ、鋼が皮膚に食い込んだ感覚を最後に、ぷつりと意識は闇に落ちていった。
ハッと息を吸い込んだ音で目が覚める。どくどくと煩い胸を抑えながら跳ね上がるように上体を起こすと、額から伝った冷や汗が顎先から掌の上に落ち、そのままその指先で恐る恐るヒースクリフは自分の首元に触れた。汗で少し冷えたそこは、どくどくと大きく脈打っていたがしっかりと身体に繋がっている。当たり前な事実に安堵し、安堵したことに苛ついて溢れ出した舌打ちに隣の存在が身じろいだ。視線を向けた先、いつもの眉間の皺も忘れて呑気に寝こけている同居人の顔にムカついて、油断しきったその白い頬をむに、と摘めば思ったより柔い頬の肉がみょんと伸びて面白みのない仏頂面が少し愉快になる。そのまま何度か頬を指先で捏ね回していると、緩みきった眉間にぐっと力が入り、むずがるように溢れた小さな呻き声の後、ゆっくりと白い瞼が上がって昏い色をした眼球が覗いた。煌々と光る青さの欠片もない、平坦な緑色。ふ、と零れ落ちた呼吸がもう震えていないことを素直に認めたくなくて、まだ眠りの淵にいてぼんやりと虚空を見つめている男の鼻をむぎゅと掴んで言う。
「負けた」
こいつ何言ってるんだろう、という失礼極まりない視線を寄越したことはまだ寝ぼけてるのだということにしてやり、鬱陶しそうに首を振って悪戯する指先から逃れようとむずがる男の前髪を掻き上げて顔を覗き込む。ぎゅっと深く眉間に皺を刻んで焦点の合わない瞳を何度も瞬かせながら、掠れた低い声でやっとムルソーが言った。
「……何時だ」
「ん?あー…三時、夜中の」
「何故起こした」
「……腹立ったから?」
正直に夢見が悪くて起きてしまったから、と言うのがガキみたいで、誤魔化すように発した理由がそれよりもっとガキくさくなってしまったのに気がつき視線を逸らしたヒースクリフを胡乱げに見つめ、ムルソーは触れる掌を払い除けてそのままシーツを顔まで引き上げようとする。それを阻んで男の顔の横に手をついて覆い被さるように上から見下ろすと、横臥の体勢から仰向けに体を動かしたムルソーが眠気を過分に含んだまま不遜に視線を返してきた。まだ用があるのか?と言いたげな無言の眼差しを睨みつけ、寝起きの高い体温を残したままの白い首元に指先を触れさせる。寝ぼけた視線がそれを追うのを確認してからヒースクリフは改めて口を開いた。
「なぁ、ちょっと前に変な夢見るようになったって話したの覚えてるか」
「……時計の異形に呼ばれた、という話なら」
「そこにテメェと同じ顔した奴もいるって言っただろ。そいつに新しい人格が増えて、そいつに首落とされて目が覚めた」
輪郭のぼやけた緑の目がヒースクリフの首に向けられる。時計の頭部を持った『管理人』と呼ばれる者の呼びかけで見るようになった夢の中で邂逅した、本物の人斬りの鋭利な視線とは似ても似つかない平坦で緩んだ眼差しにすっかり毒気を抜かれ、手慰みにムルソーの喉の骨をコリコリと揉んで、鬱陶しいのか気持ちいいのか判別しづらい微妙な表情を見下ろしていると、相変わらず眠気に半分くらい意識を持って行かれてそうな気の抜けた声で白い喉が震えた。
「…味方ではないのか」
「あ?」
「その夢の中でも、私と貴方は同僚だったと記憶しているが、何故殺し合いをするような展開になったのかわからない」
「あー、手合わせって話だったんだよな最初は。あっちのお前が相当やべぇ人斬りで途中からただの殺し合いになっただけでよ」
「貴方も引かなかったのだろうな」
「うるせぇ尻尾巻いて逃げるような真似するわけねぇだろ」
「それで死んだのだから救いようがない」
ムルソーにとっては完全に他人事だから仕方ないにしても、その言い草があまりに淡々としていることにイラッとしたヒースクリフは、撫でるように触れていた指先で白い首筋に爪を立てる。ひくり、と掌の下で喉が震えたのがわかった。しかしそれでも眼下の体は弛緩しており、急所を無防備にヒースクリフに晒したまま蕩けかかった視線を向け続けている。
食い散らしてぇなと、さらりと乾いて温い肌の表面を爪先で引っ掻くように撫でながら、眠気が完全に遠ざかってしまったヒースクリフは迷う。翌日、最早今日だがこの日は丸々一日仕事が休みで、特に二人共出かけるような用事もない。久しく覚えていなかった衝動が腹の底から湧き出してくるのと同時に、そういえばどうしてご無沙汰だったんだっけ?と思い返したところで、ムルソーがアホみたいに連鎖した依頼に追われて家にすら数日帰って来なかったのだとようやく思い出した。どうりでいつまで経ってもとろとろと微睡み続けているわけだ。一つ依頼を終わらせたと思えば次の依頼が湧いて出てくるような状況が最終的にどれくらい続いたのかは知らないが、相当疲れが溜まったのだろう。ウザ絡みと言ってもいい他愛ない接触を振り払う気力もないのか、ただ単に面倒だから放置しているのかは不明だが、緩慢に瞬きを繰り返してこちらを見上げる緑の目を前に、ふつふつと質量を増していく衝動を抱えてヒースクリフは考える。衝動のまま白い肌に牙を突き立てたい欲望と、珍しく弱っているらしい男を労ってやりたい気持ちが拮抗していた。おそらく日付が変わった頃に帰ってきたのだろう男を、八つ当たりで叩き起こした後めたさもある。
どうすっかな、と迷う思考のままゆるゆると首から胸にかけて撫でるヒースクリフを黙って見上げていたムルソーだったが、唐突に白い掌を伸ばしてきたのが見えて手が止まった。視線の先でゆっくり近づいてきた白い指先は、そのままするりとヒースクリフの首筋に触れる。皮膚の表面に柔く触れただけの指は、そのままゆっくり横に動いて真っ直ぐ首を横断した。まるで、夢の中で断ち切られた軌跡をなぞるみたいに。ぞわ、と背中がざわめいた。ムルソーはその動作を無言のまま繰り返し、何とも言えない感覚に痺れを切らしたヒースクリフがその手を掴んで睨みつけると子供みたいに邪気のない視線を返してくる。怒りに似た飢餓に喉が鳴った。
「……眠いんだよな?」
「とても」
「オレが今何考えてるかわかってんのか?」
「私と自分の欲求のどちらを優先すべきか葛藤しているように思える」
「……じゃあこの手は何だよ、煽ってねぇとか言うなよな」
唸るように言い募るヒースクリフをぼんやりと見上げたムルソーは、ひどくもどかしい程緩慢に瞬きした後、少し顎を上げて傷一つない白い喉元をより見せつけるようにして、うっすら両目を細めながら囁いた。
「……死の瞬間に人は一種の快楽物質を放出するらしいな」
「あ゛?」
「『私』に首を断たれた時はどうだった?ヒースクリフ」
その声音に、一滴の愉悦と煽りを孕んでいるとはっきり伝わった瞬間全ての葛藤は吹っ飛んだ。握った腕をベッドに押し付けて、シーツをひん剥き弛緩したままの両膝の間に体を割り込ませる。ぐっと押し付けた腰に当たったものは緩く立ち上がっていた。どちらもだ。頭の奥を焼くような興奮に口角が吊り上がる。どろりと色を濃くした緑の目を真っ直ぐ睨み返し、自身の寝巻きの上を投げ捨てるように脱ぎ捨ててヒースクリフは牙を剥いて嗤った。
「ハッ!さぁな覚えちゃいねぇよんなこと。どーしても知りてぇってんなら首絞めながらやってやろうか?ヘンタイがよ」
「絞殺と斬首は別物だと思うが」
「黙れクソボケ真面目に答えてんじゃねぇよ萎える」
「その場合私は寝る」
「ふざけんな」
ふざけていない、とまだ若干眠そうにもにゃもにゃ呟くムルソーの唇に噛みついて続きは飲み込んだ。言葉を遮られて不服そうに唸るのを鼻で笑い、機嫌よく舌を絡め取ってそこにも歯を立てながら男の寝巻きの裾に掌を突っ込んで、そこでぐにゃりと視界が歪んでヒースクリフの動きが止まる。あ?と思った瞬間に意識は急速に闇に沈んで、ヒース?という不思議そうな声を最後にぶつり、と途切れた。
耳の奥で雷鳴が轟いた瞬間に目が覚めた。
勢い良く上体を起こすとすぐ側で《うわぁ!》というダンテの悲鳴が上がり、そちらに視線を向けると尻餅をついた時計頭と、その横に立つ陰気な仏頂面が並んでいてヒースクリフの動きが完全に停止する。平坦な緑色は怪訝そうに固まったヒースクリフを見下ろしていて、そこに欠片も青も溶けた熱も見当たらない。状況を飲み込めず混乱したまま目を見開いて黙っているヒースクリフに、土を払いながら立ち上がったダンテが《大丈夫?》と声をかけてくる。
「だ、あ?何、なんだよ?何があった?」
「セブン人格を被った貴方と、剣契人格を被った私が手合わせを行ったことは覚えているか」
「あぁ…そういやそうだった…?」
「その際剣契の私が貴方の首を跳ねて決着がついたのだが、管理人様に時計を回して頂き身体の損傷が改善したにも関わらず貴方が目覚めなかったため待機していた」
《びっくりしたよ呼んでも全然反応しないからそろそろファウストでも呼びに言ったほうがいいかな?って話してたところだったんだよ…大丈夫?どこか変なところとかない?》
すごい安らかな顔してたから本当に昇天しちゃったのかと思ったよ…と笑いながら不安そうにカチカチ秒針を鳴らすダンテの声に、混乱の最中にいながらも必死に何が起きたのかを思い出そうとして、そこで冷えた緑色と目が合い、目覚める前に見ていた『誰か』の記憶が鮮やかに甦ってカッと顔全体が熱くなった。え?と困惑するダンテの声と眉間に皺を寄せた不可解そうなムルソーの顔が見えたがそれどころじゃない。なんだあれは。なんの悪夢だどういうことだ!と詰め寄りたくても記憶の内容が内容すぎて目の前の二人に問いつめることも出来ず俯いて唸り出したヒースクリフの頭上で、彼の状況を飲み込めていない二人がのんびりと会話を交わす。
《うーん、やっぱりファウストに診せた方がいいかもしれないね》
「以前もシンクレアが同じような状況に陥りましたが、その時は直前に被っていた人格と意識が混線したことが原因だったと記憶しています」
《あー…あの時はよりにもよってN社だったから可哀想だったね…でもその時とはちょっと様子違くない?ムルソーのこと見たら顔真っ赤にして呻き出しちゃったけど、何か心当たりある?》
「ありません」
「ちょっと黙れクソども好き勝手言いやがって……」
《あ、戻ってきた》
呑気な声に羞恥より怒りが勝ったヒースクリフが唸りながら立ち上がり、深く溜め息を吐き出してからじろりとダンテを睨みつけた。隣の男のことは極力見ないことにする。頭がどうにかなりそうだったので。
「……混線だァ?」
《えっと…戦闘後にも人格の影響が残っていることがたまにあるでしょ?あれのひどいバージョンというか、蘇生する時に意識がそっちに持ってかれちゃうことがあるみたいなんだよね。短時間だけなんだけど》
「…なんでんなことが起きんだよ」
《う゛ぅーん…ファウストの見立てでは、えっと…詳しくは不明だけど多分私側の問題で起きるバグみたいなものらしいって…》
「やっぱテメェのせいじゃねぇかど腐れ時計野郎がァ!!」
《ウワー!!ごめんそんなに嫌だった!?どんな変なもの見たの!?》
「うるせぇ聞くな殺すぞ!!!!」
込み上げた怒りのままにバットを振り上げると、ダンテは悲鳴を上げながらムルソーを盾にするように背中に回り込んだためそれをうっかり追ってしまったヒースクリフは逸らしていた緑の目とまともに視線がかち合ってしまう。乾いて揺らぎのない、溶けるような安堵も情も混在しない平坦な眼球。舌打ちが零れ落ちた。柔らかな熱も、脳を焼く衝動も全て自分のものではないのに、目の前に立つ男を見るとどうしたってその全てが生々しく蘇るのが耐え難く、吐き捨てるように悪態をついてヒースクリフは二人に背を向けてバスへの帰路を辿ることにした。胃がムカムカするし顔が馬鹿みたいに熱いし、口に出したくもない場所がちょっと窮屈なことに気がついてしまうしで本当に全てが最悪すぎて、さっさと業務を終わらせて部屋に戻って全部無かったことにしたかったのに、追いかけてきた低い声が宣った言葉に抑え込んだはずの憤怒が爆発してヒースクリフの願いは叶わなかった。
「剣契の私から伝言だ。『お前の実力を見誤った。次はもう少し加減する』だそうだ」
「テッッッッメこのドブカス人のこと小馬鹿にしやがって表でろぶち転がしてやる死ね!!!!!!!!」
《やめてー!!!!》
一番ぶちのめしたい別の可能性の自分にはどうしたって手が届かないので、代わりにこのどうしようもない感情の全てを目の前のデカブツに叩きつけてなかったことにしてしまおうと、ヒースクリフは強くバットを握り締めて猛然と二人の元へと引き返していった。
「ーーー、?」
「起きたか」
「どんくらい飛んでた…?」
「数分」
「ぁー、くそ、タイミング悪い」
「休んだ方がいいのでは」
「あんだよこんくらい心配するほどじゃねぇって」
「心配ではなく」
「あ゛?」
「上で最中に気絶されるとめんどくさい」
「泣かす」
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